「スマートフォンでもゲーム漬け」韓国の深刻~ゲーム中毒による母殺しに思う

ついこの間、釜山で中学3年生の男の子がパソコンゲームをやめるよう注意する母親を殺して自殺し、小学生の妹が遺体と遺書を発見するという痛ましい事件が起きた。家族の証言によると自殺した中学生は学校に行く、食事をする、トイレに行く以外はゲーム漬けの生活で、深夜2~3時までオンラインゲームを続けるほどの中毒状態であり、母親とトラブルが絶えなかったという。しかもこの中学生は専門機関よりオンラインゲーム中毒治療カウンセリングを受けていたにもかかわらず、ゲームをやめることができなかったという。

 ちょっと前にはオンラインゲームに夢中になって新生児を放置し死に至らせた親もいた。子どもがゲーム中毒になり、パソコンを使わないようにする親ともめて暴力をふるったり、殺人事件にまでなったり、自殺をしたりする。このような事件は毎年どころか毎月のように起きている。


 韓国の中央省庁である女性家族部は、夜12時以降、青少年がオンラインゲームをプレーできなくする強制的シャットアウトの内容が含まれた青少年保護法改定案を提案した。これが、事業者が選択的にシャットアウトするのはいいが強制して過剰な取り締まりはしない、というゲーム産業振興を担当する文化体育観光部の方針と衝突。国会で係留中である。


 ゲームを長時間すると面白くなくするシステムも導入されたが(関連記事)、多人数がアクセスして一緒にロールプレイングしてミッションをクリアしていくゲームだけに適用され、シューティングや一人でもできる戦争ゲームには適用されない。ほとんどのユーザーはオンラインゲームを種類別に利用しているので、このシステムが作動するとほかのゲームに移り、また次のゲームへ移るといった具合に1日中オンラインゲームを渡り歩くので、大きな効果が得られなかったという。


 韓国内では本当にゲームだけが悪いのか?という意見も少なくない。もうすぐ年に一度の大規模なゲーム展示会が開催されるだけに、年間1兆5000億ウォン(約1050億円)規模の輸出産業としてゲームをもっと評価してほしいという業界の主張もある。オンラインゲームといえばアジアでも欧米でも中近東でも、韓国産ゲームが人気上位にランクされているほどである。


 すべて悪いのは子どもを中毒状態にさせる「オンラインゲーム」と片付けるわけにはいかない教育問題、家族問題も潜んでいる。子どもがなぜゲームに溺れてしまうのか。それは家庭がしっかりしていないから、という分析にもつながるのだ。






キャリアのKTが実施している大学生ボランティア「ITサポーターズ」。オンラインゲーム中毒を克服した大学生が子どもたちにゲーム中毒の危険性を教える活動をしている


韓国の今年の大学受験試験日は11月18日。受験生のために会社員の出勤時間が1時間遅くなるこの日の試験成績で、その後の運命が決まる。いいところに就職するためいい大学に行くのではない。いい大学を卒業しても「就職」そのものが難しい。無職になれば、無所得の状態になってしまう。食べていくためにはいい大学、名門大学に入らなくてはならない。だから必死なのだ。

 こんな受験戦争の中、学校と塾だけを往復する子ども達の唯一の息抜きがオンラインゲームなのだ。こっそり塾をサボって行けるような場所なんてPCバン(ネットカフェ)ぐらいしかない。インターネットにつながったパソコンはどの家にもあるので、勉強以外のことがしたくても一人でできることといえばオンラインゲームぐらいだ。最近はインターネット経由で受験用の動画を見ないといけないからとスマートフォンを買ってもらい、ゲームばかりしている子どもが増え親を悩ませている。


 親がしっかり子どもの生活に関心を持って会話をし、パソコンを部屋におかないといった工夫をした家庭ではオンラインゲーム中毒がほとんど発生しなかったという研究もある。オンラインゲーム中毒になるのはゲームの問題ではなく生活の問題の方だとしたら、その方が深刻なのではないだろうか。


 失業率も高く働きづめで子どもと一緒にいる時間がない親も増えている。家族のために働いているはずが、子どもは毎日一人でゲームしかすることがない家庭を生み出している。大学に行かなくても就職できる社会、最低限の生活ができる給料、自分の才能を見つけられるクラブ活動が楽しめる学校生活、そういう環境が整えば少しはよくなるのでは?

韓国でネットのリテラシーを高めるということは、使い方を教えるというより中毒にならないための健全な使い方を身につけさせるということである。小中高校では年中、ネット上のエチケットを守ろう、著作権を守ろう、違法ダウンロードはやめよう、ネット中毒にならないため1時間以上連続してパソコンを使うのはやめようなど、外部講師を招いて特別授業を行っている。ゲーム中毒予防教室やゲーム中毒を改善するためのカウンセリングもいろんな市民団体や自治体が開催しているが、それでもゲーム中毒による殺人事件や自殺は後を絶たない。

 韓国情報化振興院が2009年実施した、9~39歳を対象にした調査結果では、ネットユーザーの8.5%がネットにつながっていなかったりオンラインゲームをしていないと心理的に不安になって落ち着かない状態になる中毒症状を見せていることが分かった。オンラインゲーム中毒カウンセリングを受けた青少年も2007年の3440人から2009年の4万5476人へ13倍以上増えている。


 省庁の行政安全部は「インターネット及びゲーム過多使用に対する危険性を知らせ、健康なインターネット文化を醸成する」のを目的に「インターネット中毒克服手記公募」なんていうのまで開催している。最優秀賞には100万ウォン(約8万円)の賞金が出る。専門家のカウンセリングも効果がないのなら、感動的な手記でやる気を出してもらうのもいいアイデアかもしれない。


趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年11月17日

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20101117/1028599/

いまだ根強いIE6利用の韓国で「もう止めよう!」キャンペーンの嵐

韓国のポータルサイト「DAUM」にアクセスすると、メイン画面の右に「少女時代の特命、私のPCを守って!」というバナーが登場する。これは何だ? とクリックしてみると、この夏より全世界で巻き起こっているWebブラウザーアップグレードキャンペーンだった。

 「少女時代と一緒に新しくて安全なインターネットの世界へ! IE6はもう止めよう!」という特設コーナーまで登場し、このページからIE(Internet Explorer)8にアップグレードすると、毎日抽選で50人に映画チケットをプレゼントするという大々的なキャンペーンである。








ポータルサイト「DAUM」トップページ。右上のバナーがキャンペーンサイト。クリックすると…







少女時代を起用した「IE6はもう止めよう!」の特設コーナー


この少女時代キャンペーンでは、IE8ではインターネットバンキングが使えないといった問題もWeb標準化問題も解決されたから安心して使いましょう、という二つをキャンペーン理由として挙げている。IE6のままのPCが多いため、DDoS攻撃のゾンビーPCにされたり、悪性コードに感染したりする危険度も高いという。

 IE6はWeb標準をサポートしていないため、Webサイトで文字化けやカラーの表示が違うようになってしまう「標準化問題」があり、Webアプリケーション開発に多大な時間がかかる、そのためインターネットの発展を阻害する障害であること。IE8が登場して間もないころは互換性に問題があるとされたが、今では韓国のほとんどのサイトがIE8に最適化されていること。なのでこれからは自分のPCを守り、より便利にDAUMを利用するためにもIE8にアップグレードしましょう、というのが趣旨である。


 セキュリティ脆弱点があるIE6の利用を止めてアップグレードするよう、韓国マイクロソフトも、ほかのポータルサイトも、IT業界も8月から呼びかけてきたが、全くといっていいほど効果がなかった。マイクロソフトの調査によると、韓国で使われているWebブラウザーの98%がIE、しかもその内39.1%がいまだにIE6だという。日本のIE6利用率は14.4%、OECD国家の IE6利用率平均は6%だというから、韓国がどれほど古いままなのかが分かる。そういえば韓国はまだWindows XPを使う人が圧倒的に多かったような…


 韓国人はパソコンの買い替えをしないのか? なぜ9年も前に登場したIE6をいまだに使っているのか? 少女時代の力まで借りないと解決できない問題なのか?…といろいろ疑問がわく。

実は韓国では、IE6でないと動かない社内システム、行政・校務情報化サイトが依然あって、PCを最新版に買い換えても、わざわざブラウザーをIE6にダウングレードしていたというのだ。新しい物好きの韓国人のはずが、ブラウザーだけは仕方なく古いのを使っていたという面もあるのだ。今はだいぶ改善されているものの、一度でもブラウザーをアップグレードして痛い目に合った人はもう二度とIE6から抜け出せなくなる。


 ガートナーの調査でも似たようなものを見た。全世界でIE6だけで動くアプリケーションはまだ多く、IE6向けアプリケーションの4割はIE8では動かない。企業がアプリケーションをIE8向けにアップグレードするためかなりの費用をかけることになるので躊躇するしかない。IE6利用を止めさせるためにマイクロソフトはもっと時間をかけなくてはならないだろう。どうやったらアップグレードしてもらえるか支援する方法を工夫しなくてはならない…といった内容の調査レポートもあった。


 一昔前のActiveX騒動のつながりで、Web標準化とは関係なく古い体制を崩さない開発環境にも問題があるのではないだろうか。でもプログラマーの間では、Web標準で作って、もう一度IE6に合わせてテストしないといけないので時間もかかるし大変だと愚痴っているのだ。韓国がいまだにIE6から逃れられないのは結局ユーザーのせいなのか? とも思ってしまう。


 2年ほど前までもIE6でないと利用できないサイトがかなりあったが、2010年の今となってはIE8が標準ブラウザーのようになっている。IE6に脆弱点があるとマスコミが騒いでも、まさか自分がハッキングされることはないだろうとか、使い慣れたブラウザーなのにアップグレードしてメニューの位置が変わると面倒だからこのままでいいとか、そういう理由でずるずると使ってしまっているのかも。


 少女時代が登場する前もいろんなキャンペーンがあった。韓国マイクロソフトは慈善団体と一緒に、キャンペーンサイト経由でIE8にアップグレードした1件ごとに500ウォン、台風で家を失った姉妹のために寄付をしたこともある。最大手ポータルのNAVERも6月より「Goodbye IE6」キャンペーンを実施した。ショッピング大手のGマーケットもIE8を使ってより安全なショッピングを楽しもうとキャンペーンを行った。


 それまでのWebブラウザーアップグレードを呼びかけるキャンペーンには面倒というだけでびくともしなかったネットユーザーらが、少女時代のパワーには負けたようだ。Twitterでは「とにかく少女時代が言ってるんだからIE8に変えなくては」、「みんな少女時代の言うことは聞きましょう」とやっと聞く耳を持つようになった様子。


 韓国ではIE6からIE8にするだけでなく、FirefoxやGoogle Chromeにも興味を持ってみようというユーザー同士の呼びかけも活発になっている。2010年7月時点での世界のブラウザーシェアはIEが60.7%、Firefoxが22.9%、Chrome 7.2%、Safari 5.1%だというのに、先述したように韓国はIEが98%。これはすごすぎると思いません?


 スマートフォンとか、タブレットPCとか、3DTVとか、そういうのは新製品が飛ぶように売れるのに、ブラウザーはどうして新しいものに興味がないんだろう。ユーザーが興味を持たないから政府も企業もIE8向けにアップグレードしない、しかもIE以外ではまともに表示されないサイトを作る、IE6に戻る、の悪循環になってしまっているのかも。スマートフォンやタブレットPC向けのモバイルブラウザー競争がヒートアップしているだけに、韓国でのIE6問題は最優先課題なのかもしれない。



趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年11月11日

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20101111/1028492/

G20開催でわきかえるソウル、あちこちで最先端ICTを体験

ソウルでは2010年11月11日~12日、G20が開催される。G20のGはGroupの略字で、20カ国・地域首脳会合のことである。世界GDPの85%を占めるG20だけに、サミット開催中に韓国が誇る最先端技術をG20関係者らに宣伝するため、展示会や体験ゾーンがソウル市内のあちこちに登場し始めた。一般市民も自由に観覧できる展示場も多いため、IT・電気自動車・3D放送・エコなど、韓国自慢の最新技術を体験できるいいチャンスでもある。

 G20サミットは韓国では初めての大規模な国際首脳会議で、国別の代表団やプレス合わせて少なくとも1万人が参加すると見込まれている。参加者らが落としていく消費支出約35億円、G20開催による付加価値創出効果約45億円、企業の広報効果と輸出増大効果などの間接効果は2兆円を超えると推定されている。


 ソウル市内はどこを向いてもG20のポスターや歓迎の旗が掲げられている。企業の広告にもG20、バスにも電車にもG20、ビルの屋上看板にもG20、テレビをつければG20開催国らしくエチケットを守りましょう、外国人観光客にはやさしくしましょう、道に迷っている人がいたら自分から先に声をかけましょうのキャンペーンが流れている。ワールドカップ以来の盛り上がりに、G20となんの関係もない私ですら興奮してしまうほどなのだ。






G20のスターサポーターとして活躍している少女時代(2010 G20 Seoulsummit準備委員会)

メイン会場であるCOEXでは11月1日、公務員とボランティア総出の大掃除が行われた。ショッピングモールになっている会議場地下には、以前から楽しいITスポットとしてデジタルサイネージを使った多国語の案内地図やタッチ式広告版が置いてあり、ショッピングモール内のお店や周辺グルメ情報、観光情報、今日のニュース、天気、為替レートなどを検索できるようになっている。ストリートビュー方式で、周辺の写真を見ながら地図検索できるので、初めて行く場所でも迷わず探せる。こうした検索できる情報発信型デジタルサイネージは韓国ではお馴染みの設備であるが、海外観光客には珍しいようで、G20をきっかけに再び注目されている。

 COEXがある地下鉄2号線「三成駅」には、韓国内のどこにでも無料で電話をかけられるVOIP付きのデジタルサイネージもあるので、お店を検索してその場で予約もできるところが便利。映画や演劇のチケットを無料でもらえるイベント応募もできるようになっているので、定期的に立ち寄りたくなる。

ソウル市はCOEXに電力いらずで温室ガスも発生しない、スマートフォンで遠隔制御できるソーラーLED照明を設置し、「低炭素グリーンエネルギー都市ソウル」のイメージを広めるとしている。昼間に太陽光を充電して夜は照明として使うもので、まだ商用化されてはいないが、照明のベストな高さやデザイン、消費電力チェック、遠隔制御方式などの実証実験を経てG20期間中COEXに設置されることになった。


 代表団とプレスには韓国メーカーの電気自動車、電気バス、水素燃料電池自動車が提供され、エコな都市ソウルのイメージアップも図る。まだ量産されていないモデルではあるが、1度の充電で170km走れて、スピードも165km/hまで出せる電気自動車や、1度の充電で650kmを走れる水素燃料電池自動車は、世界のメディアに注目されると期待されている。


 また、COEXには3DTVを体験できるコーナーもあり、韓国が2010年から国をあげて実験している高画質3DTVを観ることができる。


 11月5日からは「G20放送通信未来体験展」(G20 Communications Exhibition)が開催する。韓国の主なIT・放送事業者が参加し、最先端サービスを体験させる展示会で、現在提供されているサービスと、今後提供される未来生活サービスも展示される。モバイルIPTV、デジタル教科書や電子黒板・RFID・3D仮想現実などを活用して授業を行うスマート教室、エコなスマートIT製品、3Dタブレットパソコンや3Dエンターテインメント、電気自動車やスマート自動車などが展示される。各国首脳やプレスに韓国はIT強国であるという強烈な印象を残すため、政府も企業も熱心である。

企業のショールームもG20のための衣替えを済ませ、各国代表団の訪問を待っている。空港の携帯電話レンタルコーナーも古い端末を一新し、スマートフォンやかわいいデザインの端末を使えるように準備した。






KTはG20参加者に最先端IT機器を提供する(KT提供)


G20の主管通信事業者に選ばれたKTは、G20首脳と代表団に提供されるIT機器を一足先に公開した。


 IPTVからはCNN International、 Euronews、 France 24、 CCTV 9、 NHK World News などG20国家のニュースチャンネルを提供し、SoIP(モニター付きインターネット電話機)から観られるようにした。14カ国を利用できるようにし、リモコンも付けて、電話でもありIPTV用のモニターとしても使える。Wibro(モバイルWiMXA)を利用したモバイルIPTVも提供し、スマートフォンからG20の日程、告知、ニュースなどを提供し、世界最高水準のモバイルネットワーク技術を持っていることもアピールする。


 韓国の空港鉄道、電車、バス、タクシーなど全交通機関と自動販売機や公衆電話、コンビニなどで使える電子マネー「T-Money」もG20首脳と代表団に配られる。乗り換えに関係なく、乗った距離に応じて料金を計算するとても便利な交通システムを体験してもらいたいからだ。


 G20は韓国にいながら主な経済大国の代表団に自社製品を宣伝できる絶好のチャンスであるため、企業も宣伝に力が入る。韓国を訪問する外国人のための特別セールや無料観光バス運行などイベントも盛りだくさん!熱気むんむんな今が観光するにも絶好のチャンスかもしれない。それに11月の韓国は雨もほとんど降らず、紅葉もきれいなので、飽きるほどソウル出張をしているビジネスマンでも、今まで見たことのない新しいソウルを体験できること間違いないだろう。



趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年11月4日

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20101104/1028315/

傷つけたくないもん! iPhone 4やGalaxy Sのアクセサリーが大人気

最近韓国で人気なのが、お笑い芸人が貧乏旅行をするバラエティー番組や、人気歌手が仮想夫婦となって新婚生活を送るリアリティ番組(日常生活を追いかける番組)である。視聴率の高い番組だけに、出演者のファッションやアクセサリーも話題となり、ヒット商品につながっている。

 この季節、これら番組から生まれたヒット商品は、スマートフォンのカバー。カラフルで革素材のかっこいいカバーで個性をアピールする芸能人のおかげで、iPhone 4やサムスン電子のスマートフォンGalaxy S向け端末カバーがばか売れしている。







iPhone 4は韓国で発売されたばかりで、予約から端末を手に入れるまで早くて2週間待たないといけない。しかしさすが芸能人。テレビに私物として登場する携帯電話のほとんどがiPhone 4かGalaxy Sだった。みんな同じスマートフォンを持っているからか、誰もがカバーを付けてすぐ自分の物を見分けられるようにしていた。芸能人だけでなく、Twitterで人気の財閥御曹司らが何気に自慢したスマートフォン向け手製高級革カバーも輸入が追いつかないほど売れまくっているというからすごい。


 韓国では携帯電話にストラップをじゃらじゃら付けることはあまりしない。ストラップを売っている露店やアクセサリーショップはたくさんあるのになぜ付けないんだろう。周りの人は、ストラップが端末にぶつかってキズを付けるのがいや、重くなるのがいや、ポケットに入らないしかさばる、などの理由を挙げていた。若い女性でも、せいぜい小さい鏡やミニチュアのリップグロス、金やクリスタルのジュエリーをさりげなく付ける程度である。


 または、T-Money(韓国のプリペイド式交通カード、自動販売機やコンビニでも使えるSUICAのような電子マネー)のストラップ式カードを付けて、iPhoneを使いながらモバイルペイメントを利用できるようにする。これはかなり便利で、モバイルペイメント機能を持たない端末であっても、親指ぐらいの大きさのカードをストラップのようにぶら下げるだけ。電車も乗れて、乗り換えもでき、バスにも乗れる(乗り換える度に運営会社が違うからと切符を買い替えないといけない日本とは違って、韓国ではすべて統合してどんな乗り物だろうが、乗った距離で計算するようになっている)。


 もちろん、これはT-Moneyまたはクレジットカードの交通カード機能を使ったときだけ適用され、現金払いの場合は乗り換える度に交通費を支払わなくてはならない。なお、3G端末の場合は、SIMの中にT-Money機能が入っているので、ストラップ式のカードはいらない。







さまざまな形状のT-Moneyストラップ式カード。モバイルペイメント機能がない携帯端末に付けて使うと便利(T-MONEYのサイトより)


携帯端末にキズがつくのがいや、というのはスマートフォンでも同じで、タッチで液晶が汚れたり傷ついたりを防ぐための透明シールはほぼ100%付けている。端末にカバーを付けるのが好きなのもその延長なのかもしれない。

サムスン電子はGalaxy Sをはじめ、スマートフォンやタブレットパソコン向けのアクセサリーショッピングモールを運営している。街中や電車の中で使っている人をよく見かけるのは、クロコダイル模様になった革製カバー4万4000ウォン(約3400円)、ランボルギーニのロゴ入りで液晶まですぽっとかぶせる革製ケースは4万5000ウォン(約3500円)、爪が長く指先でタッチするのが難しい女性向けスタイラスペン1万9800ウォン(約1500円)である。






革製ケースは約3500円(写真左右とも:スマートフォンアクセサリーショッピングモール Anymode)






爪の長い女性向けスタイラスペン


もう一つ、韓国にはアップルの修理センターが少なく、修理代もかなり高額なので、iPhoneは気を付けて使わなくてはならないという認識が広がっていることも、カバーの人気に火を付けた。


今年は冬の訪れが早く、10月で既に気温が氷点下に下がるほどの寒さである。凍えそうなほど寒い韓国で、いちいち手袋を脱いでタッチしなくてはならないというのはとても不便である。携帯電話加入者の約15%が利用しているスマートフォンだけに、日本で発売されたiPhone用手袋もブログを中心に紹介され、注目を集めている。

 韓国では昨年の冬、手袋を脱がずにiPhoneにタッチできる方法として「魚肉ソーセージ」で画面をタッチするのが大ブームとなったことがある。







iPhone画面をタッチする「魚肉ソーセージ」。去年はやった

そのほかには、スマートフォンから動画を楽しむ人が増えていることから、パソコンのモニターのようにスマートフォンを固定できるアクセサリーも多数登場。ナビゲーションの代わりに使う人もかなりいるせいか、自動車や自転車に固定できるアクセサリー、車の中で充電できる車両用充電池、車のオーディオにつなげられるジャック、無線でスマートフォンの音楽ファイルを伝送できるオーディオなども売れている。

 韓国ではスマートフォン向けアクセサリー市場は国内だけで年間700億ウォン(約54億円)に上ると見込まれている。アクセサリーはデザインやアイデア勝負でいくらでも高く売れ、世界市場でも販売できるだけに、いろんな産業からアクセサリー市場に飛び込む、特に中小企業が増えるものと見られている。



趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年10月28日

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20101028/1028200/







SNSで拡散する個人情報とデジタル証拠(2)~犯罪増で監視体制強化なるか

(前回はこちら


 ソーシャルメディアに限らず、ネットを使い、デジタルデバイスを使っている限り、記録は残る。韓国ではこのような記録を物証とするデジタルフォレンジック(Digital Forensics)による捜査が年々増えている。


 削除したEメールやショートメッセージ、デジカメの写真、検索したキーワード、チャット内容、訪問したホームページなどから探し出した決定的な証拠が犯人逮捕につながることが何度もあったからだ。携帯電話を使った位置追跡、サイトにログインしたIPアドレスから場所を割り出すのは基本中の基本である。YouTubeや動画投稿サイトにあった何気ない動画が証拠や事件解決の糸口になることもあった。目撃者がこんなことがあったと動画を載せる場合もあるが、犯罪を自慢するため犯人が自ら写真や動画を投稿することもあるそうだ。


 また、メッセンジャーを使ったなりすまし詐欺は韓国でなくならない犯罪の一つである。メッセンジャーのIDをハッキングして、その人の友人にチャットで母の急病だとか、交通事故で加害者になってしまってお金が必要だとか、嘘のメッセージを送って振り込んでもらう手法である。こういった事件もデジタルフォレンジックによる捜査で解決していく。


 韓国検察庁デジタルフォレンジックセンターのデジタル証拠分析件数は、2008年の916件から2009年には1546件に急増し、2010年は8月時点で1774件を突破している。これに対抗して、自分の記録をきれいに削除できる、ファイルを復元できないよう完全に削除するプログラムもどんどん普及しているから怖い。


 ただしプライバシー侵害、人権侵害という批判もあるためデジタルフォレンジックによる捜査は慎重に行われる。そのせいで思うように捜査できないこともあるという。






韓国警察サイバー犯罪担当組織のサイト。詐欺事件が発生したWEBサイト、振り込め詐欺に使われた電話番号と口座を表示し、サイバー犯罪注意報、警報を流している


検察はデジタル捜査を担当する専門家を増やすため、検察内部で実施していたデジタル捜査資格認定試験を韓国刑事訴訟法学会に移管して一般人も試験を受けられるようにする方針だという。警察庁のサイバー捜査隊も警察内部から専門知識のある人を採用していたが、民間からの特別採用を実施している。ハッキング担当、データベース担当、ネットワーク担当、ワイヤレス担当、プログラミング担当、デジタルフォレンジック担当に分けて採用する。情報処理関連資格を持ち、民間企業で電算管理業務3年以上経験のある人、またはコンピューター工学、ソフトウエア工学、情報保護を専攻した修士以上が対象となる。

アメリカでは、TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアとインターネット電話を対象に司法当局が監視できるようにする技術導入を義務化する話が出ているというからすごい。監視できないシステムではサービスを提供できなくする強引なもので、政府がソーシャルメディアをずっとモニタリングしていられる技術を導入するという話である。まだ検討中とのことだが、アメリカがやれば世界で広まることは間違いない。

 アメリカでは麻薬犯罪にP2Pやソーシャルメディアが使われることが多いということで、監視体制を持つことが大事だという意見もあれば、大量に確保した個人情報が悪用される可能性、監視システムそのものがハッキングされる可能性を指摘する意見もあり、議論は続きそうだ。


 ソーシャルメディアを使うことで口コミを広げ、自殺を食い止めたり、急患を助けたり、いいこともたくさんある。韓国の警察はTwitterも運営していて、一般人は、ここに110番(韓国では112番)するのは怖いけど、自分が目撃したことがもしかして捜査のためになるかもしれない、という情報を寄せられる。そのため、警察はTwitterを使った迅速な通報システムを構築するかどうか悩んでいるという。


 ネットなしの生活はもう考えられない。一方でネットに書き込んだ一言で会社をクビになったり、訴訟されたり、命取りになってしまった人がどんどん増えている。ソーシャルメディアを使った詐欺もどんどん増えている。デジタル捜査官やサイバー捜査隊を増やすとしても、犯罪が発生してから動くしかないので、予防のためにはユーザー個人がしっかりしていないといけない。Twitterに気ままにつぶやき続けるべきか、他人を意識して当たり障りのないことだけつぶやくべきか、悩む日々だ。疲れる~。


趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年10月21日

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20101021/1028095/

SNSで拡散する個人情報とデジタル証拠(1)~書き込むときは慎重に?

北朝鮮が労働党創建65周年の記念式典に海外メディアを招待した。北朝鮮を訪問する外国人には監視が付き、通信も自由にできないことで有名である。しかし、今回は変化があったようだ。平壌のプレスルームでは自由にインターネットが使え、一部記者はTwitterで北朝鮮の様子や写真を投稿してつぶやいた。もちろん、取材チームごとにガイドという名目で監視人が付き添い、北朝鮮側の日程に沿って軍のパレードを取材させている。だとしても、北朝鮮とTwitterってなんだか不思議な組み合わせなので、韓国では大変な話題になったものだ。

 Twitterといえば韓国でもスマートフォンの普及と並んで利用者が急増し、今では中学生や主婦もメール代わりにTwitterでつぶやいているほどポピュラーなものになってきた。


 リサーチ会社のTNSが世界46カ国5万人を対象に調査した結果、モバイルユーザーがソーシャルネットワークサイトに使う時間は週3.1時間で、週2.2時間のEメールよりも多かったという。


 芸能人、政治家、スポーツ選手、小説家、ブロガーなど、Twitterでたくさんフォローされていて影響力を持っている人ほど「マーケティング力」があるとしてもてはやされる時代になってきた。一般人であってもフォローされる数が多いと業界のパーティーに招待されたり、商品が無料でもらえたりする機会も多くなる。


 韓国では、Facebookは海外向け、Cyworld(老舗の韓国版ソーシャルネットワーク)とMetoday(韓国のNAVERが運営するTwitterのようなサービス)は韓国向け、Twitterは多国語(韓国語、英語、日本語、中国語などごっちゃ混ぜでつぶやく人が増えている)で、と分けてつぶやく人も多い。最近は一度つぶやけばすべてのソーシャルサイトに掲載できる連携サイトまで登場したほどである。ポータルサイトでは検索結果にTwitterのようなつぶやきサイトも含めるところも増えている。Cyworldは個人と個人企業とがつながる「ソーシャルコマース」を始めるという。




キャリアのKTが始めた「ソーシャルハブ」を利用すると、同じ写真やつぶやきを同時に複数のSNSに登録できる。いちいち訪問して書き込む必要がなくなるので便利



つぶやきは気軽にできるが…



 あるテレビ番組がソーシャルメディアからその人をどこまで把握できるか実験してみたところ、Twitterとブログを30分ほど見ただけで、名前、年齢、誕生日、配偶者の名前と年齢、自宅住所、職業、会社名、家族構成、子どもの名前と年齢と学校名、オンラインショッピングで何を注文して、いつどこで誰と会ったのか、趣味は何で、どこに旅行に行ってきたのかなど、かなりの個人情報を特定してしまったことがある。


 ユーザーが増えつぶやきも増えた分、Twitterからその人の個人情報を入手して悪用するケースも出ている。韓国では犯罪捜査のために容疑者の名義で加入しているコミュニティサイトやオンラインゲーム、EメールなどのIDを追跡し、いつどこでログインしたのかなどを分析して足跡を追うことが多い。


 検索技術は日々進化していて、数え切れないほどの検索結果から相関関係を分析してその人が欲しがっている情報に限りなく近くまとめて出すことができるようになった。


 ソーシャルメディアの利用が盛んなアメリカも同じような状況らしく、CNNもオンライン上の書き込みをちゃんと管理しないと求職や銀行の貸出、離婚訴訟などで不利になることもあると報道したほどだ。企業の採用担当者や法律事務所では証拠集めのためにあの手この手でソーシャルメディアを検索しているのに対し、つぶやくユーザーは無防備にも個人情報を丸投げにしているように見える。もっと自分の情報を自分でコントロールする必要があるのではないだろうか。


 韓国のソーシャルメディアサイトの場合は、友達をランク付けして閲覧できる情報をコントロールできる。誰でも見てかまわない内容と個人的な内容を区別しながらうまく自己アピールして人脈を作れるようにもなっている。また国民総背番号の国らしく、個人情報を守るため、自分の住民登録番号がどのサイトの会員登録に使われているのかチェックするサービスも政府が提供している。それでも何気なくソーシャルメディアに書き込んだ一言が問題になることは少なくない。


 一番いいのは慎重に、神経質になってつぶやくことより、データマイニングで個人情報を抽出される不安から開放されることなのだけど。しかしこのような情報抽出は犯罪防止に役立っているのだ。


(次回に続く)


趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年10月14日

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20101014/1027953/

これからはスマートTVだ! 世界1位を狙う韓国(2)~サムスンの戦略

 サムスンの場合、世界市場で戦っているだけに、政府の支援に頼らずどんどん先にビジネスを進めている。スマートTVも例外ではない。


 同社は世界109カ国向け(2010年9月14日時点)にSamsung Appsというアプリケーションストアを運営している。テレビ販売では世界市場で5年連続1位のサムスンであるが、これからはソフトウエア、コンテンツの時代だとして最も積極的にアプリケーションやOSに投資している。スマートフォンではグーグルのAndroidを採用。独自のモバイルOS「BADA」を搭載した「WAVE」というスマートフォンもあるし、テレビでは自社のOSで自社のアプリを流通させたいとしている。




サムスンのスマートTV向けアプリケーションはこうなる

サムスンは2007年から「インターネットTV」といって、リモコンとキーボードを使って検索できたり、ポータルサイトを利用できたりするテレビを販売していたが、「インターネットTV」の場合は決まったサイトにしかアクセスできないようになっていたせいか、それほど話題になることはなかった。

 同社は地道に取り組みを続けている。2010年3月、スマートTVで使えるアプリケーションコンテストを実施した。サムスンの説明によるとこれは世界初のコンテストなのだとか。公募の結果、多言語童話、カラオケ、テレビの画面から新聞を新聞の形のまま読めるTペーパー、学習関連コンテンツなど、家族向けアプリが選ばれた。160件の応募があり、一般ユーザー2500人が投票に参加して人気順位を決めた。これからはコンバージョンスアプリケーションとして、一度購入したら端末を選ばず使えるアプリケーションを流通させるとしている。この9月からはアメリカでスマートTV向けアプリケーションコンテストを開催している。





サムスンのブースに展示されたスマートTV(IFA2010の会場で)

先日ドイツで開催された家電展示会IFAで、サムスンは「2011年に発売するほとんどのテレビに3DとスマートTV機能を搭載する」とした。2010年発売するTVの場合は、半分ほどにスマートTV機能が搭載されるという。どんなテレビだろうと、「テレビ=サムスン」にすると自信満々である。ブロガーからはリモコンやUIがちょっと…と突っ込まれたりしたが、これぐらい強気でないと世界で戦えないだろう。

スマートフォンに出遅れた責任を取らされたのか、LG電子はCEOが創業者の孫に入れ替わった。LGもスマートTVには積極的で、2010年末に今までのインターネットTVとは全く違う新製品を披露するとしている。韓国ケーブル放送チャンネル大手事業者であり、映画制作もしているCJグループと提携し、LGのスマートTV専用サービスとして韓国政府が考えているスマートTV戦略は「韓流」。アジアで人気の高い「韓流ドラマ」を目玉にすれば韓国のスマートTVは売れるのではないかという考えだ。韓流コンテンツの多言語翻訳支援、中小企業のスマートTV向けアプリケーション開発支援といった政策も発表された。


 韓国では難視聴地域が多いことから、全世帯の約84%がケーブルテレビまたはIPTVに加入している。地上波放送を見るためには有料放送に加入しなくてはならなかったため、加入するのがもったいないと考える家庭は少ない。スマートTVの本体そのものが高くなければ、地デジ対策を兼ねて、3Dでアプリケーションをたくさん利用できるスマートTVに乗り換える人も少なくないだろう。


 スマートTVは家電メーカーがあって、地上波放送局やIPTV・ケーブルチャンネル事業者があって、という産業構造を変えることになる。家電メーカーがコンテンツも提供し、インターネット事業者がテレビも作る。


 韓国では既に放送局が自社番組のDVD販売をあきらめ、動画をIPTVやスマートフォン向けに提供するようになった。違法にコピーされず少額でも確実に課金できるからだ。これからはスマートTV向けアプリに変わるだろう。アメリカでもグーグルTVやアップルTVが放送を変え、コンテンツ流通方式を変え、人々の生活を変えると既存の業界プレーヤーに恐れられているようだ。


 テレビなんてコンセントを差し込めば観られるもの、と言えるのも後残りわずかかもしれない。日本も家電メーカーやキャリアなど、スマートTVを準備し始めていると聞く。スマートTVになって便利になるのはいいけど、お金を払わないと砂嵐以外何も観られなくなるのではないか、それがちょっと怖い。


趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年10月6日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20101001/1027749/

これからはスマートTVだ! 世界1位を狙う韓国(1)~「選択と集中」を推し進める政府

スマートフォンブームについていくのもやっとなのに、タブレットPCが出てきたと思ったら今度はスマートTVなのだそうだ。そう言えば、グーグルTVやアップルTVが始まるというニュースもよく耳にするようになった。

 検索やメール確認といったインターネットサービスが使えるテレビもあるし、動画が観られるIPTVもある。テレビのリモコンでほかの家電を動かしたり、照明を点けたり消したりできるホームネットワークに対応したものもある。ちょっと前までもメガネをかけて立体映像が観られる3DテレビのCMばっかり流れていた。こんなにテレビの種類が多いのに、まだ新しいテレビが登場する余地があったのね。


 スマートTVは簡単にいうと、スマートフォンで利用できるアプリケーションをテレビからも同じように使えて、インターネットも使えるテレビ。動画(VOD)、ゲーム、検索、音楽、生活情報など、いろんなコンテンツをより便利に使えるというもの。インターネットにつながるテレビなんてずっと前からあったけど、テレビごとに決まったサイトしか利用できないようになっていた。スマートTVは、iPhoneやAndroidのアプリケーションのように、数え切れないほどのアプリケーションをテレビからも使えるというのが新しい機能といえる。韓国や日本にいながらアプリを使って海外のテレビも自由に観られる時代になるのだ。


 2012年には一般家庭にもスマートTVを普及させて、世界のどこよりも早くスマートTV大国になるのだと、韓国政府はさまざまな戦略を打ち出し始めた。ついこの間までもスマートフォンを世界どこよりも早く普及させるための戦略がどんどん発表されていたのに…。とにかく「スマート」という言葉が入るものは何でも集中投資の対象になっているので、スマートヘルスケア、スマート教育、スマート国防、スマート電子政府などなど、「デジタル」、「電子」といった言葉の代わりに「スマート」が付けられるようになったほどである。


 韓国の経済産業省にあたる知識経済部は、2010年9月「スマートTV産業懇談会」を開催した。韓国が世界シェア1位を占める「テレビ」の輸出をさらに確固たるものにしようと、スマートTVでも世界をリードできる戦略を議論するためである。テレビを製造するメーカーだけでなく、放送事業者、コンテンツ事業者、ネットワーク事業者を集め、お互いがうまく融合して新しいビジネスモデルをつくれるよう、国家戦略を樹立しようということで、話し合いが始まった。


 韓国はいつも、ハードウエアは強いけどコンテンツやソフトウエアは弱い、というのが問題であり課題である。スマートTVでも、ハードウエアはうまくつくれるので世界で優位に立てるかも知れないが、核となるサービスのアプリケーションをどうするのか、という疑問がある。


 スマートTVの時代になれば、テレビコンテンツのグローバル化による放送産業構造の変化に対応できる制度、法律改定も必要になるので、中央省庁である「放送通信委員会」の中に「スマートTV専担班」を設立・運営するという。グローバル競争力確保、新市場創出、技術力強化、インフラ構築、中小企業や個人デベロッパー支援をテーマに、細部の課題をリストアップしている。懇談会で事業者から政府にリクエストがあった支援が必要な分野としては、アプリケーション確保、海外市場創出、アプリケーションを流通させるためのプラットフォーム開発、使いやすいUI開発、標準化・特許支援、ネットワーク高度化、人材養成システム、法制度改善などが挙げられている。


 次回はサムスンのスマートフォン戦略を見ていく


趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年9月30日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20100930/1027711/

若者取り込みにあの手この手、政府省庁SNSの意外な狙い

日本でもTwitterやUstreamを使って政策や仕事内容を国民に知ってもらうとする政府広報活動が行われている一方、韓国でも政府省庁や地方自治体のブログやTwitterが話題になっている。

 政府機関がソーシャルメディアに登場するようになったのは既に5~6年ほど前。ブログが登場し、Cyworldというソーシャルネットワークが大ブームだった2004年、政府機関がCyworldにHompy(ミニホームページ)やアバターを作って親近感を持ってもらおうとしたのが始まりだったように覚えている。


 スマートフォンの普及で、24時間絶えずTwitterのようなつぶやきサイトやマイクロブログ(モバイル端末から利用するブログ)に書き込みする若い世代が増えたせいか、このごろは韓国の政府機関も公式サイトのほかにブログも当然運営し、Twitterとの連動も重視するようになった。TwitterやソーシャルネットワークサイトのIDをブログのIDとしても使えるようにしているので、ユーザーが何かTwitterに書き込むと、自動的にブログのコメントとして登録される。


 政府機関の公式サイトはまず訪問者数が少ない。何か調べようというはっきりとした目的がない限り、政府のサイトなんて滅多にアクセスしないだろう。ところがブログやTwitterの場合、自然と訪問者数が増える。韓国ではポータルサイトが運営するブログを利用する人が圧倒的に多いので、ポータルサイトの中の検索結果やランダムリンクなどで政府ブログの存在を知る人も多い。


 公式サイトの場合は誰が訪問したのかIPアドレスから分析するしかないが、ブログだとどんな人が訪問したのか足跡が残り、また気軽にコメントを残してくれる。ブログやTwitterでは実名確認をしなくても、本人の顔写真や年齢や職業や日常を公開しているので、どういう人がどんなコメントを残してくれたのか分かる。


 政府ブログの運営は、最初はαブロガーとして知名度の高い人にコラムを書かせることでクリック数を伸ばし、かわいい連載マンガと懸賞イベントで定期訪問者数も伸ばす、といったところだが、ブログ記者やサポーターという肩書きで大学生を採用して、政府政策を宣伝するための分かりやすく面白い記事も書かせている。こうした政府の努力はもちろん、若い世代にアピールするため。


 中央省庁の中でも堅そうなイメージのある企画財政部、統計庁、保健福祉部、放送通信委員会、国防部、兵務庁、国軍、国会、大統領官邸などなど、ブログとTwitterを持っていない省庁はないほど。しかも面白いのは、国会Twitter、企画財政部ブログという名前ではなく、企画財政部は「ブルーマーブル」(億万長者になるのを競うボードゲームの名前)、保健福祉部は「タスアリ」(暖かいという意味)、国会は「丸い屋根」といった具合でかわいい名前を付けているのだ。背景画面にもパステルカラーのイラストを使ったり、人気マンガのキャラクターを登場させたり、気を使っている。


 最初政府ブログにアクセスしたときには、「一体ここは誰のブログだろう?」とさっぱり理解できないこともあったが、政府ブログの連載マンガが意外と面白くてついつい訪問してしまう。中でも国防部のブログ「同苦同楽」は、2009年の「大韓民国ブログアワード」で公共部門1位に選ばれたほど人気を集めている。





韓国国防部のブログ「同苦同楽」


国防部、陸軍、兵務庁などがブログを運営する目的の1つは、徴兵制を怖がる最近の若者に、約2年の軍生活を通じて、人間として大きく成長できると思わせる(!)ためなのかもしれない。軍に入ってみたら資格もたくさん取れていいことだらけ、軍で芽生えた友情は一生もの、といった内容のWebマンガがずらりと並んでいる。このマンガがあまりにも面白く、しかもかわいいので、「軍に入っていろいろ経験してこそ大人よね~」なんてついつい「お気に入り」に追加してしまった。


 Twitterでは軍生活のエピソードを描いたこのマンガにリンクして、「私が軍にいたころは~」と始まる徴兵自慢話のネタにもなっている。兵務庁のブログには、徴兵で軍に入隊した人気芸能人の軍生活の写真も掲載されているので、ファンにとってはありがたいブログなのだ。


 韓国では就職が厳しく失業率も高いだけに、労働部のブログも人気が高い。大学生向けに労働基準や勤労者の権利などを分かりやすく解説するため、人気ドラマのストーリーを事例にして解説したりもする。アルバイトをするときに確認すべきことだとか、給料をもらえなかったときにはどこに相談すればいいのかといった基本的なことから、まじめな国家政策に至るまで、文字よりもマンガと写真をいっぱい掲載している。


 しかもこのブログの運営者は人気コミックマンガの主人公という設定。中小企業に勤める営業マンたちの苦労と人情と友情をテーマにしたマンガの世界そのままをブログに生かしている。


 就職活動中のブロガーの投稿も多く、海外でのワーキングホリデー体験談、アルバイト体験談などが盛りだくさん。クイズ形式の懸賞イベントもよく開催されている。2010年9月には米スタンフォード大学で行われたという5ドルプロジェクトの韓国版コンテストを行っていた(これは、5ドルを投資して、4週間後、社会的価値のあるビジネスとして誰が最も高い収益を上げられるのかを競うコンテスト。実際にスタンフォード大学で優勝したチームは5ドルで650ドルを稼いだという。そのビジネスモデルとは、学生の前でプレゼンする3分間をある企業に売り、その企業の求人広告をプレゼンの代わりにすることで広告料として650ドル稼いだ、というものだった。頭いい!)。


 このようにTwitterと連動させてみたり、イベントを開いてみたり、若い人が喜んで使ってくれる機能は何だろうと四苦八苦した甲斐があったのか、政府ブログは平均1日4000~5000人ほどが訪問していて、Twitterのフォロー数もぐんぐん伸びている。韓国の人口は日本の約3分の1なので、1日これだけの人が訪問するというのはけっこうな数字なのである。


 訪問者数が伸びて国家政策の宣伝につながり何かいいことがあったのかというと、まだそれは分からない。でも政府のやることに興味を持ち、一言二言つぶやき始めた人が増えているのは確かだ。





趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年9月22日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20100922/1027580/

タブレットPCの買い時はまだ遠い? それでも準備急ぐ韓国(後編)~キャリアはWi-Fi拡大総力戦に突入

(前編「アーリーアダプターは飛びつくか」はこちら


 韓国は2008年3月より1年以上の約定加入を条件に端末購入補助金をもらって安く携帯電話が買える制度が復活した。日本が奨励金制度をやめたのとはちょうど逆のことが始まったのである。2008年約定で加入したユーザーは新しい端末に乗り換えたくてもできなかったが、キャリアの約款が改定され、約定終了まで6カ月以下の場合は、同じキャリア間で約定を承継して端末を買い換えるようにした。約定が終わるまであと6カ月というユーザーは違約金を払うことなく、同じキャリアの別の端末と料金設定に乗り換えられるので、スマートフォンの加入もぐんぐん伸びるだろうというのがキャリアの予測である。


 2010年末には約843万人が“約定奴隷”から解放されるので、年末年始の商戦ではiPhone 4をはじめとする「スマートフォン+国産タブレットPC」の販促競争がピークになると見込まれている。


 キャリアとしては、今のところアプリケーションと通常より3倍ほど高いスマートフォン専用料金制度からしか利益が取れないような状況なので、スマートフォンは使い方が難しいと敬遠するお年寄りや幼児向けにタブレットPCを販売してアプリケーション利用を伸ばそうとしている。3D、ドラマ、趣味講座、教育コンテンツを中心に動画を確保するとよく宣伝している。


 また最近すごく目に付くのは、キャリアのWi-FiスポットCMである。KTとSKテレコムは「うちの方が断然Wi-Fiスポットが多い、しかも安い」、「うちはWi-Fiフリースポットも多い、容量制限なく使い放題」といった具合に、お互いをけなし攻撃するようなCMまで登場しているのだ。KTはWi-FiのCMだけでも違う内容で10本以上制作し、同時多発的にテレビに流している。KTの加入者は地下鉄でもデパートでも映画館でも、どこでもWi-Fiが使えるけど、ほかのキャリアに加入するとすごく不便ですよ、といった内容だ。LGU+(LGUプラス、LGテレコムから社名変更) も「100Mbpsの速度を出すWi-Fiはうちだけ」とCMをじゃんじゃん流している。




KTの加入者は地下鉄、デパート、ファミレス、映画館など主な施設でWi-Fiを使えるようになった

スマートフォンやタブレットPCを使わせるためには、3Gのネットワークも必要だが、やはり、より速度が速く容量を気にせず使えるWi-Fiがどこでも使える環境でないといけない(韓国では3Gでアクセスすると料金に応じて500MBまで、1GBまでと使える容量に制限がある。2010年8月から、やっと日本のように無制限使い放題のパケット定額制度をSKテレコムが始めた)。

 カフェやレストラン、ショッピングセンターなどでも店内をWi-Fiフリースポットにするところが増えている。コーヒー1杯頼んで何時間もWi-Fiを使う人もいるため、テーブルの回転率が落ちるからとあえてWi-Fiスポットにしないところもあるが、Wi-Fiが使えないと不便だからとお客さんが来ない問題もあったのだ。


 韓国よりも先にスマートフォンやWi-Fiが普及したアメリカでは、シリコンバレーを中心に延々とカフェに居座る客が増えすぎてWi-Fi提供を中止、または決まった時間だけ提供、または1人1時間と制限するカフェも出ているという。韓国ではカフェのフランチャイズごとに、無料でWi-Fiを提供した場合としなかった場合の売り上げや利益の相違を比べる調査が行われているほど、みんなの関心事になっている。


 アメリカの市場調査会社であるJiWireの報告書によれば、2010年4~6月の世界のWi-Fiスポットを調べたところ、世界全体でもっともWi-Fiスポットが多いのはアメリカで7万6216カ所だった。同国の全Wi-Fiスポットのうち、無料で使えるフリースポットは55.1%を占めている。スマートフォンやタブレットPCの普及で、お店で自由にネットを使えるようWi-Fiを提供するところが多いからだそうだ。韓国は1万2818カ所に過ぎなかったが、2010年末までにはKTが4万、SKテレコムが1万5000、LGU+が1万1000のスポットを構築するとしているので、この小さい国にアメリカ並みの数のWi-Fiスポットが作られることになる。


 インフラだけでなく、より使いやすいスマートフォンとタブレットPCを開発しようと、キャリアとメーカー、政府のシンクタンクが参加し、「感性ICT」を研究する協会も立ち上げた。人体の脈、脳波、表情、生活習慣などを読み取って、端末が反応しUIを自動的に切り替えてくれるといったことを「感性ICT」というのだそう。


 スマートフォンとタブレットPCを使ったモバイルライフを楽しむための下準備は着々と進められている。後はiPadとGalaxy Tabが発売されて、ユーザーの手に渡されるのみ。私はメールだけチェックすれば済む会社重役でもないし、文字を打ち込む仕事が多いのでノートパソコンの方が便利なのだが、それでもタブレットPCは気になる。アーリーアダプターにあこがれる自慢したがりの1人だからかな?



趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年9月16日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20100909/1027378/