Yahoo!KoreaがNo1から忘れられたサイトになるまで [2007年10月3日]

韓国初のインターネット検索ポータルサイトとして1997年9月オープンしたYahoo! Koreaがサイト開設から10周年を迎えた。アメリカの進んだ検索サービスを韓国に展開し、訪問者数も圧倒的1位を誇り、人気絶頂のYahoo! Koreaは、1999年には韓国で初めて1日当たり2000万PVを突破。韓国では初となる無料メールサービスや子供向けポータル「Yahooクロギ」を提供した。2003年に開始したYahoo! Blogも韓国初のブログだった。競合ポータルは「Yahoo! で探せなかったらEMPAL」、「外国産Yahoo! をやっつけるDAUM」といった感じで打倒Yahoo! Koreaを前面に打ち出していた。ブラウザーの初期画面は当然ながらYahoo! Koreaだった。

 ところがYahoo! Koreaは、この10年で利用者が激減し、忘れられたポータルとまで言われるほどに落ちぶれてしまった。下り坂となった境目は2001年。訪問者数でみると2001年にDAUMに追い越され、2002年にはNAVERに追い越され、2004年にはCyworldに、2005年にはNATEに越された。1日平均訪問者数も2002年557万人だったのが2004年には362万人、2007年8月には243万人と、全盛期の3分の1以下に減ってしまうほどの凋落ぶり。


 日本でポータルと言えば未だにYahoo! Japanを超えられるサイトはないが、どうして韓国ではパっとしないのか。Yahoo! Koreaは米Yahoo! が管理している。このため、新しいサービスが追加されるのがどうしても遅くなってしまうのが最も大きな弱点だった。毎日のように目まぐるしく変わる韓国のネットトレンドに追いつけなかったのだ。


 無料メールと検索がすべてだった90年代は、韓国でもYahoo! Koreaに勝てるサイトは存在しなかった。しかし、1999年にDAUMとNAVERが登場してから、ポータルの役割は広がり、ニュース、音楽、ゲーム、同好会、ブログ、ブログの発展系のHOMPY、SNS、動画検索、知識検索など、新しいサービスが毎日のように追加された。


 DAUMは誰でも簡単に作れる同好会と大容量のWebメールで1位になったが、その後NAVERがオンラインゲームとブログ、動画検索、知識検索、知識ショッピングなどどんどん新しいコンテンツと検索を開発して不動のナンバー1の地位に上り詰めた。韓国では、ブラウザーの初期画面の74%がNAVERになっていると言われている。


 Yahoo! Koreaは何をするにも米国本社の許可が必要だったため、競合サイトに負けない新サービスが追加されたころには、もうすっかりブームは終わっていたということを何度も経験してきた。米国本社のサービスを韓国にいち早く導入したのはいいが、動画投稿にしてもモバイル検索にしても、時代を先走りすぎてユーザーが追いつけず、後からほかのポータルが真似たサービスを打ち出してヒットさせる、というもったいないこともよくあった。検索結果もNAVERやGoogleに比べるとパっとしないYahoo! Koreaを利用する人は当然のように減るばかり。


 しかし今では本社とのコミュニケーション方法が変わり、韓国法人が80%ほど決定権を持つようになった。今、Yahoo! Koreaでそこそこ人気があるのはユーザー投稿型の地域情報。ミスコンのように女子大生をキャンペーンガール(Yahooガールズ)に選び、TV番組とタイアップしたり、Yahooガールズがお薦めするスポットやショップなどをまとめた単行本を出したりしている。検索とYahoo! Koreaだけの口コミ情報が上手く噛み合い、NAVERよりも優れたコンテンツとして認められている。このサービスは韓国法人のアイデアで2004年に導入された。その後、ドイツやイギリスでも導入されて、人気のコーナーになったという。


 これをきっかけにYahoo! Koreaは、ネット大国で、変化の激しい韓国をテスト市場にしては、最先端ネットサービスの動向とアイデアを全世界のYahoo! に向けて発信する役割もしている。代表的なのがYahoo! Answersだ。韓国で2001年からブームになったNAVERの知識検索を応用したサービスで、Yahoo! Koreaが提案し、全世界のYahoo! でサービスが提供されるようになった。


 Yahoo! Koreaは韓国の今を築き上げた張本人でもある。ポータルやインターネットサービスも立派な産業であるということを認識させ、DAUMやNAVERをはじめとするオンラインゲームサイトがどんどん成長できる環境を作った。NAVERの役員らも「インターネット業界に人材とお金が集まるようになったのはYahoo! Koreaが早期からがんばってくれたお陰」と感謝していた。それを証明するかのように、韓国のIT業界にはYahoo! Korea出身のCEOが実に多い。ITマーケティング関係者の間ではYahoo! にいるとスカウトの依頼がよく来るので「中途採用でYahoo! Koreaに入社すると必ず出世する」という伝説があるほど。最大のライバルとも言えるNAVERのチェ・フィヨンCEOは、Yahoo! Koreaのオンラインニュースサービスの企画担当者だった人。オンラインゲーム市場で勢力を拡大しているCJインターネットのCEOもYahoo! Koreaの役員だった。Yahoo! Koreaの元社長らも、三星電子の専務や財閥グループの副社長にスカウトされている。サイトの人気は落ちてもYahoo! Korea出身人材に対する人気は落ちていない。


 Yahoo! Koreaは10年前の初心に戻り、ブラウザーの初期画面にしたくなるポータルにもう一度なることを目指すと宣言した。これからも韓国インターネット産業の先輩として、もう一花咲かせてほしいものだ。

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
 2007年10月3日 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/NPC/20071003/283689/