繰り返されるハッキングと脅迫、韓国で金融システム不安広がる

2011年4月10日、韓国消費者金融業界1位の現代キャピタル(現代自動車系列)のシステムがハッキングされた。これにより、全顧客180万人の23%にあたる約42万人分の住民登録番号(国民ID)や氏名、電話番号、住所といった個人情報、ローンカード番号と暗証番号、信用情報(どこでいくら融資してもらっているとか断られたといった記録による信用等級)がハッカーの手に渡った。

 ローンカードは暗証番号が流出したとしても、カードそのものがないとお金を引き出せないので大丈夫だというが、住民登録番号や電話番号といった個人情報が盗まれた人の中には、さっそくいろんな消費者金融からお金を貸してあげるという電話やショートメッセージが届いているという。


 警察の捜査によると、ハッカーは現代キャピタルを脅迫して受け取った1億ウォン(約80万円)を、ソウル市内とフィリピンで引き出していた。サーバー攻撃もフィリピンから行われていたため、インターポールにも捜査を要請したという。


 現代キャピタルへのハッキングは2月から続いていたが、4月7日になってハッカーから脅迫されるまで全く気付かなかったという会社側に説明に、唖然とするばかり。他の消費者金融会社は次々にシステム点検を始め、セキュリティに異常なしと発表している。


 現代キャピタルへのハッキングは「Blind SQL Injection」という方法だと推定される。自動的に攻撃を繰り返し、データベースの情報を盗み出すというもので、同社はデータベースの暗号化をアップグレードしていなかったために、簡単に盗まれたという。


 警察のサイバー捜査隊によると、韓国では2008年から、これと同じ手法によるハッキングと脅迫が繰り返されているにもかかわらず、「お金がかかる」からと何の対策も取らないでいる企業が多いとして、今度こそはデータベースの暗号化、セキュリティ強化に深刻に取り組んでほしいとしている。


 政府機関である金融監督院も特別監査に着手し、現代キャピタルが政府のIT監督基準を順守していたのか確認するとしている。金融機関全般のハッキング対策体制を点検すると発表したその次の日、今度は農協銀行のシステムが止まった。これもハッキングによるものではないかと緊張が走った。


 4月12日午後5時ころから農協銀行のシステム障害が発生し、ATM、ネットバンキング、モバイルバンキング、テレフォンバンキング、さらには窓口の利用も止まってしまった。みずほ銀行のシステム障害に関するニュースがここで大きく報じられたばかりなので、事態が長期化するのではないかと恐れた顧客達が朝から農協店舗の前に集まり焦っていた。銀行のATMが数時間利用できなくなることは以前もあったが、システム障害によってATM、ネットバンキング、窓口まで全て利用できなくなる今回のケースは、初めてのことである。








農協銀行のWebサイトとシステム障害に対する謝罪文


 徹夜で復旧してみたものの間に合わず、13日の昼から20時間ぶりに窓口営業と他の銀行のATMから農協のキャッシュカードを使ってお金を引き出せる業務だけが再開された。ATM手数料は後に払い戻しされるという。その他のサービスは14日中には解決したい、というだけで見通しが立っていない。


 ソウル市内にはいろんな銀行があるので農協の看板をあまり見かけないが、ソウル郊外から地方に行くほど、銀行業務は農協に頼っている。農村、漁村に行くと、銀行といえば農協か郵便局しかないところが多い。自治体の取引銀行もほとんどが農協となっている。


 13日昼時点で発表された障害の原因は、ハッキングではなく「内部者のプログラム操作によるサーバー機能障害」であった。運営システムに問題があり、それを直す途中でシステム障害が発生した。電算センター内部と外部を中継する運営ファイルが削除されたのが原因だった。


 誰かがメインサーバーと全国のシステムを連結するプログラムファイルを削除したためと判明しても、災害復旧システムも稼働せず、どのプログラムが削除されたのかはまだ分からないという。しかも、ファイルを間違って削除してしまった場合にはバックアップできるが、意図的に削除された場合はシステム復旧までに相当な時間がかかるという。


 それに、誰かが内部の人を利用してシステム障害を発生させた、または電算センターのサーバーにアクセスできるパソコンをハッキングして、障害を起こすようファイル削除を命令するプログラムを仕掛けたということも考えられる。ハッキングではない、と断定できないのだ。


 ネットでは「農協のカードもエラーになって、バスにも地下鉄にも乗れず、現金もなく、途方に暮れている」、「農協のカードが使えず、何も買えず、何も食べられず、ダイエット中」という書き込みがあった。


 韓国はクレジットカードが後払い式の交通カードにもなっていて、プリペイドでチャージしなくてもバス、地下鉄、電車、タクシーを利用できるようになっている。コンビニでも1000ウォン(約80円)以上であればクレジットカード払いできるため、現金を持ち歩かない人が多い。


 ATMで振り込みできないのも大問題だが、カードを使えないのがもっと怖い。未成年者の場合はチェックカード(日本でいうデビットカード)を作りクレジットカードと同じように使っている。チェックカードの場合、交通カード機能はプリペイド式になり、これもシステム障害によって使えなくなっている。


 ひどいのは、農協を詐称し、システム障害のため個人情報を入力し直す必要があるとして口座番号やカード番号、暗証番号などを聞く電話詐欺まで起こっていること。そういう話を聞くと、常に人を疑わないと生きていけない世の中になったような気がしてしまう。


 金融機関へのハッキングも繰り返され、銀行のシステム障害も繰り返されている。少しずつセキュリティに投資をしてあらかじめ確認していれば予防できたものを、事件が起きてからあわてて大規模な資金を投入してシステムを直す。そしてまた放っておいて、事件が起きてからまた莫大な資金を使って直す。この繰り返しを断ち切らない限り、まだ被害のない企業でも、ハッキングの標的になるのは時間の問題だろう。


趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2011年4月14日

Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20110414/1031287/

震災で大活躍したスマホアプリは憎き敵!?

東京に住む韓国人のネットコミュニティで、東日本大震災の時にどこで何をしていたのか、どんなことを感じたのかといった書き込みが続いている。

 中には東京に到着した2日目に震災にあい、「日本は地震が多いと聞いていたので、これぐらいの揺れは年中あるのだと思った」という留学生もいたほどである。「地震の後どうしたらいいのか分からなくて、余震の度に怖くて、わざわざ避難所に行って帰宅難民と一緒に夜を明かした」という女性もいた。韓国には地震がないというのが前提になっていて、学校でも会社でも地震が起きたらどうすればいいのか、訓練などしたこともないからだ。月に一度、北朝鮮が攻めてきたときを想定した避難訓練があるが、サイレンが鳴ると、車の中にいる人は運転をやめてその場でストップ、歩いている人は近くのビルの中に隠れるというものなので、地震のときは全く役に立たない。


 今回の大震災では、東京に長く住んでいる人も、来たばかりの人も、共通しているのは「スマートフォンを持っていて本当によかった!」という書き込みであった。4月の新学期を前に東京に到着したばかりの留学生の中には、韓国にいる家族や友達からスマートフォンに送られてきたメッセージを見て深刻な事態であることを知ったという人が多かった。


 電話も通じなくなり、当然のことであるが国際電話も使えなくなった。海底ケーブルが損傷したそうで韓国やアメリカのWebサイトにアクセスできなかったり、速度が極端に遅くなったりしていた。3月11日から2日間ほどは、パソコンから韓国のポータルサイトにアクセスしてメールを送ろうとしたが、なかなかつながらずにあきらめるしかなかったという状態が続いた。


 そんな中で活躍したのがスマートフォンの無料メッセンジャーアプリ「カカオトーク」。米ウォールストリートジャーナルは3月30日付の記事で、東日本大震災で活躍したアプリとしてカカオトークを紹介していた。


 カカオトークは1000万ユーザーを突破した韓国を代表するアプリの一つで、無料で使えるモバイルメッセンジャーアプリ。パソコンでよく使われるインスタントメッセンジャーを、スマートフォンでも楽に使えるようにしたものだ。加入者同士でメッセージ、写真、動画などを無料で送受信できて、グループチャットは韓国語、日本語、英語の3カ国語に対応する。







カカオトーク(日本語のWebサイト)。iPhone/Androidとも使える

3月11日には日韓の間で国際電話使用量が一時期通常の91倍にまで急増してつながらなくなったが、カカオトークとインターネット電話、TwitterといったSNSは問題なくつながり、緊急連絡の手段として大活躍した。当時東京にいた韓流スターらもカカオトークで韓国にいる事務所に連絡をしたり、ビジネスマンらもカカオトークを使って他の社員と連絡を取り合ったりしたとTwitterでつぶやいた。

 カカオトークによると、3月11日は2億件以上のメッセージが送信され、その後も1日平均1億8000件ほどのメッセージが送信されているという。3月11日にはたった1日で日本地域の加入者が2万人近く増え、海外ユーザーが増えたことから予想よりも早く1000万ユーザーを突破した。

カカオトークは韓国でスマートフォンを買ったら真っ先にダウンロードするアプリとして人気を集めている。米グーグルやマイクロソフトなどからもメッセンジャーが出ているが、一目で分かる使いやすさと、SNSとチャットの両方の機能を持っていること、チャットの途中でアプリが落ちたりしないことも人気の秘訣である。韓国のスマートフォンユーザーは2011年末に人口の約4割に当たる2000万人まで増加すると予測されているため、カカオトークのユーザーも同じぐらい増えると見込まれている。


 ここまで人気のアプリであるが、モバイル通信事業者からは目の敵のようにされている。これら通信事業者が提供するショートメッセージを使うと、40文字で20ウォン(約1.6円)、写真や動画を送信するマルチメディアメールは1件30ウォン(約2.4円)の料金がかかる。それがカカオトークだと3GやWi-Fiといったモバイルインターネットさえつながっていれば無料になる。カカオトークから送信されるメッセージ分を金額で換算すると1日2億件×20ウォンで40億ウォン(約3億2000万円)。かなりの金額である。


 通信事業者からするとこの分の売り上げは減り、逆に大量のデータトラフィックだけを誘発することになる。それゆえカカオトークは憎い相手に違いない。特定アプリのトラフィックによってネットワークが遅くなったり問題が生じたりする場合でも、その責任は彼らに回ってくるからだ。


 3月末にはカカオトークのアクセス制限や有料化を検討するべきとSKテレコムが話したことから、スマートフォンユーザーが猛反発して結局なかったことになった。ただ、トラフィックに相当な負荷がかかっているだけに、この手のモバイルメッセンジャー対策を急いでいるという。


 カカオトークの場合、ユーザーはログイン状態を保つために、中央サーバーに絶えず信号を送る。10分に一度、280バイトほどの信号だが、これが1000万人分となれば通信事業者にとっては相当な負担となる。通信事業者からすると「莫大な資金を投資したネットワークをただ乗りするアプリ」なのだ。


 一方、ユーザーにとってはスマートフォンを買うと専用料金制度に加入しなければならない。ほとんどのユーザーが「3Gネットワーク使い放題+Wi-Fiは無料」の料金制度を選ぶので、「毎月10万ウォン(約8000円)近い料金をもらっていながら、メッセンジャーぐらいで経営難を訴える通信事業者の方がおかしいではないか」と、どうしてカカオトークを名指しして騒ぐのか分からないという反応も多い。ネットワークさえつながれば無料で利用できるカカオトークのようなメッセンジャーは、ユーザーにとってはありがたいサービスだからだ。


 放送通信委員会の移動通信データトラフィック推移をみると、2010年1月に449TBだったのが2011年1月には5463TBと11.2倍も増加しており、このうち91%をスマートフォンが占めるという。さらにスマートフォン加入者のうち10%が90%のデータトラフィックを占めるということも発表されている。


 カカオトークはこれから音声チャット機能も追加するとしている。ポータルサイトが提供するメッセンジャーの場合は既にスマートフォンから音声チャットも利用できるようになっている。音声まで無料で使えるようになれば、通信事業者の通話料売上はさらに落ち込み、データトラフィックは今以上に問題になる。通信事業者とアプリのデータトラフィック論争は、これからが本番である。


趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2011年4月7日

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20110407/1031159/

世界一電子化した行政システムも後手に回る災害対策

東日本大震災は韓国にたくさんの課題を提示した。防災対策や原発問題だけでない。自治体の業務継続態勢やデータ保護、公的災害情報提供、災難時の統合指揮無線通信網構築、国家機関による災害復旧コントロールなど、必要だけど「予算がない」を理由に韓国政府が今まで後回しにしていた災害関連システム構築に拍車がかかりそうだ。

 韓国では震災後の日本の状況や復興に関するニュースが毎日報道されている。津波で自治体の戸籍データが消失した、電話が通じないので政府もソーシャルネットワークサービスを活用して情報を提供している、アクセスが集中する公的災害情報サイト向けにクラウドサービスを無償で提供する企業が増えている――といった日本発のニュースに「韓国は大丈夫なのか」と不安に思う国民が増えていることから、中央政府や自治体の災害対策について特集を組むメディアが出てきている。



政府・自治体が持つデータのバックアップをどうする



 韓国は電子政府、電子自治体を早期に導入した。国民に対しては、政府統合電算センター(政府機関ごとのシステムを集めた場所。大田と光州の2カ所にある)にデータは保存されている、万一災害で紙の戸籍が消失したとしても住民登録されている国民のデータはちゃんとここに残っているから大丈夫、とされてきたが、実はそうでもないという問題提議が相次いでいる。


 電子政府や電子自治体のデータをより安全に保存するため、政府バックアップセンターが2009年に計画されたものの、立地選定と2000億ウォン(約160億円)規模の予算を確保できなくて2011年の今でも計画段階に留まっているからだ(大田と光州の政府統合電算センターが災害で動かなくなった場合に備えて第3のセンターにバックアップセンターを計画)。


 今すぐ予算が付いたとしても、バックアップセンターが稼動するのは2015年以降になるという。その間に韓国で大規模な地震や北朝鮮の攻撃があった場合は、データの安全は保障できないというのだ。韓国の面積は日本の3分の1ほどしかなく、人が住める平地も少ないため、データセンターが互いに離れているとしても距離は近い。複数のセンターに保存して安全性を高めるしかないのかも。



電子化行政の落とし穴



 韓国は国連が選定する電子政府評価1位、ブロードバンド普及率も1位であり、行政機関も民間企業もほぼすべての仕事が情報システムの中だけで行われる。エコのためにどんどん「紙」をなくしているので、生活全般におけるICT依存率も世界一かもしれない。情報システムのおかげで、何もしなくても自分に払い戻される税金が自動計算されて口座に振り込まれるほどである。


 ICT依存が高いと電力確保が重要であり、政府統合電算センターは無線電源供給装置、非常発電装置を備えている。問題なのは、政府統合電算センターにつながっていない、散発的に構築された行政システムもまだまだ残っている点である。日本でも政府の電子政府とは別に電子自治体が構築されているが、自治体でデータセンターを持つだけでなく、政府のセンターとバックアップセンターにも保存し、連動することで、万一に備えることも考えなくてはならないだろう。韓国では2009年からチェジュで実証実験が始まったスマートグリッドも再び注目を浴びている(関連記事)。


 一方、民間データセンターは耐震とバックアップ態勢をアピールしている。韓国のサムスンSDS、LGCNSといった大手のデータセンターは遠距離地点で災難復旧センターを運用し、二重のデータバックアップを行う。2009年以降データセンターや基地局などは耐震設計が義務付けられていることから、震度8~9の地震でも耐え、衝撃を吸収して電算装備を保護できるという。


警察・消防・軍の災害復旧システムに互換性を



 データ保存のほかにも急いで改善すべき点はまだある。


 行政機関も民間機関も、震災後から中断することなく組織を動かすための災害復旧計画(DRP、Disaster Recovery Plan)と業務継続計画(BCP、Business Continuity Plan)に関してシナリオを明確にするための点検を始めた。しかし、遅々として対応が進まないところもある。


 自治体ごとにある総合防災センター。自家発電で非常事態に備えるが、防災センターに耐震設計がされていないので、大地震が起こればセンターそのものが倒壊してしまう可能性があるという。バックアップシステムがない、非常用の食料と水がないので職員がセンターの中で閉じ込められたら大変、という基本的な問題があることも指摘されている。それらの問題を認識していながらも、「予算がない」という理由で後回しにされてきた。


 復旧業務を担当する警察、消防、軍のシステムも改善を急いでいる。災害復旧支援システムが個別に構築され、相互運用できないという問題があるからだ。


 例えば電話やネットが通じなくなる緊急事態が発生した際に、警察と消防と軍の無線通信方式と周波数が違うので、うまくコミュニケーションできずに右往左往する可能性もある、ということである。災害が発生すると真っ先に現場に向かう警察、消防、軍が直接連絡を取り合って、リアルタイムで作戦を練り指示を出せる協調体制が取れないようでは、被害を大きくするだけだ。


 そのため2003年から中央政府の災害安全無線通信網である「統合指揮無線通信網」構築が議論されてきた。しかしこれもまた「予算がない」という理由で未だに議論の段階のままである。


 東日本大震災は「政府の信頼性」という問題も浮き彫りにした。調べれば調べるほど災害対策がはっきりせず、「予算がない」とばかり言う我が政府に韓国民は不安を感じるしかない。


 いつどうなるか分からないのが災害である。電子政府でこんなサービスも使えます、こんな情報も提供しますというパフォーマンスもいいが、基本的なところをしっかりしてくれない政府を信頼できるだろうか。社会のためのICT利活用、社会保障としてのICT利活用について今こそ真剣に議論すべきときだ。




趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2011年4月1日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20110401/1031030/

原発の情報が欲しい! 韓国語への同時翻訳サイトで情報入手

東日本大震災後、原発事故と放射性物質が連日話題になっている。健康に影響はないという日本のメディアと、まだまだ危険で安心できないと疑う海外メディア。

 一時期、韓国や中国、米国のメディアは騒ぎすぎではないかといった批判もあったが、欧米各国の政府が自国の日本在住者に対し、国外へ避難するよう勧告してから、東日本に住んでいる韓国人の間でもじわじわと不安が広がっていった。韓国政府は避難勧告を出していない。日本は高い安全基準を適用している国であるとして、日本産食品の輸入を規制するような動きもしていない。それでも日本のメディアで「外国人の帰国ラッシュ」といったニュースを目にすると、どうしたらいいのか悩んでしまう。


 韓国のポータルサイトは東日本に住んでいる韓国人向けに、より正確な状況を把握できるようにサポートするため、NHK、AP通信、CNNといった主なメディアによる福島第1原子力発電所と震災関連ニュースを韓国語にまとめて2時間ごとに更新している。


 ネットユーザーはそれに満足せず、Google翻訳を使って日本、フランス、ドイツ、中国のメディアまで情報源を拡大。Twitterやブログ、掲示板を通じてこの媒体はこういう話をしているようだとつぶやくと、外国語が堪能な人や専門家も参加して、より正確な翻訳が付け加えられ、こっちではこういう話もあると情報が集まる。


 これはネットの無料翻訳サービスが脚光を浴びるきっかけにもなった。日韓の翻訳以外の翻訳精度はまだ高くないため、サイトごとに翻訳された内容が違っていて逆にわけ分からなくなることもあるが、自動翻訳を使って外国語の新聞や本、動画も自由自在に楽しめる時代が近くなったと実感した。


 中でも注目を集めたのが、NHKニュースを同時翻訳で字幕を付けてくれるサービスだった(現在は終了)。3月18日から23日まで提供したもので、機械翻訳ではなく6人の同時通訳専門家がNHKのニュースをリアルタイムで、アナウンサーが話す内容を翻訳して韓国語で入力した。ネットユーザーはUstreamやニコニコ生放送を利用してNHKの日本語ニュースを見ながら、NAVERの字幕を利用して韓国語で日本の原発や震災後の状況を把握することができた。








NHKニュースの同時翻訳を付けたNAVERのWebサイト

日本に住んでいて日本語をあまり話せない韓国人もいる。情報不足でパニックになったり不安になったりしないように、韓国のメディアによってろ過されていない生のままの日本のニュースが知りたい人のために提供されたものである。震災後、韓国のポータルサイトでは「NHK」というキーワードが検索ランキング上位に登場したほど。日本ではどのように報道されているのかを知りたがった韓国人が多かったわけだ。

 ネットでは原発や放射性物質に関してデマも広がっているだけに、できるだけ科学的根拠のある信頼できる情報をたくさん集めて、自分で判断したいという人も増えている。出所の分からない情報に惑わされないよう、韓国の外交通商部(外務省)、気象庁、消防防災庁の公式ミニブログ「me2day」 (NAVERが提供する韓国のTwitter)も忙しくなった。


 宮城・岩手などに派遣された救助隊や仙台領事館から送られてきた現地の写真が公開され、東日本の地震速報、日本と韓国の放射線量の数値、放射性物質に関する説明、日本での緊急連絡先などを随時更新している。


 駐日韓国大使館では、日本政府が発表した東京の放射線量数値を韓国原子力安全技術院に依頼して、人体に影響があるかどうか分析して毎日ホームページで告知している。


 東日本大震災は、韓国から最も近く、韓国人が最も多く住んでいる日本で起きた震災だけに、韓国内の事件と同じ扱いで連日トップニュースとして報道されている。「Pray For Japan」の熱気(前回記事参照)もまだまだ続いている。韓国の大学では、日本から来た留学生が被災して帰国が難しくなった場合、無料で大学の寮を提供して生活を支援するといった案を発表したところもある。韓国内の在庫が足りなくても、日本にミネラルウォーターや非常食品を優先的に提供するという食品会社も増えている。震災の不安と影響、そして痛みを韓国も共有している。




趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2011年3月25日

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20110325/1030911/

携帯電話の時計が一斉に狂った! 原因は北朝鮮のGPS妨害か?

3月4日午後から6日にかけて、韓国首都圏の一部地域で携帯電話の時計が突然14時間も遅れたり、直ったと思ったらまた8時間遅くなったり、時計の時間がおかしくなった。

 携帯電話の時計の時間は、衛星を使うので、どの時計よりも正確と信じられている。携帯電話を時計代わりにし、携帯電話で毎朝アラームをセットしている人がほとんどだ。金曜の夜から週末の間だったので何かがおかしいというだけで大きな問題にはならなかったが、もしこのような問題が平日に起きていたら、遅刻したり時間を間違えたりして一騒動起きていたかもしれない。


 通信事業者は携帯電話の時計が狂ったということに気付かず、コールセンターへの問い合わせが届いてから知ったという。放送通信委員会が原因究明に乗り出したところ、衛星から携帯電話に情報を伝えることを妨害する「GPS妨害電波」が発生していたことが分かった。妨害電波によって北朝鮮から近い仁川、ソウル北西地域、京畿道北部にある145カ所の基地局が影響を受けた。時計だけでなく音声通話に雑音が入りよく聞こえなくなる地域もあった。


 驚いたことにその妨害電波を発信した位置を追跡したところ、北朝鮮のケソン周辺地域だった。砲撃事件以降、北朝鮮がまた韓国を攻撃しようと準備しているのではないかという不安が国中に広がった。ちょうど2月28日から3月10日まで北朝鮮が反対した米軍との連合訓練が実施されているだけに、攻撃の前兆ではないかと思われた。韓国軍の計測器や一部の装備も障害が発生したというニュースがあったからだ。昨年8月にも米軍との連合訓練の間に、北朝鮮からGPS妨害電波が発信されたことがある。


 しかしGPS妨害電波は継続的ではなく途切れ途切れだったことや、電波がそれほど強くなかったことから、北朝鮮が海外から仕入れたGPS電波妨害装置をテストしていただけで、韓国に影響を与えようという意図はなかったのかもしれないと分析された。また韓国軍が「これぐらいのGPS妨害電波は十分制御できる範囲内なので問題ない」と話したというニュースもあったので安心した。


 毎日使っている携帯電話の時計が狂ってしまうなんて想像もしていなかったことなのに、それが北朝鮮からの電波妨害によって起きただなんて。分断国家といっても北朝鮮という存在をあまり意識することなく生きている中、一般の人にまでこういう影響が出るとはちょっと怖い。


 北朝鮮問題はこれで終わりではない。同じく3月4日にはDDoS攻撃(標的のコンピューターに大量のパケットを送りつけたりして障害を起こす)もあった。政府機関、国防部、統一部、国家情報院、金融機関、ポータルサイトなどが対象になった。2009年7月7日に莫大な被害が発生した「77DDoS大乱」のときも北朝鮮が背後にいるのではないかと疑われた。民間企業に対するDDOS攻撃は日常茶飯事だが、政府機関に対する攻撃はこの「77DDoS大乱」以来初めてということも北朝鮮背後説を煽っている。北朝鮮の逓信省が中国内で使っているIPアドレスが攻撃に使われたといったニュースもあったものの、正式には北朝鮮の仕業とは断定できないとされている。


 今回のDDoS攻撃によって、これといった被害はない。何度も攻撃された経験から万全を期していたからだ。P2Pサイトからウイルスをダウンロードしてしまった1万3000台のPCがゾンビーPCとして攻撃に使われた(2009年当時は11万台以上)。政府が早期に「サイバー危機注意報」を発令し、ポータルサイトらが一斉に注意を呼びかけたことで、一般のユーザーも無料のアンチウイルスソフトをインストールして自分のパソコンがゾンビーPCになるのを防いだ。


 面白いのは北朝鮮の砲撃を非難し、金正日パロディ画像などを投稿できる「挑発掲示板」を開設した「DCインサイド」(よく日本の2ちゃんねると比べられるコミュニティサイト)もDDoS攻撃の対象になったことである。民間のコミュニティサイトが国防部や国家情報院と一緒に攻撃されたのはやはり北朝鮮を非難したから? これじゃ犯人が誰なのか自分で明かしているようなものだよね。




趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2011年3月10日

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20110309/1030691/

どこの事業者のiPhone使おう? SK Telecom、2社目のiPhone通信事業者に

韓国人の生活を激変させたiPhoneが、ついにKTだけでなく携帯電話加入者シェア1位のSK Telecomからも発売されることになった。早ければ3月末にでもiPhone 4がSK Telecomから発売される。iPad 2、iPhone 5も続々と導入する計画だという。

 韓国初の携帯電話事業者であり、市場シェア50%以上、長期加入している人が多いSK Telecomであるが、長期割引や家族割引をあきらめてまでKTのiPhoneに乗り換える人が後を絶たず、頭を痛めていた。流出するユーザーを引き止め、iPhoneに対抗するためのマーケティング費が3000億ウォン(約220億円)を超えたことから、いっそiPhoneを発売してはどうかということで話がまとまったようだ。


 国中にモバイルインターネット革命を巻き起こしたiPhone 3GSとiPhone 4のユーザーはKTだけで220万件、携帯電話加入件数の約5%を占めている。SK TelesomはサムスンのGalaxy Sをはじめ、Android端末の宣伝に必死になっていた。SK TelecomはGalaxy Sだけでも240万件以上の加入者を確保し、スマートフォンユーザーはKTより多い(2010年末時点でKTが245万、SK Telecomは390万人)。


 韓国人がiPhone大好きな理由はやはりアプリケーション。これは日本のユーザーも同じだと思うが、世界で話題になっているアプリをリアルタイムで自分も使ってみたい、トレンドに敏感な人になりたいという意欲は、韓国の方がものすごくあるように感じる。


 KTが独占していたiPhoneがほかの通信事業者からも発売されることから、端末の売れ行きや通信事業者を選択する理由にも差が出そうだ。今までははっきりとKT(iPhone)対SK Telecom(Galaxy S)の攻防戦があり、KTはあまり好きじゃないけどiPhone使いたいから仕方なくKTにしたという人も少なくなかった。


 iPhoneを発売したことで一時期サムスンとKTの仲が悪くなったといううわさがあった。いつもならSK TelecomとKTがほぼ同時にサムスンの新機種を発売したのに、Galaxy SだけはKTからの発売がとても遅かったからだ。それが今度はサムスンとSK Telecomの仲が悪くなったといううわさが広がっている。サムスンの新機種をKTとLGU+にも同時提供するという。長年SK Telecomに端末を独占供給していたモトローラもKTと手を組むことになったので、ユーザーにとっては、端末で通信事業者を選ばないといけない時代はもう終わったようだ。








KTはソウル市内のカフェと提携し、店内でiPhone 4やiPadを体験できるようにしている


これからはiPhoneなのか、そうでないのかで通信事業者の選択を迫られることはなくなった。どっちの事業者の料金が安いか、Wi-Fiスポットが多いか、親切でアフターサービスも万全にしてくれるのか、サービス競争になるだろう。同じiPhoneで、同じく毎月9万5000ウォン(約7000円)のスマートフォン定額料金制でも、KTは800分無料通話・1000件無料SMSなのに対してSK Telecomは1000分無料通話・1000件無料SMS、SK Telecomは家族全員の加入年数に応じて割引幅が違う家族割り引き、KTは1年ごとに基本料が10%ずつ値下げされる自分割り、といった具合にサービス内容が違う。

 事業者の競争はユーザーにとってはうれしい話である。韓国ではスマートフォンを買うと専用料金制に加入しないといけない。通常の携帯電話料金の2倍以上あるので家計の通信費負担は年々増えるばかりである。iPhoneに対抗するために莫大な広告費を使うより、その予算で通信費を安くしてくれるとか、端末を安くしてくれるとか、そういう競争に火がついてほしい。


 韓国では2008年から約定加入が導入され、2~3年の間、同一の事業者に縛られていたユーザー1500万人が2011年に開放される。1500万人の多くは違約金が怖くてスマートフォンに乗り換えできなかった人とみられているので、SK TelecomはKTにこれ以上ユーザーを取られないためにもアップルと手をつなぐ必要があった。


 サムスンの端末を全面に売り出していたSK TelecomがiPhoneを発売したことで、Galaxy Sの人気はかげるだろうか。2011年2月韓国内の携帯電話端末シェアはまだまだサムスンが50.5%を占めている。売れた端末の内訳としてスマートフォンの割合は68%となっている。サムスンは普及型スマートフォンとしてGalaxy Sより安い端末も出し、Galaxy S2も十分話題になっている。とまれ、携帯電話加入シェア1位のSK TelecomからiPhoneが出るとなれば、韓国のモバイルインターネット事情はまた大きく変わるだろう。





趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2011年3月3日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20110303/1030583/

韓国アナログ放送終了まで22カ月、地デジ移行が進まない

2010年末からやたらと耳にするスマートTV。放送と通信の融合が急速に進む中、放送産業の発展のため中央省庁である放送通信委員会の主導で「次世代放送発展協議会」が発足した。地上波放送局、ケーブルテレビ局、衛星放送、通信事業者、サムスン、LGなど放送サービスに関連ある企業の担当者と専門家20人が参加している。3D放送やスマートTV向け次世代放送関連研究開発と政策方向について議論する。

 スマートTV、ウルトラハイビジョン放送といった次世代放送のR&D投資に1984億ウォン(約140億円)が新たに決まった。メガネなしで今より16倍鮮明に見える3DTVや音声・動作で操作できてARも利用できる次世代スマートTVをはじめ、4G以降のモバイルマルチメディア放送標準化や5メートル範囲内で測定できる高精密位置情報を活用した放送プラットフォーム標準化、M2M知能通信のためのインタフェース標準化も始める。


 無線電力送信も2013年までに商用化し、電池を気にすることなくいくらでもモバイル端末を使ってテレビが観られるようにするという。韓国では地下鉄の中でも携帯電話を使ってDMB(ワンセグ)が見られるので便利だが、電池の消耗が激しくて長時間は見られないのがネックだった。次世代放送技術の専門家養成にも力を入れる。この予算は通信事業者の売り上げから徴収している放送通信発展基金がベースとなっている。


 とは言っても、韓国でも地デジ乗り換えへの道はまだまだ遠い。アナログ放送が中断される2012年末まで残り22カ月ちょっととなった。テレビでは連日、地デジを受信できるIPTVやデジタルケーブルテレビ加入のキャンペーン広告が流れている。それでも不景気で日々の生活が大変なだけに、「地デジなんて、何とかなるでしょう」とテレビの買い替えもIPTVにも興味を持たない人がまだまだたくさんいる。






サムスンのスマートTV。IPTVのようにVODやネットを利用できるだけでなく、ビデオ・ゲーム・スポーツ・ライフスタイル・インフォメーションのカテゴリー別にアプリケーションも利用できる


韓国は電気料金にテレビ受信料が含まれるので、税金のように受信料を取られる。2009年末時点で、韓国内で受信料徴収対象となっているテレビは約1900万台あるが(全テレビ台数は約2100万で、低所得層の約200万台は受信料を免除されている)、地上波デジタル放送受信テレビの普及率は5割に満たない。低所得層の場合は地デジを見られるテレビを持っている人が8%ほどしかいなかった。

 2010年12月に発表された「2011年度デジタル放送転換活性化基本計画」では、デジタルテレビ普及率80%、デジタルテレビ放送カバレッジ94%、アナログ放送終了に対する認知率90%を目標として掲げる。ネットでしか申し込めないデジタルコンバーターを大手量販店やディスカウントショップでも販売する、デジタルテレビ受信環境改善として農漁村や学校のテレビ受信施設を無料で点検するなどしている。デジタル放送向け番組制作のため、放送局への融資や税制優遇も続ける。


 韓国政府は2013年から2014年にかけて次世代放送を商用化するのを目標としているが、地デジという目の前の壁を越えられなければ次世代放送も意味がない。


 一部地域で2011年6月にアナログ放送が終了するのを受け、地デジ対応テレビの価格競争が始まった。ついこの間は大手ディスカウントショップのロッテマートが、TV受信機能があるLEDモニターを「激安LEDテレビ」として販売したことがあり、家電業界が反発したこともあった。価格競争といってもまだまだテレビは高い。昨日ソウル市内の量販店に行ったら20万円以下で買えるテレビは置いていなかった。46型が基本で、それより小さいのは取り寄せなのだとか。テレビの値段を見た途端、アナログ放送が終了してもなんとかなる、そう信じたくなった。




趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2011年2月24日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20110224/1030437/

PrayForJapanに PrayFromKoreaを添えて~日本に届け韓国からのTwitterエール

.東北地方太平洋沖地震(東日本巨大地震)の発生を韓国の人々が知ったのは、やはりTwitterからだった。携帯電話が通じない中、スマートフォンのメッセンジャーを利用して被害状況は刻々と伝わった。東京に住む韓国人のほとんどは地震で怖かったというより「日本はすごい!」というメッセージをTwitterに残した。

 津波の被害は甚大だが、地震そのものでは建物が崩れたりする被害が少ないことにまず日本はすごい!とつぶやく。交通が麻痺して家に帰れないかもしれないというのにパニックになるどころかみんながバス停で並び運行再開を待ち、至る所に椅子が置いてあって休めるようにしたりトイレを使えるよう開放したりすることに日本はすごい!とつぶやいている。


 また、日本では英語だけでなくいろんな国の言葉で災害情報を流すボランティアが多いことにも驚いていた。韓国語、中国語、ベトナム語、インドネシア語、ロシア語、ルーマニア語などありとあらゆる言語で災害情報が提供されている。家族と一緒に日本に来たものの、日本語も英語も分からない主婦や子どもにとって、自分の国の言葉で迅速で正確な災害情報を得られることは何よりも心強いだろう。


 地震発生時、ドラマのプロモーションやアルバム発売記念イベントなどで東京を訪れていた韓国の人気芸能人が10人以上もいた。


 その芸能人らはTwitterで、地震が発生したと同時にテキパキと対処するテレビ局やホテルの社員達の姿に感動したとつぶやいている。地震は初めてでおろおろしてしまった韓国からの一行を安全な場所へ避難させてくれ、帰国するまで「私達は地震に慣れているからいいけど、韓国は地震がないから驚いたでしょう?」と逆に励ましてくれたそうだ。


 韓国企業の東北支社に勤める人からは、自宅の被害が大きいにもかかわらず会社に残り取引先の安否を確認したり、工場の生産や物流の調整を行う日本人社員の強い責任感に感動したというつぶやきが続いている。日本人社員らへの恩返しのためにも、被災地にできるだけ多くの物資を送るとしている。東京から東北地方へ商談に来ていた韓国人のために、余震が続く中、ほぼ1日かけて車を運転し東京まで連れてきてくれたという話が新聞で紹介され、どんなに大変なときでも他人を配慮してくれる日本人の心を韓国人は忘れてはならないというコメントが数百件も書き込まれた。


 福島の原子力発電所に関しても、「とても危険な状況だと知っていながらも、黙々と仕事を続ける職員のみなさんはすごい。韓国だったら…」と日本人の強い精神力を称賛する書き込みもどんどん増えている。東日本巨大地震をきっかけに、日本を見直した、日本が好きになったという人も数知れない。


 日本で活躍している韓流スターらの寄付リレーも始まった。ヨン様ことペ・ヨンジュンは日本内閣府傘下政府基金に10億ウォン(約7000万円)を寄付した。茨城空港でイベントを開催したばかりだったチャン・グンソクは日本赤十字に1000万円、リュ・シウォンは2億ウォン(約1400万円)の寄付だけでなくボランティア活動を始めると公表した。ソン・スンホンは韓国で行われている被災地復旧募金に2億ウォンを寄付した。KARAは新アルバムの収益全額を寄付するとしている。韓流スターのファンクラブも賛同し、寄付金を集めている。ネットで行われている募金には半日で3000人近くが参加している。


 サッカーのパク・チソン選手は、「日本で選手生活を送りながら情を感じていた私としては非常に驚き、残念な気持ちでいっぱいです。私たちは人間だからこそ自然の前では無力で仕方ありませんが、人間だからこそ互いに助け合い、頼り合い、力付くことができると思います」と、本人の財団ホームページに直接日本語で応援のメッセージを残している。日本で選手生活をし、それをバネにして韓国代表となりイングランドプレミアリーグにも進出できただけに、力になりたいと思う気持ちも人一倍のようだ。


そんな中、日本の大学生が立ち上げたという「pray for japan」は韓国中を泣かせている。全てのつぶやきが韓国語で翻訳されていて、リツイート(RT)する人は数え切れないほど増えている。

「感動した。日本のためにできることを探そう」、「どんな最悪な状況でも未来を語る日本はやっぱり強い」、「涙が止まらなくなった、胸が痛くて何もできない」、「がんばれ日本。世界中が見守っているから元気出してほしい」、「日本人、カッコよすぎるじゃないか。韓国でこのような災難が起きたとしたらこんな行動はできなかったかも」、「先進国というのは経済規模だけじゃない。こういう精神力を持っているから日本は先進国なんだ」、「行方不明者が多いけど、家族が元気な姿で再会できることを祈ります」、「災難時には我先にとなりやすいのに、他人を配慮する日本人はすごい」、「他人事と思えない。地震のニュースを聞いてから食事をするのも申し訳ない気分になってしまう」などなど。今回の災害は日本だけの苦しみではない、韓国は日本から最も近い隣国だけに他の国よりもっと積極的に支援するべきだと口をそろえている。


 韓国でも韓国語で書いたメッセージが日本人の目に留まるよう自動翻訳を利用して日本語に直し、#prayforjapanと#prayfromkoreaのハッシュタグを付けてつぶやいている。自動翻訳サイトには「史上最悪の地震で苦しんでいる日本の友達に励ましと慰労のメッセージを送りましょう」と書かれてある。






Twitterだけでなく、明洞をはじめソウル市内のあちこちで「Pray for Japan」のメッセージボードが立てられ、市民らがみんな足を止めて日本へのメッセージを書き込んでいる。

 毎週水曜日、ソウルの日本大使館の前で従軍慰安婦被害に抗議するための集会が開かれているが、今週は抗議集会ではなく地震で亡くなった方々を追悼する集いにすることが決まった。集会をまとめている協会は、「東日本巨大地震は日本だけの苦しみではない。この惨事は国境と民族を越え世界みんなの悲しみであり、一人でも多くの人が救助され、一日でも早く復旧されるよう祈っています」と発表した。


 韓国政府はどの国よりも先に救助団を派遣した。医療支援団も非常待機させている。日本から要請があった場合、いつでもすぐ派遣できるよう体制を整えている。社会福祉団体や宗教団体からも65万米ドルを超える寄付金が集まり、被災地の子どものための救護活動を準備している。


 韓国のことわざには十匙一飯(シプシイルバン)という言葉がある。韓国はご飯をスプーンで食べるので、ご飯10スプーンが集まれば一人分のご飯になるという意味を持つ。どんな苦しみもみんなで分け合い助け合えば軽くなる、一人の小さい力でも集まれば大きな力になるという思いが込められている。韓国では十匙一飯で東日本巨大地震の再建を助けたいと願っている。他人に迷惑をかけてはならないという日本式の考えは韓国には通用しない。必要なことがあればなんでも言ってほしい。どんどん要求してほしい。韓国は日本の最も近い隣国だから。チング(友達)だから。



趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2011年3月16日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20110316/1030799/

蒸し返される議論「オンラインゲームをすると暴力的になる?」

韓国の地上波テレビの一つであるMBCが2月13日、オンラインゲームをすると暴力的になるというニュースを報道し、波紋が広がっている。その報道の根拠がむちゃくちゃだったからだ。

 MBCはあるPCバン(ネットカフェ)に隠しカメラを設置し、子どもたちがオンラインゲームに没頭している最中にPCバンの電源を切断した。当然、PCバンにあった全部のパソコンの電源が落ちた。突然の出来事にPCバンにいた子どもたちは怒り出した。隠しカメラに映った「ちょうど勝っていたところなのに!」と苛立つ姿を見せてから、暴力的なゲームをした子どもたちは暴力的な反応を見せた、オンラインゲームユーザーはゲームをしない人より暴力的である、と締めくくった内容だったのだ。


 突然パソコンの電源が落ちて今までやっていた作業が無駄になれば、誰だってムカッとして苛立ってしまうのではないだろうか。それを、オンラインゲームをすると性格が暴力的になると解釈するのは無理がある。


 韓国言論財団の調査によると、地上波テレビは韓国人が最も長時間利用し、信頼する情報源である。ものすごい波及力のあるテレビニュースが、客観的で深層的な調査や実験データもなく、パソコンの電源を突然落としてその反応を見る隠しカメラでオンラインゲームを悪者に仕立てる報道をするとは。


 ニュース直後から視聴者はもちろん、ゲーム専門誌の記者らはMBCの根も葉もないニュースに「あり得ない!」、「これはニュースではなくお笑い」、「MBC記者の暴力性を確かめるため、締め切りが迫った記者室のパソコンの電源を予告なく落としてみましょう」、などと反論を始めた。ゲーム業界によると、オンラインゲームがユーザーを暴力的にするとよく言われるが、因果関係を立証する研究はまだないという。





オンラインゲームNEXONの子ども向けネチケットアプリケーション

人を残忍に殺す内容のオンラインゲームが増えていることや、オンラインゲームのしすぎで現実と仮想の世界を区別できなくなり殺人をしたという事件が毎年発生しているなど、もちろん問題もある。より健全なオンラインゲーム利用というメッセージを伝えたかったようだが、MBCの報道は納得のいく内容ではなかった。

韓国コンテンツ振興院のデータによると、文化コンテンツ輸出額の5割がオンラインゲームであるほど、韓国のオンラインゲームは重要な産業の一つである。2009年の韓国オンラインゲーム輸出額は12億4000万ドル、世界オンラインゲーム市場の約23%を占めている。これは自動車10万5000台、携帯電話端末924万台を輸出したのと同じ規模だという。特にネット利用率が急激に伸びている中国と東南アジア向け輸出が増えた。しかし2009年あたりから、中国が国をあげてオンラインゲームを育成し始めていて輸出も伸びているため、韓国の独走は難しくなりそうだ。

 輸出に依存する韓国経済において、オンラインゲームは重要な産業の一つであることは間違いない。それにもかかわらず、オンラインゲームの悪い面ばかり強調されている。今回のMBCニュースも、ここまでしてオンラインゲームを攻撃するのはなぜ? 裏に何かあるのか? と疑いたくなる。


 何事もいい面もあれば悪い面もある。オンラインゲームは子どもの集中力を高めるという主張もある。オンラインゲーム会社は「ゲーム=悪」というイメージを払拭するため、プロ野球チームも創設しようしとし(前回のコラム参考)、子ども向けネチケット(ネット上のエチケット)アプリケーションや公益キャンペーンにも積極的に参加している。オンラインゲームが韓流ドラマや映画のように韓国経済に貢献するコンテンツ産業として認められる日は来るのだろうか。





ネット上での言葉使いについてゲームのキャラクターが教えてくれる



趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2011年2月17日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20110217/1030283/

韓国オンラインゲーム大手NCSOFTがプロ野球チーム創設へ

韓国プロ野球の9番目の野球チーム創設が確定した。「リネージュ」、「AION」などのオンラインゲームで日本でも有名なNCSOFTが中心にいる。

 韓国野球委員会はその野球チームの優先交渉者にNCSOFTを選定した。NCSOFTのキム・テクジン代表は、「世の中の人を楽しませたい」という夢を持ち、2年ほど前からプロ野球団の創設を準備してきたという。NCSOFTチームの監督は誰になるのか、人気選手をどれだけ集められるか、毎日のようにそれらを予測する書き込みがネットをにぎわせている。新しい野球チームは今すぐシーズンに参加できるわけではなく、2013年または2014年からリーグに参加することになる。


 プロ野球団を創設するためには100億ウォン(約8億円)の保証金と50億ウォン(約4億円)の加入費、選手確保のための資金200億ウォン(約16億円)という大金が必要であるが、NCSOFTにとってはこれぐらい問題にならない。1998年始まったリネージュが世界で大ヒットし、2009年には売り上げ6347億ウォン(約508億)、営業利益2338億ウォン(約187億円)、2010年は売り上げ7000億ウォン(約560億円)、営業利益2500億ウォン(約200億円)を突破している。オンラインゲームは開発費用はかかるが、サービス開始後は毎月利用料が入り特に多額の資金を必要としないので、利益率が非常に高い。韓国野球委員会が求める野球チーム創設の条件は負債比率200%以下、当期純利益1000億ウォンなどがあり、NCSOFTはすべてその条件をクリアしている。








NCSOFTは日本でも人気の高いリネージュ、AIONなどのオンラインゲームをサービスしているベンチャー老舗。画像はリネージュのWebサイト

オンラインゲーム業界はNCSOFTがプロ野球チームを持つことで、「ゲームのしすぎで過労死」、「暴力的なゲームが多く青少年に悪影響を与える」、「IDハッキング、ゲームアイテムの現金売買で射幸心をあおる」といったマイナスイメージ、社会的偏見を払拭できるチャンスかもしれないと期待する声が高い。NCSOFTがプロ野球チームを創設するからには、ITを使いいろんな角度から野球を楽しませてくれるのではないかという声も高い。

 現在、プロ野球チームはサムスン、ロッテ、LG、SK、DOOSAN、HANWHAなど資産総額が何兆ウォン規模の財閥系大手企業が球団主となっている。韓国では、オンラインゲームやIT企業がプロゲーマーを集めたチームを創設したことはあっても、プロスポーツチームの球団主になるのはこれが初めてのこと。野球チーム運営にはかなりの資金が必要であるが、NCSOFTなら問題ないと見られている。新しい野球チームができることで、WBCやオリンピックで盛り上がった野球ブームに一役買いそうだ。


 韓国のプロ野球人気は年々落ち込むばかり。1982年、プロ野球が始まったばかりのころは、子どもから大人まで野球が大好きで、野球場はいつも超満員だった。今ではサムスンやロッテといった一部の野球チームの試合だけそこそこ人が入るぐらいで、ファン離れが深刻な問題になっていた。NCSOFTが野球チームを持つことで、家でも外でも、入試勉強の合間の娯楽といえばオンラインゲームばかりの小中高生のファンが野球に興味を持ち始め、野球場に足を運んでくれるのではないだろうか。期待したい。



趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2011年2月10日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20110210/1030141/