第3回 : 幼児の6割以上がインターネットを利用!ブロードバンド先進国―韓国

第3回 趙章恩(チョウ チャンウン)


幼児の6割以上がインターネットを利用!ブロードバンド先進国―韓国


主要先進国の景気回復が遅れるなか、アジア各国の成長は止まりません。中国や韓国、インドなど、まだまだ元気な国が多いのが実情です。知っているようで知らないアジアのコンテンツビジネス事情はどうなっているのでしょうか。第3回は、ブロードバンドが普及している韓国で人気の高いコンテンツを紹介します。


ブロードバンド革命で10代~30代の99%がネット利用者に


韓国では目が覚めた途端にスマートフォンから自分のBlogやTwitterを確認し、地下鉄の駅で配られる無料新聞に目を通して、会社に着いたら気になるニュースをポータルサイトからじっくり検索することから1日が始まります。


ニュースは新聞社のサイトではなく「NAVER.com」「DAUM.net」「NATE.com」の3大ポータルサイトから利用するのが定番となっています。ニュースをBlogやTwitterに転送するのも楽ですし、ほかのユーザーが記事の下に書きこんだ「デッグル」(コメント)が面白いからです。


インターネット実名制度により、会員登録したりコメントを書き込んだりするためには出生申告の時に付与される住民登録番号で個人認証を行わないといけません。誰が何をしたのか記録が残りますが、あまり気にすることなくみんな自由に書き込んでいます。一時期、実名制度に反対して海外サイトを利用するユーザーもいましたが、韓国も中国同様、Yahoo!やGoogleといった外資系サイトの利用率がとても低いのが特徴です。


1998年の経済危機から立ち直るため国を挙げて取り組んだブロードバンド革命により、世界のどの国よりもインターネットが早く普及した韓国。韓国インターネット振興院の「2009インターネット利用実態調査」によると、10~30代の99%がインターネット利用者で、国民の98%は携帯電話を持っています。3~5歳幼児のインターネット利用率も61.8%に至ります。子供の絵本や童謡も、紙やCDではなくパソコンとネットを経由して利用されているほどです。


生活のほぼすべてが情報化され、世界のテストベッドといわれるほど電子政府や医療情報化、デジタル教科書などあらゆる分野で最先端のサービスが提供されている韓国では、コンテンツサービスも世界に先駆けてブームになったものがたくさんあります.






韓国で人気のオンラインゲーム「アイオン」のプレイに最適化された高性能ノートパソコンまで登場した


ブロードバンドの普及をけん引したのは対戦型オンラインゲームでした。ネットワークを経由して見ず知らずのユーザーと対戦できる戦争ゲーム「スタークラフト」が大ヒットし、このゲームをより速い速度で楽しむためPCバン(ネットカフェ)に入り浸り、超高速インターネット加入者も急増したものです。


オンラインゲームブームは、ゲームの中に登場するアイテムを現金で売買できる仲介サイトまで登場させました。時間と手間を掛けてキャラクターを育てるより、早く魔法のアイテムを手に入れて勝ちたいというユーザーが増えてしまったからです。アイテム獲得を目的に個人情報を盗んで会員登録する犯罪グループまで登場し問題になったものです。またゲーム中毒も社会問題になり、今では政府が中毒予防教室を運営しているほどです。


動画サービスのネット配信も早く、1998年には既にテレビ局のドラマやバラエティー番組がネットに公開され、決まった時間にテレビの前に座らなくても、好きな番組を好きな時に見られるようになりました。


ドラマのNG場面や出演者のインタビューなどのおまけ動画も登場し、今テレビで流れている画面をそのままテレビ局のホームページから見られる「Onair」サービスもあります。無料だった「ダシボギ」(再放送)サービスは、2001年あたりから一話100円ほどに有料化されました。携帯電話を利用した小額決済が広く普及したことから、デジタルコンテンツの有料化も早く定着しました。2004年以降IPTV(ブロードバンドを利用してコンテンツを配信するサービス)が普及してからは、ダシボギはパソコンよりテレビとリモコンで利用するコンテンツとなりました。


次回は2010年韓国で話題のあのコンテンツをご紹介します。


By- 趙 章恩(チョウ チャンウン)

@nifty
ビジネス

Original Link

http://business.nifty.com/articles/asia/100706/








韓国デジタル教科書  デジタル教科書導入とビジネスチャンス


KDDI総 研特別研究員 趙章恩 チョウさん講演します。
韓国のデジタル教科書に関する全て??
何がどうなっていて、これからどうなるのか、デジタル教科書をめぐるビジネスチャンスについて、韓国を事例にお話しします。
有料セミナーなのでお気軽に来てくださいとは言えないのですが。。。お待ちしてます。


http://www.ssk21.co.jp/seminar/S_10279.html


韓国デジタル教科書 最新ルポ
デジタル教科書導入とビジネスチャンス
~ソリューションビジネスはどうなる?~


セミナー要項
開催日時 2010年7月23日(金)午後2時30分~午後5時
会場 TKP品川カンファレンスセンター
東京都港区高輪3-13-1 TAKANAWA COURT3F
(03)5447-1201
受講料 1名につき 31,290円(税込)
備考:


重点講義内容
ITジャーナリスト
(株)KDDI総研 特別研究員
趙 章恩 (チョウ チャンウン)氏


 韓国では1997年よりデジタル教科書の企画が始まり、2002年より制度改善をはじめ開発に着手しました。2006年より全国の小学校でデジタル教科書の実証実験が始まり、2011年より小中学校でのデジタル教科書使用義務化が決定しています。
 デジタル教科書を導入するためには、教科書の電子化だけでなく、デジタル教科書向け端末、教室と学校のインフラや電子黒板などデジタル教科書で学習するためのデジタル環境、検索や参考資料として使える教育情報DBとの連動、教育行政のデジタル化、デジタル教科書を上手く活用できる教師の養成、保護者の理解などバッググラウンドを整えることも重要でした。韓国ではさらに、4Gモバイル環境でのスマートフォンやipadのようなタブレットパソコンを使ったデジタル教科書、リナックス基盤や現実拡張(AR)の教科書、デジタル教科書と連動する各種3D学習コンテンツの開発も進んでいます。
 これからデジタル教科書を導入する日本はどのようなことに気をつけるべきなのか、ビジネスチャンスはどこにあるのか、韓国の事例から学ぶべきことはたくさんあります。本講演では、韓国のデジタル教科書実証実験について、学校と担当教師、関連企業への取材による最新事情を写真で分かりやすく解説します。


1.2010年韓国のICT現況
2.デジタル教科書とは何か
3.韓国デジタル教科書の特徴
  端末、OS、プラットフォーム、UI、コンテンツ、学習方法
4.韓国デジタル教室
  ネットワーク、端末、電子黒板、
  デジタル教科書のための教育環境デジタル化現況
5.デジタル教科書を導入するまでの過程
  教育科学技術部(韓国文部省)の政策、教育情報・行政システム改善、
  教師・保護者対策
6.デジタル教科書授業様子・事例紹介
  学校内、学校外
7.デジタル教科書の効果
8.デジタル教科書関連企業戦略
9.2011年デジタル教科書義務化に向けた課題
10.デジタル教科書に最適な端末とは?
11.デジタル教科書と教育情報化の未来
   4G、AR、クラウドコンピューティング、端末ラインアップなど
12.質疑応答


※日本語での講演となります。


講師プロフィール
趙 章恩(チョウ チャンウン)氏
韓国ソウル生まれ。日本で高校を卒業、韓国に帰国し梨花女子大学卒業。東京大学大学院学際情報学府博士課程、東京大学大学院学際情報学修士。KDDI総研特別研究員、NPOアジアITビジネス研究会顧問。韓日政府機関の委託調査(デジタルコンテンツ動向・電子政府動向・IT政策動向)、韓国IT視察コーディネートを行っている「J&J NETWORK」の共同代表。2000年4月創立された、韓日インターネットビジネス実務者団体「KJIBC(Korea Japan Internet Business Community)」会長。韓国IT情報専門家として、数々の講演やセミナー、フォーラムに講師として参加。日刊紙や雑誌の寄稿も多く、「NIKKEI NET(日経新聞)」や「日経パソコン(日経BP)」、「日経エレクトロニクス」、「BCN」、「夕刊フジ」、「西日本新聞」、「デジタルコンテンツ白書」、韓国の「中央日報」や月刊誌「Media Future」等に寄稿。韓国・アジアのIT事情を、日本と比較しながら分かりやすく提供している。


【連載コラム】
日経新聞 NIKKEI NET IT先進国韓国の素顔
 http://it.nikkei.co.jp/internet/column/korea.aspx
日経PCオンライン Korea On The Web
http://pc.nikkeibp.co.jp/pc/column/cho/index.html

第2回: 世界のゲーム市場の5割が中国製に!?中国のSNS・チャット・ゲーム事情

主要先進国の景気回復が遅れるなか、アジア各国の成長は止まりません。中国や韓国、インドなど、まだまだ元気な国が多いのが実情です。知っているようで知らないアジアのコンテンツビジネス事情はどうなっているのでしょうか。第2回は、SNSやゲームなど中国で人気の高いコンテンツを紹介します。


4億人がチャットで人脈づくり


中国インターネット協会Internet Society of China(ISC)が集計しているWEBサイトアクセスランキングを見ると、圧倒的1位はポータルサイトの「百度(Baidu.com)」です。検索を中心にニュース、音楽、動画、コミュニティー、ユーザー同士の質問と答えで成り立つ知恵検索など、一通りのサービスを提供しています。


2位は、チャット・メッセンジャーサービスが目玉のポータルサイト「qqメッセンジャー(qq.com)」です。中国ネットユーザーの約97%が利用しているといわれています。一人のユーザーが複数のIDを登録できるといっても、4億IDを突破したというのはほかの国では考えられないような規模ではないでしょうか。


「関係」がものをいう国だけに、人脈を管理できるSNSやチャット・メッセンジャーの人気は高く、大学生専用や地域別、年齢別など、細分化されたサイトも人気が高くなっています。


qqメッセンジャーは海外に住む中国人もよく利用していて、中華コミュニティーの結束力を高める役割も果たしています。企業の顧客センターもIDを持っていて、チャット方式で苦情処理を行っているほどです。


中国からは海外のソーシャルネットワークサイトにはアクセスできないよう遮断されているため、日本で人気のTwitterは利用したくてもできません。しかしあの手この手を使って“つぶやく”人が増えていて、日本の女優のTwitterアカウントをフォローする中国ユーザーが一万人を超えた、なんていうことが話題になったりもしました。中国側が提供する“つぶやく”サイトとしては、共産党の機関紙である人民日報の「t.people.com.cn」があり、政治家も参加しています。









中国で第2位の人気を誇る「qqメッセンジャー」。
携帯電話からも利用でき、中国の若者の間でなくてはならないコミュニケーション手段となっている




中国政府の後押しで急成長するゲーム市場


3位は中国だけでなく、中華圏ユーザーをターゲットにしているポータルサイト「Sina.com.cn」です。ニュースやブログ、検索に力を入れていて、中国、香港、台湾、米国向けにサイトを分けて、それぞれに特化した初期画面を提供しています。


アクセスランキングでは6位ですが、ここ数年人気なのが動画投稿サイトの「youku.com」です。違法なものもありますが、中国で人気の高い韓国や日本のドラマ、映画、バラエティー番組の動画が見られることからアクセスが急増しています。百度をはじめ、ほかのポータルサイトも動画サービスに力を入れているため、合法な動画を増やすための競争が激化しています。youku.comは韓国の民放であるソウル放送と提携し、2010年から3年間200本の韓流ドラマをストリーミングサービスする予定です。インターネット専用ドラマの制作にも乗り出すようです。


中国で人気が高いコンテンツといえば、やはりオンラインゲームでしょう。中国は政府の文化産業支援政策に伴い、ゲーム市場に集中的な投資が行われています。12年には世界のゲーム市場の5割を占めるだろうと予測されているほどです。ユーザー数で見ると、韓国から輸入された対戦型オンラインRPGが主流ですが、輸入したゲームを中国語でサービスするだけにとどまらず、中国独自のゲーム制作にも力を入れるようになりました。


そのほかインターネットショッピング市場も毎年2倍近く増加していて、09年には約4兆円の規模に達しています。最も人気なのは中国のeBayとも呼ばれる「taobao.com」で、ユーザー数は約1億5000万人、日本の人口よりも多いではありませんか!


10年6月からは日本のYahoo!と提携し、日中でオークションに出品したり落札できたり、海外発送もできるようにする予定です。これをきっかけに日中のインターネットコンテンツサービスの相互進出も期待されているのです。


第3回は、韓国のコンテンツビジネス事情を紹介します。

By- 趙 章恩(チョウ チャンウン)

@nifty
ビジネス

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http://business.nifty.com/articles/asia/100615/

韓国デジタル教科書  デジタル教科書導入とビジネスチャンス


KDDI総 研特別研究員 趙章恩 チョウさん講演します。
韓国のデジタル教科書に関する全て??
何がどうなっていて、これからどうなるのか、デジタル教科書をめぐるビジネスチャンスについて、韓国を事例にお話しします。
有料セミナーなのでお気軽に来てくださいとは言えないのですが。。。お待ちしてます。


http://www.ssk21.co.jp/seminar/S_10279.html


韓国デジタル教科書 最新ルポ
デジタル教科書導入とビジネスチャンス
~ソリューションビジネスはどうなる?~


セミナー要項
開催日時 2010年7月23日(金)午後2時30分~午後5時
会場 TKP品川カンファレンスセンター
東京都港区高輪3-13-1 TAKANAWA COURT3F
(03)5447-1201
受講料 1名につき 31,290円(税込)
備考:


重点講義内容
ITジャーナリスト
(株)KDDI総研 特別研究員
趙 章恩 (チョウ チャンウン)氏


 韓国では1997年よりデジタル教科書の企画が始まり、2002年より制度改善をはじめ開発に着手しました。2006年より全国の小学校でデジタル教科書の実証実験が始まり、2011年より小中学校でのデジタル教科書使用義務化が決定しています。
 デジタル教科書を導入するためには、教科書の電子化だけでなく、デジタル教科書向け端末、教室と学校のインフラや電子黒板などデジタル教科書で学習するためのデジタル環境、検索や参考資料として使える教育情報DBとの連動、教育行政のデジタル化、デジタル教科書を上手く活用できる教師の養成、保護者の理解などバッググラウンドを整えることも重要でした。韓国ではさらに、4Gモバイル環境でのスマートフォンやipadのようなタブレットパソコンを使ったデジタル教科書、リナックス基盤や現実拡張(AR)の教科書、デジタル教科書と連動する各種3D学習コンテンツの開発も進んでいます。
 これからデジタル教科書を導入する日本はどのようなことに気をつけるべきなのか、ビジネスチャンスはどこにあるのか、韓国の事例から学ぶべきことはたくさんあります。本講演では、韓国のデジタル教科書実証実験について、学校と担当教師、関連企業への取材による最新事情を写真で分かりやすく解説します。


1.2010年韓国のICT現況
2.デジタル教科書とは何か
3.韓国デジタル教科書の特徴
  端末、OS、プラットフォーム、UI、コンテンツ、学習方法
4.韓国デジタル教室
  ネットワーク、端末、電子黒板、
  デジタル教科書のための教育環境デジタル化現況
5.デジタル教科書を導入するまでの過程
  教育科学技術部(韓国文部省)の政策、教育情報・行政システム改善、
  教師・保護者対策
6.デジタル教科書授業様子・事例紹介
  学校内、学校外
7.デジタル教科書の効果
8.デジタル教科書関連企業戦略
9.2011年デジタル教科書義務化に向けた課題
10.デジタル教科書に最適な端末とは?
11.デジタル教科書と教育情報化の未来
   4G、AR、クラウドコンピューティング、端末ラインアップなど
12.質疑応答


※日本語での講演となります。


講師プロフィール
趙 章恩(チョウ チャンウン)氏
韓国ソウル生まれ。日本で高校を卒業、韓国に帰国し梨花女子大学卒業。東京大学大学院学際情報学府博士課程、東京大学大学院学際情報学修士。KDDI総研特別研究員、NPOアジアITビジネス研究会顧問。韓日政府機関の委託調査(デジタルコンテンツ動向・電子政府動向・IT政策動向)、韓国IT視察コーディネートを行っている「J&J NETWORK」の共同代表。2000年4月創立された、韓日インターネットビジネス実務者団体「KJIBC(Korea Japan Internet Business Community)」会長。韓国IT情報専門家として、数々の講演やセミナー、フォーラムに講師として参加。日刊紙や雑誌の寄稿も多く、「NIKKEI NET(日経新聞)」や「日経パソコン(日経BP)」、「日経エレクトロニクス」、「BCN」、「夕刊フジ」、「西日本新聞」、「デジタルコンテンツ白書」、韓国の「中央日報」や月刊誌「Media Future」等に寄稿。韓国・アジアのIT事情を、日本と比較しながら分かりやすく提供している。


【連載コラム】
日経新聞 NIKKEI NET IT先進国韓国の素顔 http://it.nikkei.co.jp/internet/column/korea.aspx
日経PCオンライン Korea On The Web http://pc.nikkeibp.co.jp/pc/column/cho/index.html

つぶやき効果、いつまで? 政府も国民もTwitterにはまりすぎ

韓国がワールドカップ2010のベスト16に進出した。朝3時からの試合中継だというのに街角応援の熱気は相変わらずすごかった。次の日は学生も先生も会社員も主婦も、みんな朦朧としながらサッカーの話で盛り上がっていた。何かに夢中になると瞬時に、一気に盛り上がる熱血民族らしい光景としか言いようがない。

 ベスト16進出をさらに盛り上げてくれたのはブブゼラではなくTwitter。南アフリカ現地入りしたサポーターから街角応援している人、海外に住んでいる留学生、会社で残業している人、有名芸能人や政治家に至るまで、全世界の韓国人がTwitterを通じて一心に応援した。


 パク・チソンをはじめ代表選手らも、サムスンが運営している2010ワールドカップキャンペーンTwitterに「ベスト16の奇跡のために、必ず勝利します」と意気込みをつぶやいていた。試合を見ながら、応援しながら、つぶやきながら、フォローしながら、夜食を食べながら、本当に忙しい観戦となった。街角応援に参加できなくても、Twitterのつぶやきと写真を見ているだけで一緒に熱くなれる。マスコミのニュースより、スマートフォンを使ってリアルタイムで伝わる生々しいつぶやきの方が断然効果があった。そのせいか、スポーツ新聞社はこぞってTwitterのアカウントを持つようになっている。




サムスンのワールドカップキャンペーンTwitterにはパク・チソン選手もつぶやいている


韓国のTwitter利用者は約60万人、Twitterを訪問した人は5月だけで281万人といわれている。実名制のない海外サイトなので正確な利用者数は把握できていないが、スマートフォン普及との相乗効果で、実際には全国民がTwitterにはまっているような盛り上がりようである。


 韓国は1998年からブロードバンドが広く普及し始めた。ネット普及が7割を超えたあたりから、海外のサイトではなく国内企業のサイトが根強く人気を集めてきた。GoogleよりNAVER、FacebookよりもCyworldと、海外サイトは韓国では全くといっていいほどシェアが取れなかった。なのに、Twitterだけは例外である。同じようなつぶやきサイトは韓国にもたくさんある。しかしユーザーのほとんどはTwitterに集まる。既にみんながそこにいるからだ。


 手術中に輸血する血液が足りなくなった患者のために、家族が助けを求めてTwitterでつぶやいたところ、見ず知らずの人が次から次へと献血にやってきたり、白血病の子供がある俳優のファンだとつぶやいたら、1日でその俳優から連絡が来たり、「友達の友達はみんな友達」という公式がTwitterの中で成立している。

Twitterは6月2日に行われた地方選挙でも効果を発揮した。Twitterを利用した選挙運動は禁止されていたが、20代を中心に投票しに行く姿を撮影した写真をTwitterに載せて「投票認証」するのが流行り、投票率がなんと歴代2位の54.5%を記録したのだ。


 この後から政治家はもちろん、大統領官邸やソウル市など中央政府機関もTwitterに公式アカウントを持つようになった。


 ソウル市は市と市民が気軽に意見を言い合える場にしたいとし、文化、交通、生活情報など9つのIDに分けてTwitterを運営している。日本では行政が地域SNSを立ち上げて住民の意見をくみ取ろうとするが結局人が集まらず失敗したという話をよく聞く。それに比べ韓国の中央政府や行政機関は、時代の流れを上手くキャッチして、お金をかけず行政と国民が近づくきっかけを作っているようにみえる。国民ともっと気軽に意見を言い合える関係にしたいと、大統領官邸は、Twitterをはじめ韓国企業が運営する、シンプルで誰でもすぐ利用できるつぶやきサイトに参加している。こういうつぶやきサイトを利用して、ソウル市も、市民と気軽に長期的にコミュニケーションするのを目標としている。


 当然のことながら、企業はTwitter活用に積極的だ。ブログの対応に遅れて辛酸をなめた大手企業ほどTwitterに熱を上げる傾向があるようにみえる。去年までブログを中心に行われていた体験モニターや懸賞イベントが、今はほとんどがTwitterに移行し、スマートフォンからリアルタイムで参加することを前提にしている。Twitterはブログよりも口コミが広がるのが速く、携帯電話のショートメッセージやメッセンジャーよりも広範囲に伝わる効果があるからだ。


 それにしてもブログからTwitterへ移り変わるのが早すぎて、ついていけそうにない。何か一つブームになるとあっという間に燃え上がり、またあっという間に炎が消える。熱しやすくて冷めやすい韓国で、このTwitterブームも寿命がそんな長くはないと思うが、今のところはとにかくすごいとしかいいようがない。


 大手企業の社長も自分の日常をつぶやき、新製品の発表もTwitter中心だ。フォロワーと直接会って食事をしたりする政治家や芸能人もいる。何でもかんでもTwitterでつぶやくのがかっこよくて、ちょっとしたつぶやきに敏感に、いや過剰に反応する政府と企業の姿に「やりすぎじゃない?」と感じるのは私だけのようだ。


趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年6月24日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20100623/1025698/



iPhone 4のデザインは韓国の“あるもの”のパクり?

ワールドカップで盛り上がっている韓国では、雨にもかかわらず12日のギリシャ戦ではソウル市役所前の広場に4万8000人、江南のCOEX展示場周辺に5万人、そのほか主な駅前広場に数千人ずつ集まった。ソウルだけでも20万人以上の人が街角応援に参加。家族や友達を呼んで家で応援する人も多く、ゴールの度にベランダ越しにあちこちの家から歓声が聞こえるので、サッカーに興味がない人でも気になってしょうがないだろう。韓国では夜食として出前でビールとフライドチキン1羽を注文することが多い。韓国戦のある日は注文が殺到して、何軒もお店に電話しても断られてしまったというTwitterのつぶやきも多かった。



「えごまの缶詰」の会社のWebサイト。よく見ると、確かに缶の形がiPhoneに似ているような…


つぶやき、といえば、最近ワールドカップに負けないほどネタになっているのがiPhone 4。予約開始で日本でも話題が絶えないと思う。韓国では7月に発売予定である。それでもアメリカや日本に住む友達に頼んで予約を入れるほど、1日でも早くと端末を手にしたアーリーアダプターでここはあふれている。

 そんな中、韓国ではiPhone 4と並んである商品が目下キーワード検索上位を占めている。それはなんと「えごまの缶詰」。えごまの葉っぱを一枚一枚蒸して、唐辛子とにんにく、ねぎ、醤油などに漬け込んだえごまキムチの缶詰である。焼肉を食べるときサンチュと一緒に出てくるあのえごま!日本人観光客のお土産としても人気があるあのえごま!なぜえごまの缶詰とiPhone 4がセットでキーワード検索上位を占めているのだろうか。


 6月9日、「iPhone 4のデザインって、えごまの缶詰に似てない?」というTwitterのつぶやきが発端だ。みんなが次々に「そういえば、サイズといい形といい似ている」、「そういえば、グリップ感が似てそう」などと盛り上がり、それがあちこちのブログやソーシャルネットワークを経由して一気に広まった。比較写真が登場し、スティーブン・ジョブスがえごまの缶詰を誇らしく手にしている合成写真まで出回り、愉快な騒動に発展したのだ。


 通常、缶詰といえばシーチキンのように丸いか、スパムのように四角で大きいかのどっちか。えごまの缶詰は縦に長い四角で薄い。iPhone 4と並べた写真をみるとなんとなくそれっぽいのだ。その調子で比べるなら、さばの味噌煮とか、さんまの蒲焼とか、100円ショップで売っているようなおかずの缶詰とも似ているけど。


 面白いのはここから。えごまの缶詰を製造している食品会社が喜んで、11日、早速イベントを始めたのだ。えごまの缶詰と一緒に撮った写真を自社のホームページに投稿すると、抽選で一人にiPhone 4を、100人に自社の缶詰セットをプレゼントする。普通企業のイベントは企画から実行までかなりの時間をかけて仕込むものだが、さすが「パリパリ(早く早く)」が身についた韓国企業。ネットの盛り上がりが頂点に達しているところ、イベントを仕掛けたのだ。食品会社の人は、「えごまの缶詰なんてキャンプか登山用、留学生や海外観光客がお手ごろな韓国の味を求めて買っていくぐらいだったのが、ここまで注目されてうれしい!」と素直に喜んでいる。


 ネットとリアルの連携が密接なのも韓国らしいが、フィーバーをすかさず自分のものにしてしまう食品会社のしたたかさもたまげたものだ。


趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年6月18日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20100617/1025568/

熱気ムンムン、W杯もスマートフォンもヒートアップする韓国

「Again2002!」韓国は今年もワールドカップの街角応援準備で大忙し。ソウルではどこを歩いても赤い悪魔(公式サポーター)のTシャツを着た人や、ワールドカップを応援する企業広告に出会う。赤いTシャツや国旗をリフォームした若いお姉さん達のへそ出しルックも、ワールドカップ期間中はあまりとがめられない。企業が運営する真っ赤な応援ブースが街のあちこちに作られ、代表選手らへのメッセージで埋め尽くされている。携帯キャリアによる独自の動画サービスとして、携帯電話で見られる試合中継も決まり、後は開幕を待つのみといったところである。

 しかし、今年の夏はワールドカップに負けず熱く盛り上がっていることがある。それはスマートフォンとiPad向けのアプリケーション。「アプリ長者」の神話はまだ続いていて、学生も社会人も、話しのネタは「どこそこのアプリケーションがもうかっているらしい」、「どこそこの会社がアプリケーション市場に新しく参入した」ということばかり。スマートフォンといううずまきに全国民が巻き込まれていて、それはもう、とりつかれたような盛り上がりなのだ。ワールドカップの応援だって、スマートフォンのアプリとして応援歌が登録され、Twitterやマイクロブログを使って街角応援の日程を決めている。



スマートフォンのワールドカップ応援アプリ

 スマートフォンが生活に本格的に根付き始めた今日この頃、キャリアが中心となってぽつぽつ開催されていたアプリケーション制作教育を政府機関がまとめて無料で実施し、創作を支援するという制度が始まった。中小企業庁が音頭を取ってキャリアとベンダー、大学を集めて「アプリケーション創作支援協議会」を結成し、キャリアや携帯電話端末会社が個別に実施していた開発者向け教育をまとめて全国の大学で行うことにしたのだ(大学10校と産業振興院合わせて11機関がアプリケーション創作センターに指定された)。ここにはなんと“韓国の東大”、国立ソウル大学も含まれている。


 Android、iPhone OS、Windows Mobileだけでなく、サムスンのOSであるBADA向けアプリケーション開発教育も実施される。第1回には700人を募集し、基本教育120時間、OS別に分けて15時間の講義を行う。誰でも参加可能というわけではなく、C言語やJavaなどのプログラミングをある程度は知っている人が対象となる。地域住民が参加する「アプリケーション創作サークル」の育成も支援するというから面白い。


その昔、90年代後半のIMF経済危機でリストラされた人たちがPCバン(ネットカフェ)をオープンしてブロードバンドとオンラインゲーム普及に大きく貢献したように、今度は就職難の若い人達を個人のアプリケーションデベロッパーに育てて、スマートフォンやiPadのようなタブレットPC、WebTVなどの端末市場はもちろん、モバイル市場活性化と競争力を強化するのが狙い。


 また、ソウル市も通信事業最大手のKTと提携し、ソウル市が持つ公共DBを応用して誰もがアプリケーションを開発できるよう支援している。このアプリケーションさえあればソウルでの生活が楽しくなるといった内容のPRもしていて、優秀なアプリケーションを積極的に支援していくとしている。ソウル市の3カ所にアプリケーション開発センターをオープンし、OS別スマートフォンやテストサーバー、Appleのノートパソコンを利用できるようにするという。海外のアプリケーションストアに登録する前のテストも行い、海外進出もサポートしてくれるという。


 中央省庁の文化体育観光部と行政安全部は6月14日より政府主催のアプリケーション公募を始める。公共DBを応用したアプリケーションも審査対象となるため、自治体にも公共DBをアプリケーション向けに公開するよう呼びかけている。プログラミングは分からないけど、こういうアプリケーションがあるといいといった企画だけの応募も受け付けているので、主婦や中高生の参加も期待される。賞金総額は日本円で1000万円ほど、ホームページ(www.koreaapps.or.kr)で公開して宣伝もしてくれる。





アプリ公募を受け付ける政府の
Webサイト

政府主導でアプリケーション開発を支援し、世界を舞台にしたアプリケーション販売で利益を上げられるようにすれば、韓国のモバイル競争力も高まり同時に就職難も解決!めでたしめでたしというわけだが、そう上手くいくものかな? アプリケーションって技術よりもアイデア勝負だったりするので、プログラミングの腕よりは「ひらめき」の方が大事なのではないだろうか。そういう「ひらめき」って大学の無料講座を履修しただけでぽんぽんわき出るようなものでもないし、結局予算の無駄使いになったりして。


 筆者の懸念をよそに、デベロッパーを目指す大学生の間では「Appleのパソコンを持っていないとApple向けのアプリ開発は難しいので高いパソコンを使えるようにしてくれるのは助かる」、「サムスンのBADA向けにもApple向けにもアプリを開発できるように学校の中で教えてくれるので時間の節約になる」と好評のようだ。


 ワールドカップの応援にアプリケーションブームに、韓国の6月は熱気ムンムンです。

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年6月10日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20100609/1025444/

コンパニオンもアピール! 韓国最大のIT展示会、3Dとスマートフォンが目白押し

2010年5月25日から28日にかけて、韓国最大規模のIT展示会であるWorld IT Show2010がソウルで開催された。18万人が訪れた今年のテーマは「Feel IT SEE the Next」。サムスン、LG、KT、SKテレコムなど、韓国の主な情報通信企業が一堂に集まり、新製品やサービスを紹介した。

 今年はなんといっても3Dとスマートフォンが主役で、どのブースに行っても3Dテレビとスマートフォン、それに合わせたコンテンツとサービスが展示されていたほどである。


 普通の絵本に見えるのに、スマートフォンのカメラをかざすと3Dのキャラクターが登場して絵本の一場面を演じるものや、3Dで臨場感あふれるオンラインゲームとノートパソコンを展示したコーナーは人だかりで近寄れないほどだった。



3Dテレビのタワーがぐるぐる回っていたサムスンのブース


 サムスンは3Dキューブといって、55インチの3Dテレビを9台ずつ四角いタワーのように積み上げ、360度ぐるぐる回転させていた。4つの面からはそれぞれ違う3D映像を流していた。専用のメガネをかけて口をぽかんと開けて3Dテレビに夢中になっている観覧客を見るのも面白かった。会場にはメガネなしでも楽しめる3Dテレビもあった。これからはテレビに限らず、パソコンやスマートフォン、携帯電話も3Dコンテンツで勝負することになりそうだ。Googleテレビに負けない機能てんこ盛りのスマートテレビも展示していた。IPTV、3DTV、スマートフォン、すべてのデバイスから利用できるようにするというアプリケーションストア「サムスンAPPS」にも力を入れている様子。


 韓国の3Dテレビ技術は世界最強と言われているそうで、グーグルがテレビのエンジニア探しにWIS2010にやってきたことも話題になった。


 サムスンが独自に開発したOS「BADA」を搭載したスマートフォン「WAVE」や、日本でもNTTドコモから発売される予定の「ギャラクシーS」も展示され、大変なにぎわいを見せていた。サムスンもLGも「打倒iPhone!」とばかりに強烈なパワーで次々にスマートフォンを発売しているが、訪れた客の多くは「やっぱりiPhoneの方が使いやすいかも」という微妙な反応を見せていた。


韓国の3大IT輸出品目は半導体、ディスプレイ、携帯電話端末である。ところが、韓国の経済産業省にあたる知識経済部の「2010年5月輸出入動向」によると、iPhoneが発売されてから韓国産端末の輸出は前年同期比で29.2%減り、iPhoneをはじめ海外メーカーの端末輸入が128%増と大きく伸びている。韓国産の携帯電話はまだフィーチャーフォンが中心なので、世界の動向からしてこれからスマートフォンの割合を伸ばさないと収益は落ちるしかない。そのためどのメーカーもスマートフォン一色、必死になっているのだ。


 最大キャリアのSKテレコムはAndroidを搭載したスマートフォンを前面に出し、KTのiPhoneと競争。緑色をした巨大なアンドロイドのキャラクター人形に真っ赤なワールドカップのTシャツを着せてアピールしていたものの、インパクトがありすぎてちょっと不気味だった。SKテレコムは「アルファライジング」といって、キャリアでありながらも通信以外の分野で収益を上げるとしており、アプリケーションやスマートフォンを利用したモバイルオフィスなどB2Bにも力を入れている。


 KTはあえてiPhoneよりも、モバイルインターネットを使った多様なサービスを宣伝する展示にしていた。ICカードを利用する子供向け小型教育ロボットも注目を浴びた。ICチップが内蔵された絵本を目の前にかざすと読みあげてくれる。お母さんと書かれたICカードをロボットにかざすと、登録されたお母さんの携帯電話につながりロボットを利用してテレビ電話を利用できる。ロボットは防犯カメラ機能もあり、携帯電話から遠隔操作もできるので、共働きの親が一人で家にいる子供の様子を見守ることもできる。最近力を入れている電子ブックやIPTV、地域連動生活情報サービス、Wibroを無線LANの信号に変えてくれるEggも展示された。でもやっぱり一番人が集まったのはiPhoneを使って演奏するバンドが登場した時だったのを見ると、まだまだ「iPhoneショック」は続いているようだ。


 2010年はワールドカップが開催される年だけに、公式サポーターである「赤い悪魔」のTシャツを着た企業のキャラクターやイベントコンパニオンのお姉さん達が目立っていた。日本では展示会のイベントコンパニオンといえば女性というイメージが強く、展示会に出品された製品ではなく彼女たちの写真を撮りまくっている男性をよく見かける。一方、ここWIS2010ではモデルのようなイケメンが新機種のスマートフォンやノートパソコンを説明してくれるブースも登場した。


 IT展示会といっても市内の繁華街で開催されるのでアクセスがいい。そのせいか、高校生や大学生の団体、家族連れ、ランチタイムを利用して遊びに来た感じのOLや買い物途中の主婦など、入場者の年齢も職業も幅広い。女性客が多いだけにイケメンがやさしく使い方を教えてくれる新製品の宣伝は効果的だったかも。


 展示会は来年も5月に開催される予定なので、世界が注目する最先端のIT製品はもちろん、市場のように活気あふれる韓国ならではのWIS2011を見学してみるのはいかがでしょうか。


(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年6月3日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20100603/1025288/

黒船を防げ! 大手集結で電子書籍が本格幕開け、政府支援も

2010年4月20日、韓国通信最大手のKTが電子書籍のオープンマーケット「Qook Book Cafe」オープンを発表した。アップルのAPP Storeと同じように、個人が書いたものでもKTの承認を得れば有料の電子書籍として販売できるようになる。電子書籍の料金回収手数料は30%で、本によって違う割合が適用される。読者は、一度購入した電子書籍をスマートフォン、電子書籍リーダー、IPTVから利用できる(今後韓国でiPadが発売されれば対応する方針)。電子書籍の値段はほかの販売サイト同様、紙本定価の6割程度となっている。

 韓国ではPC通信時代、ユーザー投稿型連載小説が大ブームになった。日本のケータイ小説のような感覚で、会話のように書き込むのが特徴。ここから小説、ドラマ、映画になった作品もたくさんある(日本でも公開された映画「猟奇的な彼女」が代表と言える)。個人の書いたものが電子書籍として流通できれば、第二の小説投稿ブームが起きるかもと期待されている。


 KTよりも一足早く電子書籍流通をリードしているのは、韓国最大の書店である「教保文庫」。サムスンと提携して電子書籍リーダー開発や端末の流通にも参加している。サムスンがこの4月に発売する初のAndroid端末「Galaxy A」には、教保文庫の電子書籍アプリケーションが搭載される。3.7型アクティブマトリクス有機EL(AMOLED)で野外でも鮮明な視認性で読めるだけでなく、8GBの外付けメモリーが使える。教保文庫で購入した電子書籍はサムスンの電子書籍リーダーとスマートフォンの両方から利用できる。


 教保文庫は10年も前から電子書籍販売のために著作権を確保してきた。2010年4月時点で6万8000冊を流通させていて、毎月1000冊の電子書籍がアップデートされている。KTも4万冊ほど公開しているが、教保文庫がベストセラーや有名作家の書き下ろしをかなり確保しているのに対し、KTは古典に近い古い書籍や雑誌がまだ多いので、これといって読みたい電子書籍がないことがネックになっている。個人が書いたものを電子書籍として流通させることで、コンテンツを増やすのがKTの狙いというわけだ。KTは電子書籍で収益を上げるというより、新しい価値を続々提供することで既存顧客の離脱を防止するとしている。


 電子書籍リーダーの価格競争も進み、1万円台で買える端末が発売された(既存の端末は3万円台)。目が疲れないよう配慮した専用端末が安くなったことで、電子書籍が買いやすくなったのも、大手企業参入のきっかけとなっている。教保文庫は8000円台の電子ペーパー端末を発売し、毎月4冊ほどの電子書籍を購入するユーザー向けに販売するとしている。さらに電子書籍販売拡大に向け、オーディオブック端末や動画ブック端末も提供する計画だという。

出版最大手のウンジン、MP3プレーヤーで有名なiRiverも電子書籍リーダー発売に合わせ電子書籍サイトをオープンした。電子書籍の流通や収益採算はまだ曖昧なため、この慣行を変えるためにも出版社自ら電子書籍流通に乗り出すべき(ウンジン)としていた。出版社58社の連合体が運営する電子書籍サイトもオープンし、通信事業者、ベンダー、出版社、それぞれが流通の覇権をめぐり本格的に競争に入ったと言える。iPadが韓国で発売される前に市場を先制し、アップルに対抗するという意味もある。


 韓国の電子書籍市場規模は2009年の1323億ウォン(約106億円。1ウォン=0.08円で換算)から2011年には2891億ウォン(約231億円)に成長、政府の支援により2014年には7000億ウォン(約560億円)に成長すると見込まれている。


 政府は2010年4月、電子出版産業育成のため、2014年まで600億ウォン(約48億円)を支援し、毎年1万冊以上の電子書籍制作を支援する。著作権の保護期間が終わった古典を電子書籍にして無料で提供することも計画に含まれている。電子出版流通の標準化、先進化、技術イノベーション、自費出版もできる電子書籍共同制作センター設立も支援する方針である。デジタル新人作家賞を新設し、電子書籍向け人気著者の育成、1000人に上る電子出版専門人材の養成、電子書籍関連SOHO支援といった項目も含まれている。


 韓国では衛生のため、大手総合病院では入院患者向けの図書館運営を電子書籍に切り替えるところも出始めている。鉄道・空港の待合室でも電子書籍レンタルを予定する。現在小学校を対象に実証実験が行われているデジタル教科書が全面的に開始されれば、電子書籍市場はもっと拡大されることは間違いないだろう。


 国内コンテンツ流通を揺るがしたスマートフォンに続いて、今度は電子書籍がコンテンツ流通を変えようとしている。世界のコンテンツを手中に収めようとするグーグルやアマゾン、アップルに飲み込まれまいと、韓国勢は手を結びがんばっている。


 韓国では国内企業のオンライン書店がシェアをがっちり握っているせいか、アマゾンは進出していない。KindleやiPadの発売計画も今のところない。それでも米企業に市場を取られまいと先行投資が活発だ。


 日本でも携帯電話から利用できる電子書籍が増え、KindleもありさらにiPadの発売もある。世界でも指折りの出版市場を持つだけに、米企業のターゲットになっているように見える。興味を持って見続けたい。



(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年5月27日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20100430/1024639/

第1回 :4億人が利用する中国のインターネット事情

主要先進国の景気回復が遅れるなか、アジア各国の成長は止まりません。中国や韓国、インドなど、まだまだ元気な国が多いのが実情です。知っているようで知らないアジアのコンテンツビジネス事情はどうなっているのでしょうか。第1回は中国のインターネット市場について紹介します。


さらに爆発的な成長が見込まれる中国のインターネット市場


政府の検閲を理由にGoogleが撤退したことで世界の注目を集めた中国のインターネットサービスですが、インターネット利用やネットでの書き込み、ソーシャルネットワークサービス(SNS)などの利用は萎縮することなく増え続けています。検閲なんてずっと前からあったことなので、何を今さら、という感じすらします。


Googleは世界の検索サイトとしてシェアを高めていますが、中国では国民性を反映した自国企業のポータルサイトが人気を集めています。Yahoo!やGoogleといった海外サイトの中国語版のシェアは実は低いのです。


規制の多い中国だけにインターネットの利用も遅れているだろうと思ったら大間違い。インターネットが普及したのは意外と早く、1990年には「com.cn」という中国のドメインが登録され、93年から国家情報化事業が始まりました。96年にはネット接続サービスが始まりネットカフェも登場しています。


China Internet Network Information Centerのデータによると、2009年末中国のネット人口は3億8400万人、なんと前年比50%も増加しています。2010年3月にはついに4億人を突破しました。それでもまだ人口普及率では28%ほどに過ぎないというから恐ろしい勢いです。ネットユーザーの平均年齢は25歳と、世界平均42歳に比べ大変若いのが特徴です。これから爆発的な成長が見込まれているとても魅力的な市場なのです。



10倍に膨らむネット広告市場


2008年より携帯電話の3Gサービスが始まったことから、データ通信の利用者も2億3300万人に至っています。特に青少年の75%は携帯電話からネットにアクセスしていて、パソコン(69.7%)より多くなっています。検索サービスやソーシャルネットワークサイトのほとんどは、携帯電話やスマートフォン向けにも提供されています。


60の大都市市民を対象にした調査では、ネットユーザーの約7割が、暇な時にやることとして「インターネット」と答えています。インターネットにさえつながれば、音楽を聴いたり動画を見たり、ゲームをしたり、いろんな人とチャットをしたり、ショッピングをしたり、何でもできてしまいます。高速ブロードバンドも都市部では日本と変わらないほど普及しているのです。


北京、上海といった大都会だけでなく、小さな農村にもネットカフェが必ずあるほどインターネットは広く利用されています。(中国はネットカフェも人海戦術。パソコンが1000台ほどワンフロアに並べられたネットカフェもありました)。もちろん、所得の差によるデジタルデバイドは深刻ですが、情報源としてネットの役割はとても大きいのです。


インターネット広告市場もここ5年間で10倍に膨れ上がり、2009年には日本円にして約3000億円に達しました。2010年は上海万博の影響でネット広告が増加するものと見られ、2013年には約1兆7000億円規模になるのではないかと予測されています。Googleが撤退したおかげでネット広告がほかの中国勢ポータルサイトに回り、アクセス数1位のポータル「百度(baidu.com)」の2010年1~3月の純利益は昨年同期比2倍以上増加しました。広告単価も値上げされ、市場独占が懸念されるほどです。


第2回は、中国のインターネットではどんなコンテンツが人気なのか、SNSやオンラインゲームなどを紹介します。

By- 趙 章恩(チョウ チャンウン)

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