きれいな引き際、韓国のビル・ゲイツ

6月27日、マイクロソフトのビル・ゲイツ氏引退ニュースは韓国でも大変な話題となった。財閥経営を守るため、あの手この手で法律の抜け道を探し、長男に経営権を渡そうとしていたことで、サムスングループ李会長の裁判が行われようとしていた時期だけに、ビル・ゲイツ氏の引退を「美しい引退」と韓国のマスコミは褒めちぎった。

 ビル・ゲイツ氏もサムスンの李会長も自分の会社を世界ナンバーワンに押し上げた実力の持ち主である。それが一人は惜しまれながらも自分の意思で引退し、一人は脱税疑惑から世論のせいで仕方なく経営から身を引くことになってしまった。


 しかもゲイツ氏は飢餓とエイズ退治のため、ビル&メリンダ・ゲイツ財団を通じて多額の寄付活動をしてきた。「飢餓や死に比べれば、誰がどんなOSを使うのかなんてどうでもいい問題だ」と発言したこともあるほど、寄付に熱心で、世界一のお金持ちになれて嬉しいのはたくさん寄付ができるからだという発言通りの活躍をしてきた。引退後も世の中をより豊かにするための活動に専念したいとしている。


 オーナー一族の豪華な生活ぶりは世界のどこの金持ちにも負けないけど、寄付や社会貢献のようなことにはせこい韓国財閥にとって、ビル・ゲイツ氏の寄付活動は耳が痛い話かもしれない。ゲイツ氏のように53歳で引退だなんて、韓国の財閥にはありえない話だ。もう体が動かないという歳になるまで残っているのが普通だ。オーナーが経営権を握りカリスマを発揮していた方が、組織管理も会社の経営も上手くいくと考えられているのかもしれない。


 韓国ではゲイツ氏の独特な習慣についても大きく報じられていて、一日18時間以上働き時間を無駄にするのが大嫌い、気に入らない発言をした人に対してはそれが重役であろうと徹底的に反撃して罵ったり、会議中に怒りを抑えきれずドアを蹴飛ばして出て行ったとか、毎年必ず別荘に閉じこもり一人になる「Think Week」を持つとか、競合相手を徹底的に踏み潰す戦略でここまで来たとか、天才らしいというかオーナーらしいというか、お人好しではなさそうだといったことも書かれていた。

ワーカーホリックでもあるゲイツ氏が53歳で経営から引退、というか30年間金を稼ぐことばかり気を使っていたので、これからは金をどうやって使うかということに専念する第二の人生を歩み始めるということだ。ビル&メリンダ・ゲイツ財団の資産規模は261億ドルにも達する。


 アメリカの大富豪であるウォーレン・バフェット氏もゲイツの財団に300億ドル相当の寄付をすると発表した。「ビル・ゲイツの素晴らしい実力なら世界の飢餓と福祉問題を解決できるだろう。人類の福祉のためにもっとも効率的に富を活用できる人」というのが寄付のきっかけだそうだ。ビル・ゲイツも経営能力を生かして福祉分野で貢献したいという気持ちなのだろう。でも寄付活動は独占、寡占しないでみんなで仲良くしてほしいものだ。


 ゲイツ氏に似たようなCEOの事例を韓国で探すのは難しいが、一人だけあげるとすれば、アン・チョルス氏だ。医学博士からパソコンの病気を予防する医者になりたいと、ウイルス退治プログラムを作るベンチャーを立ち上げ、今では日本にも支社があるアンラボの元CEOだ。2008年で開発20周年を迎えるV3というアンチウイルスソフトは、韓国人なら誰もが知っているソフトでもある。


 40代でCEOを引退してアンラボ議事会(日本企業の取締役会に当たる)の議長になることで経営から一歩身を引き、アメリカに3年ほど留学してMBAを取得、今では韓国中の秀才が集まるというKAIST(Korea Advanced Institute of Science and Technology)の教授になった。経営のことをもっと勉強して迷える新米ベンチャー社長を助けてあげたい、そのために勉強をしなおして教授になったというから、これも社会貢献の一つだろう。大統領諮問委員にもなり、ITベンチャー復興のための講演会やイベントン積極的に顔を出している。最も尊敬するCEOとしていまだに名前が登場するほど、韓国では有名な人物である。


アン・チョルス元CEOをインタビューした時の印象は、当時から社長というより教授という感じで、声も静かで穏やかな人だった。韓国のベンチャー社長といえば、ほとんどが声もでかくて何かとそわそわ忙しく、話を膨らませる傾向が強く、インタビュー中もしょっちゅう電話だとか、来客だとかで落ち着きのない印象があったのだが、アン・チョルス氏の場合は、隣に座った広報担当が社長の代わりにぺらぺらと話し、当の社長はニコニコ微笑んでいるだけという、なんとも韓国の社長らしくないところがあった。CEOになって金持ちになるのが最終目的ではなく、やりたいことがまだまだいっぱいあるからあっさり経営から手が引けたのかもしれない。


 韓国はまだ発展途上中だから貧欲でいいのだと話す人もいるが、会社の金を自分のお小遣いと勘違いするCEOがいなくならない限り、これ以上の発展は難しいのではないだろうか。韓国ではある有名ベンチャーの社長が自分の彼女を非常勤取締役にして、あいた口がふさがらないほど巨額の報酬を与え、その後結婚したというニュースから、株主が一騒動起こしたことがある。


 会社の経営は傾くばかりなのに、会社の金と役員という地位で女性を口説き、設立者で大株主というだけでCEOの座に居座っているなんてどういうことだという話だった。このCEO、持ち株を売れば一生食べていける以上の大金を手に入れられる。経営に関心がないならさっさと引退して、夫婦で楽しくお金を使えばよかったのだ。引退してほしい人ほどしぶとく生き残る。

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2008年7月9日 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20080709/1005852/




 

Windows XP販売終了でまたもや国を挙げて大さわぎ

2008年6月30日でWinsowsXPの販売が終わるというニュースは韓国にとって「え、また!」というぐらい動揺を抑えきれないニュースとなった。Windows 98のパッチ提供終了のせいで電子政府システムを利用できなくなったり、Vistaの登場でオンラインバンキングやまたまた電子政府システムを利用できなくなって大騒ぎしたのが1年ほど前だった。その時からMS依存度が高すぎる、なんとかオープンソースに切り替えようと話は持ち上がるものの、いまだに政府や企業の重要なシステムはWindowsとIEを基準に製作されている。

 日本もそうだが、韓国もセキュリティや専門性の問題から社内専用ソフトを利用する企業が多い。しかしVista環境ではそもそもそれらの専用ソフトが動かないとか、パソコンのシステム要求仕様が高すぎるため、使用中のパソコンにインストールすると動作が遅すぎて仕事にならないといった問題があることから、今でもXPを使っているところは多い。


 最も問題なのは行政機関がMSに依存しすぎていることだ。韓国政府は電子政府システムを始め、316の地方自治体の2145システムを対象にVistaとの互換性を点検している。「尻に火が付いた」状態だ。


 しかも、政府の公共調達のパソコン規格は2008年9月までXPになっている。7月から3カ月間、調達に参加しているパソコンメーカーはMSのせいで、規格を満たせないために発生する罰金を払いながらVista搭載パソコンを納品するしかない。組み立てパソコンは2009年1月までXPを搭載できるが、MSと直接契約してOEMでWindowsを搭載している大手パソコンメーカーは7月からVistaを搭載せねばならず、調達規格を満たせないことになってしまうからだ。MSは相手がどんな反応をしようが結局はMSの言いなりになるしかないと、市場支配力を悪用している面もある。

さらに、XP販売中止を知らない人が多すぎる。販売中止になってもサポートはしてくれるので、なんとかなるだろうという心境だ。新聞やネットで告知されてはいるものの、韓国の秋葉原といわれる龍山のパソコン販売店では7月に入ってからもVistaが搭載されたパソコンをXPにダウングレードしてほしいと要求する顧客がほとんどだという。


 韓国PCバン(PCバンとは韓国のインターネットカフェ)経営研究所の調査によると、2008年4月に全国PCバンで使用されているパソコン7455台をサンプルに調べた結果、Vistaを搭載したパソコンはなんと、たった1台もなかったという。Windows XP HomeとXP Professionalが98%を占めていた。海外でも事情は似ていて、2007年12月米フォレストリサーチが5000企業を対象に行った調査でも、XPが89%、Vistaは6.3%しかなかった。


 パソコンメーカーの担当者らはMSに不満が多い。「今までWindows 98、XPと新しいOSが登場するとパソコンがドカンと売れた。しかしVistaは違う。新しいパソコンを買った人もXPにダウングレードしたり、大口の法人顧客からはVistaのせいで社内ソフトが作動しない、どうしたらいいんだと苦情ばかり。パソコンを売るどころかVista苦情係になってしまって困っている」とあるメーカーの担当者は言っている。


 ひどいケースでは、Vistaのせいでソフトが動かないのを全てパソコンの問題にして製品の交換や修理を要求するという。対策として、韓国のパソコンメーカーと販売店ではXPへダウングレードできるようにしてきた。ところがWindows XPは販売終了してしまうとなると、ダウングレードサービスも早晩中止せざるを得ない。この頃パソコンが売れないのはVistaのせいだと怒り出す人までいた。OSを開発するMSとパソコンメーカーは仲良くするしかない。これまで、新しいOSが発売されるたび、それを盛り上げてきたのはパソコンメーカーと量販店だった。しかしVistaは誰にもかまってもらえない状況が続いている。


 パソコンメーカーはこれを機に、販売時に搭載するOSは決めず、Windowsでもリナックスでもユーザーが好きなOSを搭載できるようにしようとしている。今までフリーOSは違法コピーを量産するとして、Windowsを搭載してきたが、もうMSの尻拭いはしたくないというのが本音だ。


追い打ちをかけたのが、超低価格パソコン(Ultra-Low-Cost Personal Computer、略称ULCPC)向けに2010年6月30日まではWindows XP Home Editonの販売を続けるという話だ。


 これの方針転換について、韓国では「6月30日でXP販売を終了しておきながら、中国では2010年6月まで延長して通常版XP(Windows XP Home Edition)を供給することにした」と受け止められている。ここで指す「低価格パソコン」の定義が曖昧だからだ(編集部注:米マイクロソフトでは「小さい液晶」「スペックが低いCPU」「モバイル用途」をULCPCの例に挙げているが明確な定義はしていない)。ユーザーはXPをもっと使いたいのに企業が勝手に販売を中止するのは、韓国がMSに依存しすぎていてなめられているからだと憤慨している。


 2008年1月、韓国MSはVista発売から1年間で300万ライセンスを販売したと発表した。しかしその期間の韓国内パソコン販売台数は約450万台、3台に1台はXPのまま販売されている。またVista搭載パソコンを購入してXPにダウングレードした人の数は入れていないので、実際に300万台のパソコンでVistaが動いているわけではない。MSはVistaの次なるOSとしてWindows 7を発売するという。2010年にもまた騒動が起こるだろう。

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2008年7月16日 

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20080716/1006084/

韓国ではFirefox 3が使い物にならない理由

世界で約20%のシェアを占め、マイクロソフトのIEを脅かしているWebブラウザー「Mozilla Firefox 3」。2008年7月2日には「Firefox 3」がリリース後、24時間で800万2530件がダウンロードされ、ギネスブックに世界記録として正式に認定されたほど注目を浴びている。しかし、インターネットの普及率や生活の中に占める重要度では世界一ともいえるインターネット大国の韓国ではIEが99%でFirefox 3は 1%未満とまでいわれるほど全く普及しないでいる。

 2008年7月6日時点での「Firefox 3」のダウンロード件数を比べた資料があったが、アメリカ773万件、ドイツ246万件、日本134万件、イギリス120万件、中国72万件、インド42万件、ベトナム20万件、フィリピン19万件、マレーシア16万件と続く中、韓国は14万8千件に過ぎなかった。(海外のWEBサイトにアクセスできない北朝鮮は当然のことながら0だった)。


 Firefox 3を使っていないからインターネット先進国ではない、ということにはならないが、世界的な傾向やITインフラから考えると、どうして韓国ではこんなにFirefox 3が使われないのか疑問を持たずにはいられない。


 しかし、その理由はとても単純、IEでないとWebサイトが表示されないからだ。韓国の電子政府、政府・行政サイト、インターネットバンキングをはじめほとんどのWebサイトがIE環境で動くように制作されているため、IEでは普通に見られるサイトがFirefox 3からアクセスすると「ページを表示できません」というエラーが登場するのだ。

もっと問題なのはActiveX。韓国では簡単で便利であるという理由からセキュリティプログラムや音楽再生・動画再生ツール、ファイル添付ツールなど何でもかんでもActiveXでインストールさせるようにしてある。インターネットバンキングや音楽、動画サイトなんてActiveXをインストールしないと何にも表示されず利用できない。


 マイクロソフトさえもセキュリティの問題からActiveXを縮小しようとしているのに、韓国では依然とWebの標準技術でもなく、マイクロソフトの技術であるActiveXに固執している。Firefox 3はActiveXを表示させないので韓国では利用できるサイトに限界がある。つまり韓国はWeb標準を守らずマイクロソフトに依存したWebサイトを作ってきたためにIE以外ではWebサイトを表示できなくなってしまった。


 この問題は既に何年も前から指摘されている。しかし韓国政府は電子政府や行政のサイトをWeb標準で作り直して、ユーザーが好きなブラウザーで利用できるようにすることよりも、マイクロソフトにこれからもActiveXを問題なく表示させることをお願いしている。恥ずかしいことだ。


 韓国でも「行政機関のサイトは国民の税金で作られたサイトなのにIEでしか利用できないなんて話にならない。国民は誰もが使いたいブラウザーで公共の財産を利用できる権利がある」と抗議している。


 大学教授を中心としたWeb標準化を要求する市民団体「オープンWEB」は、IEにしか対応していない行政サイトを制作したのは公正取引違反に当たるとして訴訟を起こしている。しかし、韓国の公正取引委員会はIEにだけ、適しているWebサイトを運営しているからといって消費者の選択権を制限する行為が消費者の利益阻害につながることではないとして、公正取引違反を認めなかった。


 日本でもまだメジャーではないFirefox 3だが、いろいろなサイトがFirefox 3からも利用できるようにWebページを制作している。Firefox 3をどれぐらい使っているかよりも、ブラウザーに関係なく利用できるサイトがどれぐらいあるのか、WEBサイトはブラウザーに関係なく利用できて当たり前と思うこと自体がインターネット先進国らしい考え方なのではないだろうか。

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2008年7月24日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20080724/1006299/

ニュースは誰のもの?韓国ポータル大手と3大新聞の戦い


 韓国ポータルサイトDAUMと3大新聞である朝鮮日報、中央日報、東亜日報との対立がDAUMへのニュース提供中断という事態にまで及んだ。朝鮮、中央、東亜の3紙は2008年7月7日よりDAUMへの新聞記事と自社の週刊誌、女性ファッション誌のニュース配信をストップした。

 今回の3紙の決定は、米国産牛肉の輸入再開を巡って一般読者がDAUMのコミュニティーサイトやニュースのコメント欄に書き込んだ3紙に対する誹謗中傷をDAUMが放置したことへの報復措置といえる。DAUMには、「公正な報道をしない朝鮮日報、中央日報、東亜日報の購読を中止するべきだ」「この3紙に広告を出している企業の商品を買ってはいけない」などと3紙を攻撃するコメントがあふれていた。

■不買運動の影響で広告出稿が大幅減


 朝鮮日報は「DAUMが一部新聞社とその新聞に広告を出している企業に対して営業妨害等不法行為空間を提供し、根拠のない誹謗と悪口で朝鮮日報の名誉を毀損する行為を持続的に放置したことに対する処置」と説明する。中央日報も「DAUMは放送通信委員会が違法と判定したオンライン広告主不買運動を放置し、不法を黙認した」ことを、ニュース提供中断の理由に挙げている。


 DAUMは韓国ポータルのなかでは唯一、ブロガーニュースを既存マスコミのニュースと同じ重みで掲載している(前回のコラム参照)。ブロガー達は韓国の3大新聞が米牛肉輸入問題を公正に報道せず政府の言いなりになっていると批判する記事を何本も書いた。DAUMはこれを抗議デモのろうそく集会や牛肉問題の他のニュースと並べて掲載した。







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<朝鮮日報、中央日報、東亜日報のニュース供給中断を知らせるDAUMの告知文>


 これが意図したことかどうかはともかく、ろうそく集会の焦点は次第に牛肉問題から現政権批判に移り、さらに3大新聞の購読中止の呼びかけ、3紙に広告を出している企業の商品不買運動へと広がっていった。記者協会によると、広告主不買運動の影響で3紙の新規広告出稿は大幅に減少し、なかには60~70%も減ったという説もある。3紙への広告掲載を見合わせた食品メーカーは株価が上昇し、DAUMコミュニティーを中心にそのメーカーの商品をオンラインで共同購入する運動まで起きている。3紙にとって広告主不買運動の発生源であるDAUMを容認できない段階まで事態が深刻化したのである。


■主婦コミュニティーが運動をリード







 保守的といわれる3大新聞と市民運動団体との論争は過去にも何度もあったが、今回は普通の主婦やサラリーマンの行動が目立つ。不買運動は料理コミュニティー、主婦コミュニティーでも活発に行われていて、会員らは毎日「今日はどこどこに電話をかけた。相手の反応はどうだった」といったことを書き込んでいる。


 企業側は、主な消費者である主婦達に目を付けられ不買運動のターゲットになっては経営が危うくなる。一部の中小企業は自社のホームページに「広告を掲載したことをお詫びします」「これからは広告を出しません」といった謝罪文を掲載し、事態が収まるのを待っている。


 一方、ある企業は「広告を中止せよという抗議電話が毎日数百件もかかってきて営業を妨害された」として、ネットユーザーを告訴した。検察は3紙への広告掲載に抗議する電話を企業にかけたり、広告主の電話番号リストをコミュニティーサイトに掲載して抗議電話をかけるよう仕向けたとされるネットユーザーに対する取り調べを始める予定で、既に身元が判明した20人に対しては出国禁止令を出している。


 放送通信員会の審議会では、不満を単純に書き込んだ掲示物は表現の自由に当たるが、広告主の電話番号リストと電話をして何を話せばいいのかまで具体的に提示している掲示物は消費者運動の範囲を超えた違法行為であると解釈している。しかしネットユーザーらはDAUMへの書き込みが違法と判断され削除されるようになると、匿名が保たれ放送通信委員会の手が届かないGoogleに場所を移して不買運動を続けている。

■著作権侵害やリンクにも神経とがらす新聞社







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<DAUMのウェブサイト>


 大手ポータルと3大新聞の戦いはさらに拡大する気配だが、一方で今回のできごとはインターネットにおけるニュースの扱い方を巡る論議も巻き起こしている。


 3紙は今回、ポータルサイト対策として記事の不正コピーによる著作権侵害も問題視している。いうまでもなく、ポータルに掲載されたニュース記事をブログやコミュニティーサイトに全文転載すれば著作権の侵害に当たる。しかしポータルサイトではクリックするだけで新聞の記事はもちろん新聞に掲載された写真までも自分のブログに掲載し、誰でも見られるようにする機能を提供している。新聞社側はこれまで、個人が非商業目的で記事をコピーする場合は放置してきたが、姿勢を転換した。


 新聞社側はポータルサイトのニュース編成やリンクによる誘導にも神経をとがらせ始めた。今回、3紙はDAUMが牛肉問題を批判するブロガーニュースと政権批判コミュニティーや購読中止コミュニティーのアドレスをリンクさせ、記事を読んだユーザーをコミュニティーへ誘導するよう仕向けたのではないかとも批判している。


 牛肉問題に関してさまざまな記事が登場するなか、DAUMは特に警察がろうそく集会参加者を暴行している写真などをメイン画面に表示して強調した。さらに、機動隊の鎮圧によって女子高生が失明したといったデマまでも本当のニュースかのように編集し、これがデモ拡大の一因になったともいわれている。ニュースを生産するマスコミではなく、リンクと検索を提供するはずのポータルが記事の並べ方や編成の力で世論を動かし、クリック率を高めて広告収入を増やす--これがマスコミ側の主な批判内容である。


■3紙が抜けても影響はほとんどなし







 では3大新聞のニュースが提供されないことでDAUMはどれほどの打撃を受けるのだろうか。


 インターネットトラフィック測定サイトのコリアンクリックの調査では、2008年5月末時点でのDAUMのトラフィックに占める朝鮮・中央・東亜日報の記事閲覧の割合は1.7%、ページビューでは0.4%にとどまるという。DAUMは全国70社ほどの新聞社と週刊誌、放送局からニュースの提供を受けているので、3紙が抜けてもニュースサービスに穴が開くわけではない。


 ネットユーザー側から見ても、クリックするのは新聞社の名前ではなく見出しなので、ニュース提供が中断されても今のところあまり支障はないようだ。現状では逆に、DAUMから3紙が消えたことを歓迎するコメントすらある。3紙は他の新聞社にもDAUMへのニュース提供中断を求めているというが、これがDAUMと3紙だけの問題で終わるのか、ポータル対新聞の問題になるのかはまだ予測できない状況だ。


 ニュースメディアとしてのインターネットの優位、新聞の地位低下は各種の調査でも明らかだ。韓国言論財団が国民5000人を対象にした「2008言論受容者意識調査」結果によると、媒体別信頼度は地上波テレビがもっとも高く、その次がインターネット、ラジオ、ケーブルテレビ、総合新聞という順だった。


 韓国広告主協会が15~70歳の2000人を対象にしたアンケート調査でも似たような結果が出ており、ニュースの利用はテレビ放送から見ることがもっとも多く、その次がインターネットだった。インターネットでは77%が新聞社のサイトではなくポータルサイトのメイン画面に登場するニュースだけを読んでいると答えた。


 新聞の1面よりポータルのメイン画面に登場するニュースの方が影響力を持ち、そのメイン画面に登場するニュースに優先順位をつけるのはポータルサイトのスタッフである。この調査結果からすると、ポータルサイト側もニュースの取り扱いに対し、重い責任を負わざるを得ないことになるだろう。

■最大手ポータルは編集権を放棄







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<NAVERのウェブサイト。中央にニュースの見出しが掲載されている>


 3大新聞とDAUMの攻防戦が始まる前の7月1日、韓国最大手ポータルサイトのNAVERは自社サイトのメイン画面に登場する「今日の主なニュース」を「オープンキャスト」方式に変えると発表した。メディアとしての中立を守るため、NAVERがニュースを選択して表示するのではなく、ユーザーまたはニュースを提供する新聞社が編集できるようにするという方式である。


 NAVERは150を超える媒体のニュースが毎日1万件以上更新されていて、1日1億ページビューを記録している。一方新聞社サイトは1日250~300件のニュースが更新され、1日500万ページビューもあれば多い方だ。大量の記事とその下につけられるユーザーのコメントに責任を求められることに対し、NAVERはメイン画面のニュース編集を放棄するという形で難を逃れようとしている。


 ポータルサイトはページビューや利用者数では立派なメディアである。しかし、クリック率を上げるためにニュースの見出しを勝手に変えたり恣意的に編成したりして、社会的責任は負わずに影響力だけを手にし、安く購入したニュースで何百倍もの広告収入を上げていると批判されてきた。NAVERはニュースを流通させる役割に満足し、編集権は一切持たないと発表することで、DAUMとは違うということを強調している。

 公正でない報道をすると批判される新聞と、ニュースを生産しないポータルでありながら巧みにニュースを編集することで世論を動かしていると批判されるポータルが繰り広げるニュースの権力争いは今後、どう展開していくのか。忘れてはならないのは、言論・報道のあり方やマスコミの影響力といったきれいごとの裏に、広告料配分やニュース使用料といったお金の問題でこじれた両者の関係があるという事実である。


 韓国の新聞はすべての記事と写真をリアルタイムでポータルに提供し、1997年以降の全記事をポータルから検索できるようにしている。その時点で、すでに権力はポータルに渡ってしまったのかもしれない。ユーザーは新聞社1社の記事だけでなく、すべての記事を見比べることができるポータルが断然利用しやすいからポータルでニュースを見るのだ。


 時代が変われば、ニュースの消費の仕方も変わる。こうしたユーザーの視点に立たない限り、こじれた問題はきっと解決しないだろう。


– 趙 章恩  

NIKKEI NET  
インターネット:連載・コラム  
2008/07/15  


貯金から融資まで。金融業界も大注目のサイバーマネーマーケティング

会員数1900万人、韓国では前例のないネットベンチャー成功神話として日常生活の一部になっているCyworld。日本では苦戦しているようだが、韓国では10~30代の中でCyworldに加入していない人を見つける方が大変なほど根付いている。このCyworldの中でBGMやアバタ、背景画面などを購入する際に使われるサイバーマネー「ドトリ」(どんぐり)。1個100ウォンで一日平均2億5千万個売れているそうだ。すごすぎる!

利用額に応じて電子マネーを発行するクレジットカードも登場


 CyworldでかっこよくSNSサイトを作るためには最低50~100個のドトリが必要だ。これぐらい投資しないと、下着のままがらんとした部屋で私を待っているミニミー(アバタ)がかわいそうでたまらなくなってしまうのだ。またドトリはCyworld内のショッピングモールでも使えるし、映画や海外ドラマVOD、電子ブック、オンライン音楽などのデジタルコンテンツ購入にも使える。ドトリを寄付して東南アジアの貧しい国に学校を建てたり、養護施設を援助したりもできる。


 ドトリはB2Bモデルも成功している。特定商品や映画、ドラマなどの宣伝用Cyworldにアクセスしてイルチョン(一寸、親と子の関係、 Cyworldでは友達より濃いネット上で縁組みした仲という意味で使われる)になるとドトリがもらえるイベントがよく開催されている。企業は顧客を集められるので満足、顧客はドトリがもらえるので満足、というわけだ。そのため韓国でサイバーマネーといえばドトリなしでは話にならない。


 リアルの札束にしか興味がないはずの金融業界も、このドトリに目をつけマーケティング競争を始めた。それぞれ銀行とまだあまり縁がない10代を早期に顧客として確保することに加えて、ネットでの口コミ効果を狙っている。


 大手クレジットカード会社であるLGカードと現代カードは「ドトリカード」を発行している。新規に加入するとカード発行記念としてドトリが100 個、毎月20個ずつもらえる。カードの利用額に応じて0.3~3%のマイレージの代わり、ドトリが貯まる。ドトリは自分のお金で買うのはもったいないけど、あればあるほど嬉しいものなので、20代女性を中心に契約が増えている。


 今まではガソリンスタンド、デパート、大手スーパーなどが主な提携カード発行元だったが、インターネットが生活に溶け込んでいる韓国ではサイバーマネーやポータルサイト、デジタルコンテンツと提携したカードが続々と登場している。カード会社にとっては初めてクレジットカードを申請する20代をターゲットにした新しい収益モデルなわけなので、加入者がそれほど多くなくても損はしない。


外換銀行はドトリの融資も実施


 仁川空港にも入店している外換銀行は2006年10月、金融業界では初めてネットでしか運営されないCyworld支店をオープンし、話題になった。


 Cyworldのサイバーマネーである「ドトリ」を貯金すると訪問者数に応じてドトリで20~100%の利息が付き、ドトリの融資もしている。融資は抽選で選ばれた40人にドトリ500個を貸出、外換銀行のニュースや広告を自分のSNSサイトに掲載したりコミュニティ活動で返済する方式だ。サイトそのものは身近なドトリを利用して金融商品を分りやすく説明するのが目的だが、予想以上の反響があったため、今後SNSサイトの利用頻度や人気度に応じて利息率が違うドトリ貯金も発売するそう。企業銀行では冬休みの間、500ドル以上両替した顧客を対象に毎日先着30人にドトリ30個をプレゼントしている。


 韓国にはサイバーマネーを商品券や携帯電話料金決済、保険料納付などオフラインで使えるようにしてくれる仲介サイトがある。ドトリやオンラインゲームでのサイバーマネーがいっぱい貯まれば仲介サイトを利用して映画チケット、図書券に交換する人も少なくない。ちょっとしたプレゼントや誕生日プレゼント、お年玉もサイバーマネーで済ませることが多く、筆者も去年に続いて今年もお年玉はドトリやゲームマネーが買える図書券にするつもりだ(韓国のお正月は旧暦)。この頃はネット利用人口の裾が広がっていることから、Eラーニングやドラマ再放送VODのためサイバーマネーを購入する50~60代も増えている。上司がドトリをチーム員達にプレゼントしたとか、遠くに住む友達にちょっとしたプレゼントがしたくてドトリを買ってあげたという話もよく聞く。


 韓国信用回復委員会が高校生810人を対象に調査した結果、63.7%がサイバーマネーを定期的に購入していると答えた。韓国のサイバーマネー流通額は年間1兆ウォンを遥かに超えるものと推定されている。


 サイバーマネーは単にゲームのため、自分のSNSをかわいくするためのサイバー上の貨幣というより、オフラインからオンラインへ移行している 10~20代の交友活動にはなくてはならない存在となってきた。サイバーマネーとリアルマネーの区分がなくなる日ももうすぐなのかも知れない。

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2006年1月9日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/NPC/20070109/258227/

韓国大手企業の2006年成績表・サムスンとLGの極端な差はどうして?

12月が年度末の韓国ではちょうど今頃、企業の推定実績発表と人事異動がマスコミを賑わす。朝鮮日報の報道によると、韓国企業ランキング100位までの大手企業の2006年度実績は、売上高が前年比7.07%増加した547兆576億ウォン(注)だが、営業利益と純利益はそれぞれ1.45%減、5.94%減の48兆3757億ウォンと43兆6523億ウォンだった。

 円安の影響から、海外市場でノートパソコンやHDTVなどの家電や自動車は、日本製の方が韓国製より安いという現象が発生した。韓国製品は価格競争力が落ち、輸出への依存度が高い企業は売れるけど儲からないという問題を抱えている。


韓国でも貧富の差は開く


 韓国を代表する自動車メーカーといえば現代自動車だが、不正資金工作・横領問題で会長が逮捕されたことに加えて、組合のリストラ、円・ドル安ウォン高と内外から締め付けられ純利益は32%も減りそうだ。日本市場には、ヨン様をモデルに起用し、韓国の国民車として愛される「ソナタ」を投入したが販売は苦戦し、ネットでは「日本の主婦向けにセダンを売り込むのは日韓の差を認識せずヨン様だけに頼った戦略の間違い」と指摘されてもいた。


 一方で、輸入車を扱う現代自動車の子会社はウォン高から外車の値下げ効果があり、売上高、純利益とも40%ほど成長した。景気が悪いといっても韓国国内での貧富の差は広がっている。実際には余裕資金の多い個人は増えていて高級外車と輸入食材、輸入赤ちゃん用品は飛ぶように売れている。今年のファッションはあまり寒くもないのに毛皮がトレンドだそうで、通勤の満員電車に毛皮で乗り込むOLが増えていて、私としてはくしゃみが止まらなくなるから困るくらいだ。


 大手企業の動向の中でも特に注目されているのは韓国の2大財閥系企業、サムスンとLG。2社の2006年の実績は極端な差が出た。時価総額韓国国内1位のサムスンはまずまずの実績を達成したのに比べ、LGは悪夢の1年というほど実績が落ち、グループ内の中核会社であるLG電子のCEO交代まで断行したほどだ。


 LGは今年グループ全社が大幅の純利益減少となった。主力事業の家電は純利益が54.5%減少した。LG電子製の携帯電話の人気が落ち、前々回紹介した「チョコレート」携帯が唯一の救いとなった。2005年純利益5170億ウォンでお祭り騒ぎだったLGフィリップスはLCDの価格急落で8000億ウォンの赤字、通信キャリアのLGテレコムも純利益11.74%減少、化粧品や洗剤などのLG生活健康は12%減少、LG化学は24.03%減少、持ち株会社のLGも26.49%減少した。


 LGは責任を追及するかたちで大規模な人事異動を断行し、グループ内の代表理事(日本でいうところの代表取締役)8人が新しく入れ替わった。今まで「和」を重視した人事から一変して、徹底した成果主義と未来志向的、グローバル経営強化の3つの原則に沿って行ったと発表した。LG電子の代表理事にはナム・ヨン前LGテレコムの社長が抜擢された。30年間LGに勤めた戦略通と呼ばれる人物で、攻撃的マーケティングでLGテレコムの加入者を増やし雨後の竹の子ように成長させたのが高く評価された。オーナーである会長の秘書室長でもあった人物だ。


 サムスンは営業利益は減ったものの純利益は4.44%増えた8兆ウォンと予想されている。サムスン物産や子会社の純利益も100%以上の成長が見込まれていることから「やっぱりサムスンは危機に強い、賢い企業」と評価されている。毎年年末になるとサムスン電子やキャリアのSKテレコム、LGテレコムは基本給の700~1000%がインセンティブで支給されると報道され、サラリーマン達を憂鬱にさせていたが、今年はどこも大規模なインセンティブは支給されない様子。でもサムスンは会社別の実績に応じて基本給の150%以内で支給し、1月には事業部別の目標を超過した利益を年俸として支給する制度があるため、事業部によっては年俸の50%近い金額をボーナスでもらえる人もいるということだ。

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2006年12月26日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/NPC/20061226/257737/

韓国の携帯電話はスリム化競争も激化

サムスン電子はマジックシルバーのほかにも、自慢の薄さ6.9mmで200万画素カメラ付き携帯ウルトラエディッション6.9(SPH-V9900)、1000万画素携帯(SCH-B600)、8GBハードディスク携帯(SCH-B570)を発表。世界をあっと驚かせる新技術の携帯を続々登場させる。サムスンとLG電子は「年間発売する新機種の数を減らし、その分じっくり開発したプレミアム携帯を披露したい」と話している。

 ウルトラエディッション6.9は海外で先に発売されたモデルで月100万台販売というすごい勢いで売れている。6.9のほかにマジックシルバー同様マグネシューム素材の9.9(SCH-V900)、300万画素カメラ付き、地上波DMBに対応した12.9(SCH-B630)も世界市場に続いてこの秋から韓国で発売された。12.9は地上波DMB番組時間アラーム、録画、キャプチャーなどモバイル放送を最大限楽しめる機能がついている。サムスンは薄さ5.0 mmまで既に開発したと発表しているので、紙切れのような携帯が出るかも、と期待してしまう。






サムスン電子のウルトラエディッション6.9



 ナンバーポータビリティーの影響から特定のキャリアでしか加入できない携帯も増えている。特に韓国のNTTドコモともいわれる最大手SKテレコムは「Tスタイル」というシリーズでSKテレコム加入者だけが購入できるデザイン携帯を発売している。モトローラの衛星DMB携帯モトビュー(MS800)とウルトラエディッション9.9(SCH-V900)の2種類が対象となり、ほかのキャリアからは販売されない。ウルトラエディッション6.9はKTF専用で(品番SCHはSKT、SPHはKTF)、SKテレコムからは衛星DMBが追加され8.4mmになったSCH-B510が発売された。


2007年は3.5G携帯が続々と登場する


 2007年の韓国携帯電話市場は依然とスリム競争が続き、3.5GのHSDPAやWCDMA、モバイルWiMAXであるWibro搭載で高速インターネットが使える端末が続々発売されそうだ。特にWCDMA専用携帯は20種類ほど発売される予定なので、今のWCDMA/CDMAデュアル方式に比べぐっと端末の値段が安くなりそう。


 HSDPA携帯は既にサムスンから世界初の2006年5月に発売されているが、加入者は11万人程度に過ぎない。値段の高さもあるが、携帯電話から高速インターネットを使わなくても街中にただで使えるパソコンが転がっていることも影響している。韓国では全国郵便局、市役所、区役所、地下鉄駅構内、ファーストフード店などに無料でネットが使えるパソコンがあり、誰でも自由に使える。そのため、携帯電話から高い料金を出してまでネットを使いたいと思う需要がまだ少ない。しかし、HSDPAの全国カバレッジが完了すれば、利用形態も変わるかもしれない。


 HSDPAはデジカメにも搭載されるらしく、来年からはデジカメで撮った高画質写真や動画をSNSや電子額縁に直送信、なんてこともできそう。電子額縁はSKテレコムやKTが提供しているサービスで、写真を電子額縁のアドレスに転送すると、部屋の中にある額縁に写真が登場するというものである。


 というわけで、来年の携帯電話はスリム、デザイン、DMBに速度の競争も加わることになりそうだ。値段の安さを競争してくれるといいんだけどな~


※写真の出典はサムスン電子のホームページ

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2006年12月19日

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/NPC/20061211/256605/

この冬、韓国携帯電話は愛称と素材で勝負

「チョコレートはいかがですか?」「それよりは光り物でシャインがいいかな」…

 これはデパ地下ではなく、韓国携帯ショップでの会話。日本だと「903i出ました!」とかW43、W44など品番で紹介するのが当たり前だが、韓国の携帯は愛称で呼ばれるのが人気の証といわれている。


 去年までは広告モデルの名前をとって「ジョンジヒョンフォン」、「クォンサンウフォン」などとユーザーの間で自然に覚えやすい愛称がつけられたが、今年の春モトローラの「レイザーフォン」が大当たりしてからは、メーカー側が発売段階から「チョコレート」「マジックシルバー」「ウルトラエディッション」「シャイン」など端末の特徴をとった愛称を打ち出している。もちろんそれぞれ品番もあり、サムスン電子のマジックシルバーはSCH-B500、LG電子のチョコレートはKV-5900だが、誰も「KV-5900ください」とは言わない。


 業界では「愛称がある携帯ほどよく売れる」という説があり、何とか記憶に残る名前をつけなくてはと悩んでいる。それもそのはず。日本と違い韓国は年俸制が定着し、ボーナスという存在は記憶の彼方へ消えてしまったため、時期に関係なく年中新規端末が発売される。代理店で埃をかぶったまま消えていく端末も少なくない。


LGの携帯は「チョコレート」でブレイク


 愛称マーケティングで最も成功したのはLG電子の「チョコレートフォン」。板チョコのように薄くてかわいい、プレゼントしたい携帯と女性社員らが話しているのを偶然聞いた担当者がこのような名前をつけたそうだ。チョコといってもこげ茶色ではなく、ブラック、ショッキングピンク、ホワイト、ワインなど豊富なカラーバリエーション、アメリカ市場向けにグリーンやチェリーなどのカラーも発売している。キーパットの文字が赤なのがおしゃれ。チョコレートフォンは世界70ヶ国で販売されていて、海外でもマスコミが大絶賛、今年600万台販売を達成した。サムスン電子に押され気味だったLGの携帯は黒字転換、一気に世界の高級ブランドとして認知されるようになった。






LG電子のチョコレートフォン「KV-5900」



 1000台限定発売されたチョコレートフォン2限定版は14金で縁取られ、LCDの下にも14金のストライプがある豪華なモデルで話題になった。LGは後続モデルとして「シャイン」を発売し、サムスン電子のマジックシルバー、モトローラのクレイザーに対抗している。






LG電子のチョコレートフォンII「LG-SV600」


(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2006年12月12日

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/NPC/20061211/256604/

ITUテレコムワールド2006、ITでも韓流を狙う

「情報通信技術分野のオリンピック」とも呼ばれる「ITU(国際電機通信連合)テレコムワールド2006」が12月4日から8日まで、香港アジアワールドエキスポで開催されている。アジア初のテレコムワールドだけあって、韓国のIT関連新製品が一堂に会するほか、大手企業のCEOやIT業界の大物もみんな香港に集結する盛り上がりをみせている。

 韓国国内の報道では、ITUに初参加加するチャイナモバイル、チャイナネットコムなど中国勢に注目すべしと騒いでいるし、中国通信業界の世界進出のきっかけになるだろうという指摘もなされている。一般ユーザーからすると「テレコムワールドってそんなすごい展示会なの?」としか思えないが、「へ~」と驚くべき便利な最新モバイル技術がどっと披露されるという点は注目すべきではないだろうか。


中国の韓流は衰え知らず、その波及効果はIT機器にも


 最近、日本の韓流(韓国ブーム)は一時に比べると下火になったようだが、中華圏での韓流はまだまだ勢いが衰えていない。ドラマに登場するサムスンのPCや携帯電話、LGのTVや家電までもすごい勢いで販売が伸びているという。


 11月にあった俳優ソン・スンホンの除隊では日本や中国、台湾、シンガポールなどから5000人以上のファンが詰め掛けたそうだし、済州道であった韓流エキスポ開幕式ではヨン様が30分登場するだけで日本からの参加者が軽く3500人を超したそうだ。驚いたのは遠い砂漠の国、中近東でも韓国のドラマが人気で、韓国製の黄金TVやプラチナ携帯といった韓国や日本では見たこともないようなすごい製品が売れているそうだ。


 韓流ファンたちは韓国人にとってありがたい存在だ。自国の文化を尊重してくれて、ドラマや映画を観ながら一緒に感動してくれる仲間だからだ。この勢いに乗って、ITでも韓流が続いてくれればという思いもあるが、一方でサムスンとLGの独走ゆえに、韓国にはこの二つの会社しかないのかと思われるのは悲しい気もする。


 冒頭に紹介したITUテレコムワールド2006に参加するのは世界40カ国、700以上の企業だ。韓国からは日本のNTTのような電話・通信企業であるKT、携帯電話会社のSKテレコムとKTF、加入者100万人を目前した衛星DMB(日本の衛星をシェアしている衛星モバイル放送)のTUメディア、端末関連ではサムスン電子とLG電子といった韓国を代表する大手IT企業が参加する。


 韓国勢の展示の目玉は、今年から商用化された3.5GのHSDPA、Wibro(モバイルWimax)といった新しい通信サービスと端末。IT強国と自負しているだけあって、世界に向けあっと驚くような最新技術を紹介するべきという義務感を感じているようだ。KTとKTFは「ユビキタスライフパートナー」というテーマで公園(U-Park)、商店街(U-Mall)、駅(U-Station)、地下鉄(U-Metro)、家(U-Home)など、生活の中の具体的なシーンを挙げた展示コーナーを設けた。


 SKテレコムは「Innovation & Inspiration」がテーマで、日本でも提供されている携帯電話での決済、いわゆるおサイフケータイ機能のほかに韓国が発信地となったマルチメディアサービスを展示する。1回の決済で再課金なく、PC、MP3プレーヤー、携帯電話など、いろいろな端末から音楽を再生できる「Melon」、携帯電話が人の動きに反応してゲームの操作が簡単にできる「GXG」、世界4カ国でサービスされているメガヒットSNS「モバイルサイワールド」などを展示する。


 日本ではなかなか定着しないモバイル衛星放送も韓国ではポピュラーな存在だ。韓国では有料サービスにもかかわらず高速鉄道や地下鉄の中を含め全国95%に至るカバレッジの広さとチャンネルの多さから人気を集めていて、映像15、オーディオ19チャンネルを提供している。利用できる端末も54種類と選択の幅が広く、加入者数100万人まであともう少し。ITUでもそのノウハウに注目が集まっている。

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2006年12月5日

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/NPC/20061205/256061/

サムスンが人材確保に躍起になるワケ

サムスン電子(サムスン電子)は10月、日本の慶応義塾大学とよく比べられる私立の名門、延世(ヨンセ)大と大学院に携帯電話専攻設立協約を結び、2007年から毎年、修士課程20人、博士課程8人を携帯電話の専門家として養成することにした。これを皮切りに、サムスンは韓国の主な大学と携帯電話専攻提携を広げていく計画だ。

専門家育成カリキュラムを専門大学で実施


 さらに韓国で初めて4校の専門大学とも提携し、サムスンが要求する半導体設計専門家、設備エンジニアを育成するカリキュラムを組んでいる。2007年2学期から大学ごとに30人を選抜し、半導体部門の「設計専門家」と「設備エンジニア」を養成するため「半導体技術教育プログラム(STEP : Semiconductor Technical Education Program)」を実施し、サムスンの就職に向けた教育プログラムを行う。こちらも同じように奨学金を支援する。サムスンの系列会社もそれぞれ大学と協力し、LCD、LED、セラミック、イメージセンサーモジュール、無線技術、部品の国産化、新素材開発を支援している。


 人材育成にここまで力を入れているのはサムスンくらいのもの。他の大手企業も奨学金制度こそあるが、サムスンほど大きな金額ではない。LG電子では大学生のグループを対象に、海外に出向いて調査を行い、その調査結果で優勝した学生はLGに入社できるという制度を運営しているが、規模は年々縮小している。


 サムスン電子の関係者は「大学での教育は現場のIT技術の早さに追いついていけない。毎年6000人以上の理工学部の新卒を採用し、800億ウォン以上を投資して再教育している。やっと会社の人間として使えるようになるまでには平均2年半もかかる。大学と提携してオーダーメイド式に人材を養成し、採用後すぐ実力を発揮してくれる高級人材を確保できるならば、授業料全額や生活費支援なんて安いもの。韓国の携帯電話産業を世界一にするためにも産学連携は絶対に必要だ」と話している。


国を代表するエリート


 サムスン電子は創意的、挑戦的、専門的なグローバル人材を自社の人材像としてよく話している。そして、同社の人材採用での選別は徹底していることから、韓国国内ではサムスン出身者=エリートという認識は強い。同社社員たちもその自負はあるだろう。


 ただ、優秀な学生を選び支援して会社に必要な人材として育てるのはいいけど、自由な発想を育てる期間であるはずの大学時代に、ここまでサムスン、サムスン、といわれてしまうと創意もなければ挑戦もないんじゃないかという気もしてくる。就職教育ばかりで学生時代の楽しさがなくなるというもの、学生にとっては不幸だ。


 就職難からか、この頃の韓国の大学生たちはサークル活動もせず、ノートの貸し借りもせず、とにかく優秀な成績を残すために必死になりすぎている。10年前まではレポートや試験前になれば図書館に集まってアドバイス(もちろん無料)してくれていた先輩たちが、今ではレポートや試験でいい点数を取るためのノウハウをネットで売買をしている。人間味がなくなったというか、競争のしすぎというか。もちろん遊ぶ人もいるだろうけど、今では、それは一部の姿となりつつある。


 企業側が、ここまで徹底して大学で人材を育成したいという気持ちもわかる。特に韓国は徴兵制が残っているから男性は大学を卒業するのが日本より3年遅い。大卒新入社員が既に24~25歳を超えているので、そこからまた再教育となれば社員として一人前になるのは27歳を超えてからとなってしまう。二浪、三浪していると、本格的なスタートは30歳を超えてしまう場合だってある。これは確かに企業の負担も大きい。楽しい大学時代を保証しつつ、専門人材としての養成を受けられる、この両方は選べないものか。


(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2006年11月28日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/NPC/20061121/254360/