タブレットPCの買い時はまだ遠い? それでも準備急ぐ韓国(後編)~キャリアはWi-Fi拡大総力戦に突入

(前編「アーリーアダプターは飛びつくか」はこちら


 韓国は2008年3月より1年以上の約定加入を条件に端末購入補助金をもらって安く携帯電話が買える制度が復活した。日本が奨励金制度をやめたのとはちょうど逆のことが始まったのである。2008年約定で加入したユーザーは新しい端末に乗り換えたくてもできなかったが、キャリアの約款が改定され、約定終了まで6カ月以下の場合は、同じキャリア間で約定を承継して端末を買い換えるようにした。約定が終わるまであと6カ月というユーザーは違約金を払うことなく、同じキャリアの別の端末と料金設定に乗り換えられるので、スマートフォンの加入もぐんぐん伸びるだろうというのがキャリアの予測である。


 2010年末には約843万人が“約定奴隷”から解放されるので、年末年始の商戦ではiPhone 4をはじめとする「スマートフォン+国産タブレットPC」の販促競争がピークになると見込まれている。


 キャリアとしては、今のところアプリケーションと通常より3倍ほど高いスマートフォン専用料金制度からしか利益が取れないような状況なので、スマートフォンは使い方が難しいと敬遠するお年寄りや幼児向けにタブレットPCを販売してアプリケーション利用を伸ばそうとしている。3D、ドラマ、趣味講座、教育コンテンツを中心に動画を確保するとよく宣伝している。


 また最近すごく目に付くのは、キャリアのWi-FiスポットCMである。KTとSKテレコムは「うちの方が断然Wi-Fiスポットが多い、しかも安い」、「うちはWi-Fiフリースポットも多い、容量制限なく使い放題」といった具合に、お互いをけなし攻撃するようなCMまで登場しているのだ。KTはWi-FiのCMだけでも違う内容で10本以上制作し、同時多発的にテレビに流している。KTの加入者は地下鉄でもデパートでも映画館でも、どこでもWi-Fiが使えるけど、ほかのキャリアに加入するとすごく不便ですよ、といった内容だ。LGU+(LGUプラス、LGテレコムから社名変更) も「100Mbpsの速度を出すWi-Fiはうちだけ」とCMをじゃんじゃん流している。




KTの加入者は地下鉄、デパート、ファミレス、映画館など主な施設でWi-Fiを使えるようになった

スマートフォンやタブレットPCを使わせるためには、3Gのネットワークも必要だが、やはり、より速度が速く容量を気にせず使えるWi-Fiがどこでも使える環境でないといけない(韓国では3Gでアクセスすると料金に応じて500MBまで、1GBまでと使える容量に制限がある。2010年8月から、やっと日本のように無制限使い放題のパケット定額制度をSKテレコムが始めた)。

 カフェやレストラン、ショッピングセンターなどでも店内をWi-Fiフリースポットにするところが増えている。コーヒー1杯頼んで何時間もWi-Fiを使う人もいるため、テーブルの回転率が落ちるからとあえてWi-Fiスポットにしないところもあるが、Wi-Fiが使えないと不便だからとお客さんが来ない問題もあったのだ。


 韓国よりも先にスマートフォンやWi-Fiが普及したアメリカでは、シリコンバレーを中心に延々とカフェに居座る客が増えすぎてWi-Fi提供を中止、または決まった時間だけ提供、または1人1時間と制限するカフェも出ているという。韓国ではカフェのフランチャイズごとに、無料でWi-Fiを提供した場合としなかった場合の売り上げや利益の相違を比べる調査が行われているほど、みんなの関心事になっている。


 アメリカの市場調査会社であるJiWireの報告書によれば、2010年4~6月の世界のWi-Fiスポットを調べたところ、世界全体でもっともWi-Fiスポットが多いのはアメリカで7万6216カ所だった。同国の全Wi-Fiスポットのうち、無料で使えるフリースポットは55.1%を占めている。スマートフォンやタブレットPCの普及で、お店で自由にネットを使えるようWi-Fiを提供するところが多いからだそうだ。韓国は1万2818カ所に過ぎなかったが、2010年末までにはKTが4万、SKテレコムが1万5000、LGU+が1万1000のスポットを構築するとしているので、この小さい国にアメリカ並みの数のWi-Fiスポットが作られることになる。


 インフラだけでなく、より使いやすいスマートフォンとタブレットPCを開発しようと、キャリアとメーカー、政府のシンクタンクが参加し、「感性ICT」を研究する協会も立ち上げた。人体の脈、脳波、表情、生活習慣などを読み取って、端末が反応しUIを自動的に切り替えてくれるといったことを「感性ICT」というのだそう。


 スマートフォンとタブレットPCを使ったモバイルライフを楽しむための下準備は着々と進められている。後はiPadとGalaxy Tabが発売されて、ユーザーの手に渡されるのみ。私はメールだけチェックすれば済む会社重役でもないし、文字を打ち込む仕事が多いのでノートパソコンの方が便利なのだが、それでもタブレットPCは気になる。アーリーアダプターにあこがれる自慢したがりの1人だからかな?



趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年9月16日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20100909/1027378/

タブレットPCの買い時はまだ遠い? それでも準備急ぐ韓国(前編)~アーリーアダプターは飛びつくか

2010年9月3日、ドイツで開催されたヨーロッパ最大規模の家電展示会「IFA2010」でサムスン電子が初のタブレットパソコンである「Galaxy Tab」を公開した。サムスンが「2010年末までに世界市場で100万台以上売りたい」とする自信満々の端末である。

 iPhoneキラーとして大ヒットが期待される「Galaxy Tab」は、日本でも発売予定の「Galaxy S」3個分ほどの大きさ(7型)。iPadに対抗してスーツのポケットにも入るほど小さく軽く、携帯性と移動性を優先する。カメラ付きでテレビ電話や音声通話もできるスマートフォンのようなパソコンであることを強調している。




サムスン初のタブレットパソコン「Galaxy Tab」

WebサイトのデザインにFlashを使うのが大好きな韓国では、iPhoneやiPadではサイトが表示されなかったり、ログインできなかったりという問題があったが、「Galaxy Tab」にはFlash表示機能があるので、どんなサイトでもすいすい見られるようになった。地上派DMB(ワンセグ)でテレビも見られるので、会社でも「昨日あのドラマ見た~?」が挨拶代わりのドラマ好きの韓国人にはぴったりかもしれない。


 韓国ではSKテレコムより9月中には発売される予定で、スマートフォンよりは高い。ただし約定加入すれば補助金がもらえるのでそれほど負担にならないという。


 「よりパソコンに近い」のがiPadで、より「スマートフォンに近い」のが「Galaxy Tab」と国内では説明している。アップルに比べてアプリケーションが少ない、バッテリーの持ちがiPadより短いといった点もあるが、ビジネス用途にタブレットPCを使う人も増えていることから、やはり携帯性の高い7型の需要が伸びるのでは?という見方もある。




 「Galaxy Tab」が公開されたことで、ついにサムスンとアップルの真剣勝負が始まったと世界的に注目を集めているようだ。年末商戦に向けてHPやDell、グーグルもタブレットPCを発売するとしているので、「アップル対その他大勢」の競争になる可能性もある。





IFA2010で公開されたGalaxy Tab


 「Galaxy Tab」は韓国でも今年の春から「S-Pad」というプロジェクトで期待を集めていたタブレットPCだけに、マスコミでは大々的に「Galaxy Tab」の機能を動画で見せ、どれぐらい売れるだろうかと人々の予測が飛び交っている。携帯電話、MP3プレーヤー、テレビ、パソコンなどを開発してきた総合メーカーとして、ユーザーのメディア利用形態のパターンや近年の変化を熟知するサムスンの自信作であることからも注目せずにはいられない。同社はさらに、2011年からは多様なサイズのタブレットPCを発売するとしている。


 先にサムスンとKTの国産タブレットPCを売ってしまおうという戦略なのだろうか、韓国ではまだiPadの正式発売が決まらない。ネットでは「Galaxy Tabもいいけど、それより早くiPad発売して! iPadと比べようがない!」、「なんで韓国だけiPad発売してくれないの?」という不満を書き込む人がどんどん増えている。KTのタブレットPC以外は発売も未定でニュースや宣伝ばかりなので、アーリーアダプター(誰よりも早く新製品を使いたがる人)で自慢したがりの韓国人はいらいらしている。



 韓国のデジタルデイリーに面白い記事があった。台湾の携帯端末メーカーであるHTCの製品修理を担当するTGSという会社が2010年8月、利用者1008人を対象にタブレットPCについてアンケート調査を行ったところ、「タブレットPCはスマートフォンのように売れると思いますか?」という質問に対して64.3%が「そう思わない」と否定的な見方を示したことである。


「売れる」と答えた人は28.2%、「分からない」と答えた人は7.5%だった。「タブレットPCを買いたいですか?」という質問に対しても「はい」は43.8%、「スマートフォンだけで十分」という人が37.1%だった。「購入しない」と答えた人は19.1%だった。「現在のスマートフォンに満足していますか?」という質問には67.3%が「満足」と答えている。


 韓国の家庭内パソコン普及率は9割ほどで、会社でも社員1人パソコン1台が当たり前、学校でも先生1人パソコン1台どころか2台ぐらいは置いてある。そのせいか、あとはスマートフォンで十分と考えるユーザーが多く、タブレットPCが売れるようになるまでには時間がかかりそうだ。


 2009年11月、世界より2年半遅れてiPhoneが韓国で発売されたとき、スマートフォンは2010年末まで多くて100万台ほど売れるだろうと予測されていたが、既に400万台規模の市場に成長した。タブレットPCも発売直後からあっという間に普及するのではないかと期待されていただけに、ユーザーのこのような反応は意外だった。


 タブレットPC記事に対するコメントなどを見ていると、インターネットを使いたい、映画が見たい、電子書籍が読みたい、という理由でタブレットPCを購入するよりも、新しい端末を体験してみたいから、世界でブームになっているから、といった理由の方が多いように感じた。(後編に続く)



趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年9月9日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20100909/1027377/

[日本と韓国の交差点] 徴兵は、韓国男性アイドルの芸能人生命を左右する

「イジェナルババミスター イルミモヤミスター、ジージージージーベイベーベイベーベイベー」。しまった、また口ずさんでしまった。テレビでもネットでも街中でも、洗脳されるほど聞いてしまったせいだろうか。この歳になってもアイドルの歌がすんなり歌えてしまう。

 60万人に及ぶ韓国国軍の希望とロマンと呼ばれる女神さま、「少女時代」がついに日本にやってきた。彼女たちだけではない。「カーラ」や「ブラウンアイドガールズ」、「フォーミニッツ」など、韓国で大人気の女性アイドルグループが次々日本デビューを果たしている。


 韓国のメディアも、「女性アイドルたちが日本を魅了した」と連日報道している。「ライブに2万人が集まった」。「海外アーティストのアルバム売上順位で記録を更新した」。「バラエティー番組に出演したこんな発言をした」。などなど、日本におけるすべての活動が報道されていると感じられるほどだ。「本当に人気がある」ことの証拠として、レコード店の陳列やライブ会場の写真がネットに投稿されている。日本に住んでいる韓国人が中心となって投稿しているようだ。



軍での慰問公演の数は人気のバロメータ



 韓国のアイドルの人気順位は、アルバムや曲がダウンロード販売された数の順位だけでなく、軍の慰問公演にどれぐらい呼ばれるかも重要な要素だ。慰問公演の回数が多いほど、国民的人気を誇るアイドルであると言える。人気が高いのはやはりセクシーな踊りを売りにする女性歌手。ここ最近は「少女時代」が人気ナンバーワンなのだそう。韓国軍の最終兵器は軍人の士気を最高潮にしてくれる「少女時代」ではないかと思ってしまうほどすごい。ネットに投稿された慰問公演の動画を見ていると、少女時代の歌声が「うお~」という軍人たちの歓声にかき消されて全く聞こえない!


 国軍放送の広報大使にも、男性芸能人ではなく女性アイドルグループ「Fx」が選ばれた。「少女時代」の妹分として結成されたグループだ。1年間、国軍放送への出演、キャンペーン、慰問公演をする。男性アイドルは徴兵で軍とかかわるいっぽう、女性アイドルもこうした形で軍と密接な関係にある。



男性アイドルにとって徴兵は「アイドルの終わり」を意味する



 最近の若手スターの中には、「徴兵のことであれこれ言われたくない」と、厳しい海軍や空軍にわざと志願する人もいる。本人は苦労するし、除隊後も人気が続くかどうか不安はあるだろう。だが、株は上がる。自分の子供を軍に行かせたお母さんたちの支持率が高くなれば、視聴率を取れるタレントになれるかもしれない。


 いっぽうで年々増えているのは、不祥事を起こし、「自粛」のために入隊するケースである。麻薬、飲酒運転、傷害事件などの問題を起こし、“みそぎ”のために軍に入る。そして、事件が忘れられたころに除隊して芸能界に復帰する。


 「芸能人」の場合、入隊してからも「芸能兵士」として芸能活動を続けられる道がある軍の広報映画に出演したり、国軍が放送するFMラジオ番組のパーソナリティを務めたり(国軍放送のラジオは誰でも聞ける)、慰問イベントの司会をしたり。それでも人気が落ちるのを恐れて、法律違反を犯してでも徴兵を免除されたがる。


 男性アイドルの場合、徴兵の通知は「もうアイドルではなくなる」という通知にも等しい。徴兵をきっかけにグループ解散もよくある話しだ。小学校5~6年生のときにオーディションで選ばれ、練習生として5~6年ほど苦労してやっとデビュー……と思ったら、3~4年たった全盛期に徴兵の通知が届く。除隊後もアイドルで居られる保障はない。


 最近は「軍必ドル(徴兵を済ませたアイドル)」といって、除隊してからデビューする実力派もいるが、美少年というよりお笑い系アイドルとして人気を得ている。


>>次ページ アイドルのマネジメント会社にとっても徴兵は大問題 



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By 趙 章恩

2010年9月24日


-Original column
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20100928/216412/

月刊Journalism10月号特集- T・G・I・F! 韓国はいまスマートフォン革命まっただ中

■月刊Journalism


【10月号のご案内】
Journalism10月号特集は「大学とジャーナリスト教育」


特集は「大学とジャーナリスト教育」。メディア激変期のジャーナリスト教育のあり方を問い直す。慶應・上智・早稲田教授座談会「今、大学は何を教えるべきか?」、「慶大メディアコムの成果と課題」、「現役記者が大学で教える調査報道の方法」、「米国大学のオンライン・ジャーナリスト教育」ほか。「新聞記者のための動画撮影講座」なども掲載。



2010年10月号の内容(目次)






特集 大学とジャーナリスト教育


◎[慶應・上智・早稲田教授座談会]
メディアは揺らぎ、学生は変わる 今、大学は何を教えるべきか?

大石 裕(慶應義塾大学教授)・音 好宏(上智大学教授)・瀬川 至朗(早稲田大学大学院教授)/司会 野村 彰男(朝日新聞社ジャーナリスト学校長))
◎就職と研究の両立をめざす慶應「メディアコム」の教育内容
大石 裕(慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所所長)
◎大学と記者のコラボで調査報道 早大大学院ジャーナリズムコース
澤 康臣(共同通信外信部記者)
◎「科学技術コミュニケーター」の役割 北大CoSTEPの成果と今後
杉山 滋郎(北海道大学理学研究院教授)
◎ビジネス教育の手法から見えた、新たなジャーナリスト教育の方向
藤代 裕之(ジャーナリスト/学習院大学非常勤講師)
◎世界中いつ、どこでも学べる 白熱のオンライン・ジャーナリズム講座
[ミズーリ大学とポインター・インスティテュートの場合]

松下 佳世(朝日新聞社ジャーナリスト学校主任研究員)

[新聞記者のための動画撮影講座]第1回〈企画から撮影〉


新聞記事をウェブ・ニュース映像にする

奥村 信幸(立命館大学産業社会学部准教授)

海外メディア報告


T・G・I・F! 韓国はいまスマートフォン革命まっただ中

趙 章恩(ITジャーナリスト)

メディア・リポート
※アサヒ・コムで記事がお読みいただけます。記事一覧はこちら>>
新聞


報道から一歩踏み出す「新聞力」が世の中を変える

服部 孝司(神戸新聞社取締役地域事業本部長)

放送


映画「ザ・コーヴ」は文化衝突の問題なのか?

金平 茂紀(TBSテレビ執行役員=報道局担当)

ネット


ヤフーとグーグルの提携で懸念される情報への自由なアクセス

藤代 裕之(ジャーナリスト/学習院大学非常勤講師)

出版


不況とデジタル時代の中で元気な「最寄りの書店」の共通点

星野 渉(文化通信社取締役編集長/東洋大学非常勤講師)

カラーグラビア


カンザスシティのホームレス・シェルター

山口 元(写真家)

ジャーナリズムの名言
別府 三奈子
[朝日新聞全国世論調査詳報]
◎2010年8月名古屋市民意識調査
◎2010年8月定例RDD調査


Link
http://www.asahi.com/shimbun/jschool/report/1010.html

韓国のタブレットPC競争、KTが「iPadより軽い」テレビ付きタブレット発売で拍車

 iPadの正式発売が未だ決まらない韓国。それでも新し物好きで自慢したがりの韓国人だけに、個人輸入でiPadを使っている人が数千人を超えると言われているほどである。


 iPadを早く使いたくてユーザーがうずうずする中、一足先に国内メーカーがAndroid OSを搭載したタブレットパソコンを発売すると発表。8月30日と31日、立て続けに、通信最大手KTが7型タブレット「IDENTITY TAB」を、ナビゲーションシステムや電子辞書などの電子端末メーカーであるi-STATIONが7型3Dタブレット「Z3D」と5型のミニタブレット「Buddy」と「Dude」を公開した。


 メーカーはタブレットPCの主なユーザーを外回りの多いビジネスマンと受験生とに想定している。教育熱が高く大学入試にすべてをかける韓国では、受験対策として、教育放送が無料で提供する動画を見るために、携帯型動画再生端末やネットブック、スマートフォンが売れるからだ。Eラーニングが広く浸透しているこの国ならではの事情もタブレットPCの普及に影響を与えそうだ。


 またスマートフォンの急速な普及により、立派なパソコンを買うよりもスマートフォン+タブレットPCの組み合わせが理想的と考える人が増えてきた。さらに、韓国では2013年からタブレット型のデジタル教科書を全国の学校へ導入するとしているだけに、タブレットPCによってどこよりも早く「子ども1人に1台」の普及も期待される。デジタル教科書としての表現力を高めるため、タブレットから3Dや拡張現実(AR)を表示できることも重要になっている。


 その上、IPTVの次に話題をさらうスマートTVとスマートフォン、タブレットPC、情報家電の連動によるマルチスクリーン戦略も今後の重要なビジネスモデルと考えられるため、メーカーにとってその間をつなぐタブレットPCの市場先制とシェア獲得は急務と言える。


 KTの「IDENTITY TAB」はAndroid 2.1、7型TFT LCD、重さ450g。静電式タッチパネル、1GHzのCPU、8GBの内蔵メモリー、外付けSDカード、地上波DMB(ワンセグ)、300万画素カメラ、SNSと電子書籍リーダー、文書編集機能を備える。バッテリーの持ち時間は動画連続再生3時間30分、連続待機時間72時間。多様なファイル形式の動画を再生できるコーデックを搭載することで、マルチメディア利用に特化した。iPadより小さく、軽く、安くすることで差別化している。




KTが発表した「IDENTITY TAB」

「IDENTITY TAB」の特徴は、Wibro(モバイルWiMAX)使い放題料金プラン(月額約2000円)に24カ月約定加入すれば、無料で端末をもらえることである。この料金プランに加入すればWi-Fiも無料で使え、Wibroの信号をWi-Fiに変える「Egg」という手のひらサイズのモデムももらえる。約定なしの場合、約3万8000円で購入する。

ナビゲーションや受験勉強用として高校生に人気の高い動画再生端末を製造するi-STATIONは、同社「Z3D」が世界初の3DタブレットPCだと宣伝する。偏光3Dパネルを搭載しており、専用のメガネが必要だ。Android 2.1、7型TFT LCD、16GBのモデルは約3万円、32GBモデルは約4万6000円で販売する。2011年にはメガネなしで3Dが見られるタブレットを発売するという。

 「Buddy」は学習用タブレットとして企画されたもので、約2万2000円と値段を安く抑えた。5型TFT LCD画面で持ち運びやすくし、電子辞書、教育放送の動画をダイレクトにダウンロードできる。「Dude」はマルチメディア機能に重点を置いたタブレットで、5型、ワンセグ、300万画素カメラ、GPSを搭載する。


 この春から注目されていたサムスン電子のAndroid 2.2、7型タブレット「Galaxy Tab」は今秋ドイツで開催するコンシューマーエレクトロニクスショー「IFA 2010」で公開され、アメリカで先行販売されるという。iPadにはないテレビ電話機能付きが特徴である。LGも「OPTIMUS PAD」をIFA 2010で公開して、年内に韓国で発売するとしている。KTの「IDENTITY TAB」に対抗して、9月中にはSKテレコムから「Galaxy Tab」が発売されるというので、スマートフォンに続いてキャリアのタブレットPC競争も激しくなりそうだ。


 端末の普及のためには仕様や価格と同じぐらいモバイルインターネットとコンテンツも重要である。韓国では全地下鉄駅内でWi-Fiが使えるようにし、フリースポットも増やしている。KTもサムスンもこれからはタブレット向けコンテンツに力を入れるとして、動画ストリーミング、電子ブック、スマートフォン向けアプリケーションとの連動を強調する。特に教育コンテンツは大事で、有名な塾や講師の動画を独占提供することでタブレットの売れ行きが違ってくるとも見られている。


 しかし韓国ユーザーの間では、9.7型のiPadの方が見やすく、動画再生時間も韓国産の3倍を超える10~12時間でバッテリーの持ちがいい、2万件以上のアプリを利用できる、といったことから、今すぐ韓国メーカーのタブレットを買うより、iPadの発売を待った方がいいという意見もある。携帯電話端末メーカーやMP3プレーヤーメーカー、ノートPCメーカーの相次ぐタブレットPC発売の発表で、本格的なタブレットPC競争は2010年の年末になると見込まれている。

趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年9月2日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20100902/1027250/

[日本と韓国の交差点] 兵役は本当に義務なのか?

徴兵回避で揺れる韓国


韓国で有名なジョークの一つにこういうのがある。韓国女性が男性から最も聞きたくない話のネタ1位は軍隊の話、2位はサッカーの話、3位は軍隊でサッカーした話。

 韓国男性は軍の話になると、どんな寡黙な人でも興奮する傾向がある。英雄談に、自慢話に、苦労話に。延々としゃべりたがる。


 サッカーも同じ。軍隊でサッカーした話はもっとうんざりする。女性は「戦闘体育」がどうのこうのよりも、共通の話題で盛り上がりたいと思うからだ。でもやっぱり止められないみたい。60代の父だって、学生将校で同じ部隊に居た友達と、いまだに最も仲良くしているし、当時の話で盛り上がる。


 韓国の国籍を持つ男性は国防の義務があり、2年ほど軍に行かなければならない。兵役法の規定により、韓国の男性は19歳になると徴兵検査(身体検査)を受け、その結果に応じて入隊することになっている。


 服務期間は入隊した時期によって違う。2007年の兵役法改定により、2014年までに陸軍24カ月→18カ月、海軍26カ月→20カ月、空軍27カ月→21カ月と段階的に服務期間を短縮していく。ところが少子化で徴兵の対象となる男子の数が減っている。そのいっぽうで、北朝鮮は約117万人の兵士を維持している。韓国軍の人数が50万人にも満たなくなるという懸念から、徴兵期間をまた24カ月に戻す議論が始まっている。


 兵役は、大きく分けると2種類ある。陸軍の私兵(将校でない兵士。二等兵から兵長までを指す)となって入営する「現役」と、自宅から通い区役所や市役所など政府機関の業務補助をする「公益勤務」だ。徴兵の代わりにIT企業に勤める産業機能要員という制度もあったが、あまりにも弊害が多かったため2012年には廃止される。例えば、知り合いの会社に登録して出勤もしていないのに勤務したことにする、社長同士で自分の息子をお互いの会社に産業機能要員として登録させる、といったことがあった。


 医者、弁護士などの専門職も徴兵の例外ではない。軍医や公衆保険医、裁判所など専門的な仕事を任される。大学生の場合、成績優秀者のうち選抜試験を通過した学生は、将校で入隊できる制度がある。海軍と空軍は、自分から進んで入隊を申し込む「自願入隊」なので陸軍より選抜基準が厳しく、入るのが難しい。


 もちろん、女性も軍に入れる。女性の場合は徴兵ではなく志願入隊となる。それも、私兵ではなく幹部候補として入隊する。徴兵ではないので、女軍が入隊するためのハードルは高い。しかしエリート集団として、社会や軍が注目している。つい最近、女子大生向けにもROTC(Reserve Officers’ Training Corps)が新設され、全国各地の女子大から応募が殺到した。ROTCは、大学に通いながら軍事訓練を受け、卒業後は将校として入隊する仕組みだ。



兵役で細マッチョを実現



 徴兵検査の結果、右手の人差し指がなくて銃が撃てない、心臓が悪くて歩けない、精神異常、視力が悪すぎる、高度肥満で動けない…などの理由で免除される人がいる。


 知人の中に、この制度を“悪用”しようとした人が居る。もともとデブだったのを、さらに高度肥満にして入隊を免れようとした。だが、体重を増やすのに失敗。中途半端な体重にしかならなかったため、けっきょく入隊することになった。ただし、彼は軍のダイエット部隊に連れて行かれて、肉体改造に成功! みごとな細マッチョになって帰ってきた。


 性格も丸くなって、「人が変わった!」と両親も大喜びだった。軍に入るまで、彼の友達は、同じ学校、同じ地域、同じような家庭環境の人ばかりだった。だが、軍の友達は出身地も職業もばらばら。一緒に苦労した者同士だから、自然と友情が深まった。除隊後は人脈が広がって、社会生活の強い味方になっているという。



>>次ページ 大統領や議員、芸能人など、有名で高所得な人ほど徴兵を免れている  



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By 趙 章恩

2010年9月22日


-Original column
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20100921/216310/

また、趙さんセミナーに来てください!! 日韓部品素材産業セミナー GP JAPAN 2010


昨日、銀座で毛皮のついたコートを着ている人を見かけました。
そ、そんなに寒い?
ソウルに比べるととても暑くて、私は半そでで歩いていたのに。。。


それで、またまたセミナー告知です。


韓国企業の展示会も見れる無料のセミナーです。
http://www.kotra.or.jp/buhinten2010/seminar/index.html


日  時 2010年10月14日(木) 10:10 ~ 14:00、15日(金) 10:20 ~ 11:20
場  所 東京ビッグサイト 東1ホール 「2010韓国部品産業展」内 特別セミナー会場
主  催 KOTRA(大韓貿易投資振興公社)
内 容
10月14日(木)
10:10 ~ 11:00 韓国IT産業の最新動向
KDDI総研
チョウ・ジャンウン特別研究員 → ジャンウン。。。^0^


韓国IT産業の最新動向
危機を期待へ変えたスマート・コリア
韓国に学ぶICT融合ビジネス戦略


という、長いタイトルをつけようかどうか悩んでいる最中ではありますが、今韓国ではIT融合による新市場創出が課題です。


どういう分野が注目されていて、日本企業にも参考になる戦略とはどんなものがあるのか、といったことを話します。


最近講演が多くて楽しい日々を送ってます。資料作るのは本当に大変だけど、しゃべるの好きです!9月29日に開催された日経エレクトロニクス主催、デジタルヘルスケアのセミナーも楽しかったです。日本と韓国は非常に制度が似ているので、韓国の試行錯誤や先進事例は、日本企業と政府の参考になるはずです。今度はビッグサイトでお会いしましょう!


[日本と韓国の交差点] 儒教の国・韓国で続くゴールドミスの躍進

韓国の女性はたいへんなんだけど…


前回」から続く


 日本でも知られているように韓国は儒教の国である。儒教を韓国の国教のようにとらえる人も居るが、そうではない。儒教は生活方式や考え方、倫理、仁義禮知信に関する教えで、生活の基盤として社会全般に広がっている。家族を大事にする、友達を大事にする、お年寄りを大事にする、先生を尊敬して影さえも踏まない、年上には礼儀を守る、などが代表例。男性中心で男尊女卑の考えを含んでいる。女性は子供のころは父に従い、結婚したら夫に従い、老いてからは息子に従う、というのが昔からの教えである。


 先祖を大事にする考えから、法事も多い。法事は日本のように3回忌、7回忌ではなく、亡くなった日を陰暦カウントして毎年行う。忘れずにカレンダーに書いておかなければならない。親の世代は誕生日も陰暦で祝うので、カレンダーをもらったらまず法事の日、両親の誕生日、祖父母の誕生日を記録しておく。


 日本人はお葬式をお寺でするらしいが、韓国では法事を家で行う。儒教の教えを守って料理を準備し、しきたり通りに行う。由緒ある家柄ほど法事が多く、毎週のように何代目かの先祖の法事が回ってくる。



金さんはと金さんと同じではない



 韓国人の名字はみんな金さん、李さん、朴さんと同じように見えても、実は金海金氏、慶州金氏、豊壌趙氏、漢陽趙氏、といった具合に本貫(ボングァン)を持っている。本貫は自分の始祖は誰なのかを示すもので、初めて会った人でも本貫が同じであればご先祖さまは同じと考えられている。そのため2005年に民法が改定されるまで、本貫と名字が同じだと、他人なのに結婚できなかった。


 本貫ごとに、長男の長男のまた長男といった何百年も続く長男家系を「宗家(ジョンガ)」と呼ぶ。宗家の人たちはその家の伝統と歴史を守るのが義務というか仕事になる。最近は全国各地の宗家の法事料理がテレビで紹介されたり、本が出版されたりしているほど脚光を浴びている。「どこどこの宗家のお醤油がおいしい」、「どこどこの宗家は秘伝のレシピで作るキムチがすごい」と評判になり商品化されることもある。



長男の嫁は韓国でもたいへん!



 宗家の嫁である宗婦(ジョンブ)は、家を守って次の代にバトンタッチする重い責任を果たさなければならない。このため、結婚する男性が宗家だったりすると新婦の家が猛反対することも珍しくない。


 宗婦には、「男の子を生まなければならない」という暗黙の圧力も続いている。宗家を途絶えさせてはならないからだ。男の子が生まれるまで子供を生み続けるため、1男7女、1男8女なんていう家も珍しくない。70年代には「息子と娘を区別せず、2人だけ生んで育てよう」、80年代には「よく育った1人娘。息子10人もうらやましくない」という政府の標語まであったほどだ。


 90年代になっても、こうした風潮は続いている。成功できるよう家族全員が一人息子に尽くす家庭で、親にも差別され苦労ばかりする娘たちが、めげることなく自分の道を探す、というテレビドラマが放映された。「まるで私の話しだわ~」と年配の主婦に支持され高視聴率を獲得した。


 少子化によって、韓国の家族はますます男児を望むようになった。産み分けに取り組む夫婦も珍しくない。このため韓国では、胎児の性別を両親に教えることが禁止されている。男児を望む傾向はさらにエスカレートし、「遠征出産」が問題になったこともある。男の子を身ごもったら、韓国男性の義務である徴兵を逃れるため、アメリカで産みアメリカ国籍を取得させてあげよう、という取り組みだ。




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By 趙 章恩

2010年9月15日


-Original column
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20100914/216222/

セミナー (日経エレクトロニクス ) : デジタルヘルスの未来 – 趙 章恩 氏

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http://techon.nikkeibp.co.jp/article/SEMINAR/20100806/184879/


日経エレクトロニクス

デジタルヘルスの未来
~暮らしが変わる,インフラが生まれる,技術が活きる






10年後の医療/ヘルスケアの姿を想像できますか?


それは,今とガラリと変わったものになっているでしょう。社会のカタチやインフラの変革にもつながる極めて大きな変化が,今まさに起ころうとしているのです。その中心となるのが,エレクトロニクス技術です。足もとでは,電子機器を積極活用したデジタルヘルス・サービスも,実ビジネスとしてにわかに動きだしました。


本セミナーでは,我々の暮らしを変え,社会インフラとして日常生活に溶け込んでいく医療/ヘルスケアの将来像を,各分野の第一人者が明確に提示します。その将来像からは,エレクトロニクス技術が活躍している姿が必ずや想像できるはずです。デジタルヘルスは新産業になり得るのか。本セミナーを通して見極めていただければ幸いです。



概要



  • 日時:2010年9月29日(水) 10:00~17:00 (開場9:30)予定
  • 会場:Learning Square新橋(東京都港区)
  • 主催:日経エレクトロニクス

受講料 (税込み)



  • 一般価格:22,000円
  • 日経エレクトロニクス(NE)読者価格:18,000円
  • 日経エレクトロニクスPremium読者価格:11,000円



◇一般価格には「日経エレクトロニクス(半年13冊)」の購読が含まれます。 ご送本開始はセミナー開催後になります。
◇日経エレクトロニクス,日経エレクトロニクスPremium定期購読者の皆様は,それぞれの読者価格でお申し込みいただけます。

日経エレクトロニクスPremium読者の方は,
・読者価格からの割引優待,または無料(年1回限定)で受講できます。専用ハガキでお申し込みください。
・「割引優待,無料」をご利用済みの場合は,日経エレクトロニクスPremium読者価格で受講いただけます。


※ 受講料には,昼食は含まれておりません。
※ 満席になり次第,申込受付を締め切らせていただきますので,お早めにお申し込みください。


プログラム詳細






































10:00~10:05


主催者あいさつ

日経エレクトロニクス発行人 浅見 直樹


10:05~11:00



【基調講演】
10年後の医療と社会インフラ



康誠会 東員病院・認知症疾患医療センター
院長(日本遠隔医療学会 元理事長)
村瀬 澄夫 氏


医療は今,大きな変革期を迎えている。医療は今後,社会インフラとして日常生活に溶け込むようになり,我々にとって極めて身近なものになる。果たして,10年後の医療とはどのようなものなのか。電子技術の動向にも詳しい東員病院 院長の村瀬氏が,“ケータイ化”する医療の将来を展望する。


11:00~11:55



【基調講演】
2030年の暮らしと医療・ヘルスケア



経済産業省
産業技術環境局 研究開発課
加藤 二子 氏


将来の暮らしに,どのような形で医療・ヘルスケアが溶け込んでいるのか。そのビジョンを共有することで,技術的課題が明確になり,イノベーションも促進される。その指針となる「技術戦略マップ2010」の策定にも携わった経済産業省の加藤氏が,新産業の創造を促すビジョンを示す。


11:55~12:50



昼休憩


12:50~13:30



カプセル内視鏡の未来



ギブン・イメージング(イスラエルGiven Imaging社 日本法人)
取締役社長
河上 正三 氏


飲み込むだけ。苦痛もない。これまで見えなかった場所を観察できる。そんな「夢の機器」,カプセル内視鏡を実現した立役者は,電子技術にほかならない。カプセル内視鏡の先駆者で最大手企業であるイスラエルGiven Imaging社が,今後まだまだ進化を続けるカプセル内視鏡の未来を語る。


13:30~14:10



半導体テクノロジーから見た,医療向けローパワーアプリケーションのトレンド
Future trends of Medical application towards low power ˜ A semiconductor perspective



Texas Instruments
Manager, Medical Business Unit
Rick Jordanger 氏


ヘルスケア製品をはじめ,医療機器は小型化,低消費電力化を実現し,ウェアラブル,さらにはインプラント可能なものへと進化しつつある。このようなトレンドに対し,半導体の見地から将来の医療に向けた最新の半導体テクノロジーの紹介を行う。
Medical and Healthcare market is shifting more small size, more low power, more easy to use for wearable or point of care application. TI’s low power technology will lead it’s requirement and improve the quality of life for everyone.


14:10~14:20



休 憩


14:20~15:00



韓国のスマートヘルスケアの現状と今後



ITジャーナリスト
趙 章恩 氏


韓国では,携帯電話機/スマートフォンなどを利用した医療の取り組みが進んでいる。例えば,LG Electronics社は病院と連携し,携帯電話機を利用して血糖値を測定し,糖尿病ケアを実現するシステムを展開している。こうした「スマートヘルスケア」の現状と今後の計画を,ITジャーナリストの趙氏が示す。


15:00~15:40



GE社のヘルスケア戦略(仮)



GEヘルスケア・ジャパン
ヘルスケアIT本部 ITマーケティング部 部長
江澤 道広 氏


15:40~15:50



休 憩


15:50~17:00



【パネル・ディスカッション】
デジタルヘルス–市場創出のカギは?



<モデレーター>
慶應義塾大学 総合政策学部 准教授
秋山 美紀 氏



<パネリスト>
経済産業省 産業技術環境局 研究開発課
加藤 二子 氏

ギブン・イメージング 取締役社長
河上 正三 氏

ITジャーナリスト
趙 章恩 氏

東京大学 工学系研究科 精密機械工学専攻 特任助教
梅田 智広 氏


デジタルヘルスは新たな産業としてどのような可能性を持っているのか。その課題はどこにあるのか。新市場創出のカギを,各分野の第一人者が議論する。



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[日本と韓国の交差点] ミョンジョル症候群、今年の秋夕は大丈夫かな?

民主主義が広まった儒教の国の今の姿

もうすぐ90歳になる祖母が「こんなに暑い夏は生まれて初めてだ」と言った。例年のソウルは湿気がなく日陰に入れば涼しかったのに、今年の夏は燃えているかのようだった。夜な夜な風を求めて集まる家族連れで、漢江沿いにある公園は大賑わい。芝生の上に蚊よけのテントを張り、ノートパソコンを持ち込んで映画を見たり、携帯電話でテレビをみたり。私もその一人だった。

 夏休みが終わり涼しい風が吹き始めると秋夕(チュソク、韓国のお盆)がやってくる。漢字にできない純粋な韓国語ではハンガウィという。収穫した新しいお米と野菜、果物などが出回る時期である。しかし今年の韓国は猛暑に次いで台風が訪れているので、野菜も果物も値段が暴騰した! ねぎ1束が8000ウォン(約600円)と、信じられない値段がついていた。


ミョンジョルが近づいてきた


 お正月とお盆は「名節(ミョンジョル)」といい、先祖たちが春夏秋冬季節ごとに楽しんだ祝日のうち最も大事な2つである。お正月とお盆の前後2日を含め3日間連休になる。韓国はまだ振り替え休日がないので、お正月やお盆が日曜だったりするとがっかりだ。落ち込まずにはいられない。以前は「国軍の日」と「ハングルの日」も公休日だったのに、「休日が多すぎる」という理由で平日になってしまった。このため、連休と言えばお正月とお盆ぐらいしかない。


 「連休だから海外旅行でも」なんていうのは独身貴族か親戚に嘘ついてこっそり抜け出した人ぐらい。教会に行くキリスト教徒のように宗教的な信念から法事をしない家庭も増えているが、それでもまだ韓国のミョンジョルは餅代としていくらかのボーナスが支給され、故郷に帰るため民族大移動が始まる時期である。ちなみに韓国では、教会に行くのは「キリスト教」。「カトリック教徒」は聖堂に通う。


 子供のころのミョンジョルは、何十人もの親戚が集まって、おいしいものを食べて、わいわい過ごした楽しい思い出しかない。だが、結婚すると風景が変わった。結婚した女性はミョンジョルの前の日から夫の家に行って茶禮(チャレ)の準備をしなくてはならない。茶禮はお正月やお盆の日の朝に行う先祖への挨拶のようなものである。


ミョンジョルの準備はたいへん


 ミョンジョルが近づくと物価が急騰するので、茶禮の準備にはお金もかかる。お正月と秋夕には子供に新しい服を買ってあげる。親戚やお世話になった人たちに手土産として健康食品や調味料セット、りんご1箱、韓菓(伝統菓子)などを送るのが習わしである。茶禮のテーブルに載せる今年収穫された新しい米も買わなくてはならない。茶禮のテーブルには、ほかにもこうしたご馳走を載せる――ナムル5種類ほど、白身魚やきのこ、かまぼこ、かぼちゃ、牛肉を四角に切って味付けしないで焼いたもの、鶏まるごと一羽、豚肉を蒸したもの、蒸したタコまるごと。




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By 趙 章恩

2010年9月8日


-Original column
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20100907/216135/