韓国のタブレットPC競争、KTが「iPadより軽い」テレビ付きタブレット発売で拍車

 iPadの正式発売が未だ決まらない韓国。それでも新し物好きで自慢したがりの韓国人だけに、個人輸入でiPadを使っている人が数千人を超えると言われているほどである。


 iPadを早く使いたくてユーザーがうずうずする中、一足先に国内メーカーがAndroid OSを搭載したタブレットパソコンを発売すると発表。8月30日と31日、立て続けに、通信最大手KTが7型タブレット「IDENTITY TAB」を、ナビゲーションシステムや電子辞書などの電子端末メーカーであるi-STATIONが7型3Dタブレット「Z3D」と5型のミニタブレット「Buddy」と「Dude」を公開した。


 メーカーはタブレットPCの主なユーザーを外回りの多いビジネスマンと受験生とに想定している。教育熱が高く大学入試にすべてをかける韓国では、受験対策として、教育放送が無料で提供する動画を見るために、携帯型動画再生端末やネットブック、スマートフォンが売れるからだ。Eラーニングが広く浸透しているこの国ならではの事情もタブレットPCの普及に影響を与えそうだ。


 またスマートフォンの急速な普及により、立派なパソコンを買うよりもスマートフォン+タブレットPCの組み合わせが理想的と考える人が増えてきた。さらに、韓国では2013年からタブレット型のデジタル教科書を全国の学校へ導入するとしているだけに、タブレットPCによってどこよりも早く「子ども1人に1台」の普及も期待される。デジタル教科書としての表現力を高めるため、タブレットから3Dや拡張現実(AR)を表示できることも重要になっている。


 その上、IPTVの次に話題をさらうスマートTVとスマートフォン、タブレットPC、情報家電の連動によるマルチスクリーン戦略も今後の重要なビジネスモデルと考えられるため、メーカーにとってその間をつなぐタブレットPCの市場先制とシェア獲得は急務と言える。


 KTの「IDENTITY TAB」はAndroid 2.1、7型TFT LCD、重さ450g。静電式タッチパネル、1GHzのCPU、8GBの内蔵メモリー、外付けSDカード、地上波DMB(ワンセグ)、300万画素カメラ、SNSと電子書籍リーダー、文書編集機能を備える。バッテリーの持ち時間は動画連続再生3時間30分、連続待機時間72時間。多様なファイル形式の動画を再生できるコーデックを搭載することで、マルチメディア利用に特化した。iPadより小さく、軽く、安くすることで差別化している。




KTが発表した「IDENTITY TAB」

「IDENTITY TAB」の特徴は、Wibro(モバイルWiMAX)使い放題料金プラン(月額約2000円)に24カ月約定加入すれば、無料で端末をもらえることである。この料金プランに加入すればWi-Fiも無料で使え、Wibroの信号をWi-Fiに変える「Egg」という手のひらサイズのモデムももらえる。約定なしの場合、約3万8000円で購入する。

ナビゲーションや受験勉強用として高校生に人気の高い動画再生端末を製造するi-STATIONは、同社「Z3D」が世界初の3DタブレットPCだと宣伝する。偏光3Dパネルを搭載しており、専用のメガネが必要だ。Android 2.1、7型TFT LCD、16GBのモデルは約3万円、32GBモデルは約4万6000円で販売する。2011年にはメガネなしで3Dが見られるタブレットを発売するという。

 「Buddy」は学習用タブレットとして企画されたもので、約2万2000円と値段を安く抑えた。5型TFT LCD画面で持ち運びやすくし、電子辞書、教育放送の動画をダイレクトにダウンロードできる。「Dude」はマルチメディア機能に重点を置いたタブレットで、5型、ワンセグ、300万画素カメラ、GPSを搭載する。


 この春から注目されていたサムスン電子のAndroid 2.2、7型タブレット「Galaxy Tab」は今秋ドイツで開催するコンシューマーエレクトロニクスショー「IFA 2010」で公開され、アメリカで先行販売されるという。iPadにはないテレビ電話機能付きが特徴である。LGも「OPTIMUS PAD」をIFA 2010で公開して、年内に韓国で発売するとしている。KTの「IDENTITY TAB」に対抗して、9月中にはSKテレコムから「Galaxy Tab」が発売されるというので、スマートフォンに続いてキャリアのタブレットPC競争も激しくなりそうだ。


 端末の普及のためには仕様や価格と同じぐらいモバイルインターネットとコンテンツも重要である。韓国では全地下鉄駅内でWi-Fiが使えるようにし、フリースポットも増やしている。KTもサムスンもこれからはタブレット向けコンテンツに力を入れるとして、動画ストリーミング、電子ブック、スマートフォン向けアプリケーションとの連動を強調する。特に教育コンテンツは大事で、有名な塾や講師の動画を独占提供することでタブレットの売れ行きが違ってくるとも見られている。


 しかし韓国ユーザーの間では、9.7型のiPadの方が見やすく、動画再生時間も韓国産の3倍を超える10~12時間でバッテリーの持ちがいい、2万件以上のアプリを利用できる、といったことから、今すぐ韓国メーカーのタブレットを買うより、iPadの発売を待った方がいいという意見もある。携帯電話端末メーカーやMP3プレーヤーメーカー、ノートPCメーカーの相次ぐタブレットPC発売の発表で、本格的なタブレットPC競争は2010年の年末になると見込まれている。

趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年9月2日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20100902/1027250/

もう待てない! iPad発売未定の韓国、購入代行サイトに注文殺到

新しい製品やサービスが大好きで誰よりも早く使いたがる、いわゆる「アーリーアダプター」と呼ばれる人が多い韓国。米で売り切れ続出というiPadへの関心も非常に高い。iPhoneによるモバイル革命が起きたということもあってか、進化した電子書籍リーダーというよりは、何でも使える、ライフスタイルに大きな影響を与える携帯型情報機器としてiPadを期待しているようにみえる。

 Appleによると韓国での発売予定はまだ決まっていないということだが、TwitterやブログにはiPad体験記が書き込まれ、海外購入代行サイトを利用した注文が殺到しているという。iPhoneも「来月には出る」として2年近く発売が遅れたため、海外で購入したiPhoneをキャリアの代理店に持ち込み契約して(携帯電話として使うためには別途端末認証などの手続きが必要だった)使う人もいたほどだった。いつになるか分からない正式販売まで待てないのである。


 海外購入代行サイトは文字通り、海外でしか手に入らない商品の購入をネットで依頼し、韓国へ郵送してもらう代行サービスのこと。海外発送に対応していないオークションサイトやアウトレットの商品を購入するためによく使われている。iPad(16GB)が米で499ドルのところ、郵送料や手数料込みで約84万ウォン(7万円前後)はする。韓国で未発売のiPadが既に1000台以上は輸入されたという推定値があるほどだ。大手海外購入代行サイトはどこもiPad特設コーナーを設けている。共同購入で人を集め大量注文することで手数料を安く抑えようと、Twitterやブログを通じて購入者を集める人も出てきた。


 中には「iPad買った!」という書き込みに対して、どんな機能があるのか、一体どんなものなのか、あまりにも質問が相次いだため、自分のiPadを触って体験できるよう体験会を開催した人もいるから面白い。発売予定はまだないというのに、iPadを展示する大型書店もある。ここでもiPadを体験するため長蛇の列!


 韓国ではやはりiPadの大きな画面が魅力とされている。瞬時に起動し、写真もきれいに映る解像度に期待は高い。電子ブックだけでなくネット検索、ゲーム、動画再生、デジタル額縁、GPSナビゲーションとしても利用できるので、遊びにも仕事にも使える。有料アプリケーションを購入すれば、韓国語入力もできる。


 iPadを取り寄せた人の中には、アプリケーション開発者や出版業界の人が多いようだ。個人がiPhone向けアプリケーションを開発して一晩で数百万円稼いだという実話が何度も報道されてから、アプリケーション開発は“宝の山”として注目を浴びているのだ。


iPadをきっかけに離陸する韓国電子書籍ビジネス



 韓国でも2009年から電子ブックリーダーが次々に発売され、人気作家の連載が電子書籍限定で配信されたり、新聞社が有料配信を始めたり、「電子書籍」がようやくビジネスモデルとして動き始めたことも影響している。韓国の電子書籍サービスは1999年に登場したものの、10年も眠ったままの市場だったが、電子書籍にぴったりの使いやすい機器が登場したことでやっと活気が出始めた。出版業界もデジタルコンテンツ業界も、iPadのように誰でも楽に使える機器が出たからには、パソコン向けサービスとはまた違うコンテンツサービスができると胸を躍らせている。銀行やポータルサイトもiPadからサービスを利用できるよう準備しているという。


 電子書籍リーダーを発売したばかりのハードウエア業界にとってiPadは嫌な存在ではある。しかし、iPadの影響でパソコンや電子書籍、デジタルコンテンツ産業が生まれ変わるきっかけになることは間違いないだろう。iPhoneをきっかけに韓国モバイル産業が大きく変わったように。世界市場で活躍する韓国メーカーらは当然iPadを超える機器作りを目指すだろうから、これをきっかけに韓国産タブレットPCや電子書籍リーダーの技術発展も望める。


 韓国では一家に1台、テレビはなくてもデスクトップパソコンはあるほどで、「大画面+ネット」依存が強い。テレビの番組もテレビ局のサイトからリアルタイムで高画質映像を観られ(Onairサービスといって、CMも含めテレビに流れる画面がそのまま無料でネットから視聴できる)、音楽や動画、ゲーム、雑誌などパソコンから利用できる無料コンテンツも豊富にそろっている。


 iPhoneのようなスマートフォンの利用が急増しているのも、携帯電話より画面が大きいのでストレスがない、無線LANを使えるから料金を気にすることなくネットが使え、よりたくさんのコンテンツを利用できるという点が挙げられる。「大画面+ネット」への要求の高さからすると、無線LANに対応した9.7インチのiPadは、韓国人にとって欲しくてたまらないものなのだ。


(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年4月14日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20100414/1024306/