徴兵された彼氏を持つ彼女のためのネットビジネス [2007年7月11日]

軍事政権が長かったせいか、韓国で軍といえば閉鎖的で怖いところ、何が起こるかわからないところ、というイメージが強かった。だが、この頃の20代は軍文化を楽しいエンターテインメントに変えている。軍に入隊するとき彼女から贈られるプレゼントも昔は写真と手紙がせいぜいだったが、今のアルファーガール達は次元が違う。

 芸能人のコンサートにでも行くかのように「元気で戻ってきてね」と自分の写真入り大型プラカードを作って渡し、365個のカプセルの中にメッセージカードを入れたものや、手紙数十枚をつなげて布団のようにつなげたカードパッチワークは基本。毎週彼のいる部隊へかわいくラッピングしたチョコレートやビタミン、手作りクッキーといったおやつを届ける。彼氏へのプレゼントは目立たないと意味がないと考えているようだ。


 韓国では「ゴムシン(ゴムの靴:韓服を着るときに履く伝統靴)を逆さに履く」ということわざがある。これは靴を履く暇もなく急いで逃げていく姿を表現したもので、彼氏が軍に入るとすぐ別れを告げる彼女のことを言う。今でもネットでは彼氏が軍にいる彼女達を「ゴムシン」と呼ぶ。


 でも最近は男性の方が軍に入り人生を見つめなおしたいと別れを告げる方が多くなったそうだ。軍にいる彼氏が心変わりするのではないかとはらはらする女の子達が増えているせいだろうか、ポータルサイトで「軍人プレゼント」、「軍隊贈り物」で検索すると「ゴムシン御用達」ショッピングモールがどばっと検索される。検索サイトにはカテゴリーまで別にあるほどだ。中でもゴムシン達に推薦するのはこの2サイト。


http://www.armymart.co.kr/
http://www.guninmall.com/


 人気商品をざっと見てみると、私には小学生のママゴト?としか思えないトリハダものがいっぱい!「私に会いたくなったら飲んでね」と書いてあるビタミンや、「愛情成績表」と書いてある賞状、身分証明書のようなサイズの純金カードで作られた「恋人証明書」もある。









軍にいる彼へ送る愛の薬セット

「ゴムシン御用達」ショッピングモールは商品販売だけでなく、オーダーメイドにも対応している。特に年に一度のバレンタインには思い出になる特別なラッピングの注文が殺到するそう。チョコレートを一つずつ紙の花びらの中に入れて花束を作ったり、イニシャル入りの刺繍タオルセットや彼氏の顔にそっくりのチョコもよくオーダーされたりするという。


 爆弾手紙といって一気に100通、200通もの手紙を送るのもはやっていて、手紙を代わりに書いてほしいというオーダーもあるとか。その理由は同じ部隊にいる他の軍人に負けないプレゼントをしてあげたいけど時間がない、というゴムシンも多いから。


 ネットコミュニティやCyworldのHompy(SNSサイト)では軍人の彼に何をプレゼントしたらいいのか悩むゴムシン達の共同購入も活発に行われている。ラッピング素材やかわいい模様の便箋に色とりどりのペン、高級輸入菓子などだ。


 24時間彼氏のことを思うためか、はたまた私には軍人の彼がいるのよ、というさりげないアピールのためか、着うたやメロディーコールも軍歌に設定するゴムシン達もいる。でもそのような熱烈なプレゼント攻撃も1年が境目という。


 面会のための交通費に加え、プレゼントに費用がかかりすぎて、「私、何でここまで貢いでるんだろう」と突然目が覚め、既に除隊した年上や社会人の彼氏と付き合い始めることもあるんだそう。


 数十万人に及ぶといわれるゴムシン達の平均年齢は21歳、彼女達の恋の悩みを刺激しお小遣いを狙うネットビジネスはますます増えるばかりだ。

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/NPC/20070709/276839/