韓国 ポータルの社会的責任を強化(2007年6月25日 掲載)

韓国 ポータルの社会的責任を強化


 


 


行きすぎた法規制に反発の声も


 


 


 


【ソウル発】一日平均1500万人以上がアクセスする大手ポータルサイトに対して、自動検索サービス提供の義務化、即時届け出ボタン設置など社会的責任と義務を強化する内容の法規制が、本格的に推進される。



 NAVER、DAUM、NATEといった大型ポ
ータルは行きすぎた規制は市場の発展を阻害すると反発しているが、検索サービス事業者(ポータル)法が制定されれば、大型ポータルが牛耳っているインターネット情報流通市場が構造的な変化を遂げるのではないかと注目されている。


 


 法案ではまず検索サービス事業者を管理するため既存の申告制から情報通信部への登録制に変えようとしている。主な内容は即時届け出ボタンを設置して、名誉毀損や個人情報侵害をすぐに申告できるようにし、一定規模以上のポータルサイトには自動検索サービスを義務化する。


 


 即時届け出ボタンは一度のクリックで申告・受付・保存の機能を持ち、検索サイトの初期画面と各掲示物ごとに内容を申告しながら、同時に証拠も保存できるようにする。名誉毀損やわいせつ、個人情報侵害、不法著作物などを届け出てもその後の処理が不透明だったのが実際で、これからは届け出事項に対して法律的責任所在を明確にし、誰がどのような処置を取ったのかをユーザーに知らせる。


 


 一方ポータルサイト側は、このような法案に対して自動検索サービスの概念が明確ではなく、名誉毀損や著作権問題は既存法でも規制できるとして、これは行きすぎた規制であり市場競争を阻害するものと反発している。


 


 韓国最大ポータルのNAVERを運営するNHN社は、最近公聴会で「すべてのコンテンツに即時届け出ボタンを設置すると悪意的なユーザーの申告により事業者の業務に負担を与え、表現の自由も侵害される可能性がある」と主張している。


 


 情報通信部も5月から「ポータル規制タスクフォースチーム(TFT)」を結成し、11の小規模作業班を構成し分野別規制対策を準備している。各作業班は情報通信部はもちろん韓国情報社会振興院など傘下団体、学界、業界専門家などで構成されている。作業班代表らは隔週に一度会議を行い、進捗状況と主なイシューなどを議論する。


 


 キーワードランキングも世論操作手段として悪用されるのを防ぐための対策が議論されている。特に今年は大統領選挙など敏感な政治的イシューを控えているため、さらに対策の必要性が高まっている。検索キーワード操作を専門的に手がけている業者もいるほどで、同じキーワードを何万回も入力してランキングを上げる行為を防止するための対策も必要だ。


 


 情報通信部はポータル事業者の不公正行為に対しては公正取引委員会との業務衝突を考慮し、特別法の代わりにガイドラインを制定する予定だ。長期的には電気通信事業法改正を通した通信委員会の役割強化も必要であるとTFTは意見を提示している。



趙章恩(チョウ
・チャンウン=ITジャーナリスト)


 


[BCN This Week 2007年6月25日 vol.1192 掲載] Link 


 


 

規制は強化、広告は減少 韓国ポータルに黄信号

 韓国のポータルサイトはNaver、Daum、Nateなど国内勢が圧倒的に強く、米国のGoogleやYahoo!のシェアが極端に少ないという特徴を持っている。しかし黄金時代もそろそろ終わりかもしれない。政府の規制強化でユーザー離れの懸念が強まっているうえ、景気悪化で広告も減り始めたのだ。


 


 韓国の通信政策を担当する省庁である「放送通信委員会」は、サイバー侮辱罪の新設、実名制度の拡大、ポータルサイトのモニタリング義務化、企業の個人情報保護強化などを含む「情報通信利用促進と個人情報保護などに関する法律」、いわゆる情報通信網法を改正する方針を決めた。12月には国会に提出する方針である。


 


 


 


 


情報通信網法の改正案について説明する放送通信委員会のホームページ


 


 


■モニタリング義務化に不満


 


 ネット規制強化の動きは今年起きた反政府デモをきっかけに進みだしたが、10月に人気女優の崔真実(チェ・ジンシル)さんがネットの書き込みを苦に自殺した問題で議論に拍車がかかった(詳しくは「韓国有名女優の自殺ショック・なぜ悪質書き込みは止まないのか」)。そして、いよいよ法改正である。


 


 韓国では情報通信網法だけでなく、KoreaCIAと呼ばれた国家情報院の業務範囲を拡大させる法改正も合わせて予定されている。このため野党の民主党は、「人権を守るどころか軍事政権の時代に逆戻りする国民過剰監視、政権を保護するための悪法である」と断固戦う姿勢を示している。


 


 情報通信網法の改正案のうち、サイバー侮辱罪についてはまだ刑法で扱うかどうかで議論が続いているが、実名制度拡大、ポータルサイトのモニタリング義務化、企業の個人情報保護強化の3つはすでに固まった。


  


 


 このうち実名制度の適用拡大に対しては、市民団体などから「実名制度を導入しても悪質な書き込みは2%ほどしか減らなかったという研究結果もある。ネットの浄化にはつながらず、自由なコミュニケーションを阻害する結果しか生まない」といった反発が根強い。ただ、現実問題としては、すでに多くのサイトで氏名と住民登録を確認する実名認証が導入されているので、実生活に大きな変化はないだろう。


 


 


  


懇談会に参加した放送通信委員会のチェ・シジュン委員長とポータルサイト代表ら


 


 


 個人情報保護強化では、企業が顧客情報を本人の同意なく第三者に提供できないようにする。ここ数年、顧客データが盗まれたり売買されたりして保険の勧誘などに使われるといったトラブルが多発していただけに、これにはネットユーザーの間でも賛成する声が多い。


 


 問題はポータルのモニタリング義務化の部分だ。ポータル事業者に自社のサイトをモニタリングさせ、問題の余地がある書き込みがあればブラインド処理をして他のユーザーがクリックできないようにすることを義務付ける。これを守らないと3000万ウォン(約230万円)以下の過怠料を科せられる。


 


 ユーザー側からみれば、自分たちの書き込みがすべて監視されることになる。しかも、ポータル事業者は業界として悪質なコメントや誹謗中傷、不法コピーファイルの流通遮断に積極的に取り組むと協力姿勢を示し、放送通信委員会の委員長と懇談会を開いたりしている。このため、ネットユーザーは、「ポータルが自社に火の粉がかからないように、政府の気に召さないような書き込みをブラインド処理することは事前検閲に他ならない」と不満を強めている。


 


 


  


放送通信委員会に対する国政監査のもよう


 


 


■コミュニティー系のPV減少


 


 このような逆風のなかで、ユーザーのポータル離れの動きが数字になって表れ始めた。DAUMのコミュニティーサイトのページビュー(PV)は6月1週目で5億PVに達していたが、9月1週目には9963万PVに激減した。Naver、Daum、Paran、Nate、Yahookoreaの5サイトの10月の合計数字をみても、ブログなどのPVが23.26%減、コミュニティー系が8.29%減と目に見えて減っている。


 


 さらに、米金融危機に端を発する景気悪化で、広告収入にも陰りが出てきた。


 


 韓国ネットユーザーの7割がブラウザーの初期画面にしているとも言われる最大手のNaverは、2002年10―12月期から23四半期連続で右肩上がりの成長を謳歌してきたが、2008年7―9月期はついに記録が途切れた。運営会社NHNの売上高は4―6月期比3.9%減、営業利益は13.4%減、当期純利益は10.7%減少している。シェア2位のDaum、3位のNateも営業利益が13%以上減少している。Daumは当期純利益が63.5%も落ち込んだ。


  


 ポータル3社はそれぞれ、サイトリニューアルによる一時的な利用者離れ、景気の悪化など外部要因によるものと説明している。しかし、これといってすぐに回復しそうな気配もない状態だ。


 


 株価も大幅下落している。韓国のインターネット広告は新聞、雑誌を上回りテレビに続く規模に育ったが、株式市場では政府の規制がさらに厳しくなり、ポータルの広告収入は今以上に落ち込むと予測している。ユーザーからも広告主からも遠ざけられ、政府に立ち向かうこともできないポータルは苦境をどう乗り越えるか。


 


 


■モバイルと地理情報に期待するが・・・


 


 Naverは日本で検索サービスの再参入を狙っている。日本では現在、Hangameだけを残して検索サービスからは撤退しているが、再起をかけるようだ。新規採用を減らすなど緊縮経営も進めている。Daumは広告単価の引き下げ、新しいゲームサービスの追加などによるコンテンツのてこ入れに力を入れる。


 


 面白いことに、ポータル3社が共通して新しい収益モデルとして挙げるサービスがある。それはモバイルポータルと地理情報サービスである。スマートフォンの普及に対応して小さい液晶からも見やすいようにしたモバイルポータルと、付加価値をつけやすいマップサービスで広告需要を生み出したいということだろう。


 


 ユーザーが投稿する写真や動画と位置情報を組み合わせて、ユーザー同士でテーマ別マップを作るコーナーや、実際には存在しないがネットで衛星写真を検索すると見える屋外広告が注目を浴びている。


 


 情報通信網法の改正は、政府の「ポータル馴らし」とも言われる。それだけに、ユーザーや広告主が戻ってくるか永遠に離れていくかは、今後のポータルの出方によって決まるだろう。今のところ、ポータル各社は政府への忠誠心を見せているようだ。メディアとして「わが道を行く」サイトが一つぐらいはあってもおかしくないと思うのだが。


 



– 趙 章恩  

NIKKEI NET  
インターネット:連載・コラム  


2008年11月11日




 

ポータルの無料サービスがセキュリティ産業を滅ぼすか [2007年9月26日]

 1日の訪問者数が1400万人、韓国内のブラウザーの70%でホームページに設定されている最大手のポータル「NAVER」が、ウイルス対策ソフトを10月より無料で提供を開始する。これに対し、韓国セキュリティ対策ソフトの最大手であるアンラボが「市場ルールを守り、産業の活性化に打撃を与えない範囲で無料サービスを提供すべきなのに、NAVERは他の企業と一切協力しない。何でも独占しようとしている」と非難している。


 NAVERが無料サービスのために選択したのはロシアのカスペルスキーのセキュリティ対策ソフトをエンジンに利用した「PCグリーン」。ウイルスやワーム、スパイウエアなど検出・修復・遮断できるプログラムで、フルスキャンだけでなくリアルタイム監視機能や自動アップデート機能も無料で提供される。市販のセキュリティ対策ソフトと同等の機能である。


 これに対しアンラボをはじめとする韓国のセキュリティ業界は、300億ウォン規模のセキュリティ業界が潰れてしまうのではないか、韓国セキュリティ業界の競争力が弱くなるのではないかと反発しているわけだ。


 ポータルサイトが無料でウイルス対策ソフトを提供するのはNAVERが初めてではない。Yahoo!もMSNも提供している。それなのにNAVERだけが攻撃されているのは、NAVERが圧倒的な力を持っていることが背景にある。


 YahooやMSNに比べ、NAVERは韓国で圧倒的1位の影響力を持つポータルである。時価総額8兆ウォン、2007年売上5734億ウォン、営業利益2296億ウォンを記録している。ポータル2位のDAUMの営業利益は102億ウォン。NAVERがどれほど力を持つポータルなのかはお分かりいただけるだろう。そのNAVERが無料でサービスを提供すると、標的となった業界が潰れるのは時間の問題だ。2000年には雨後の竹の子のように存在していた価格比較サイトも、NAVERが知識ショッピングという価格比較と商品レビューを書き込むコーナーをオープンしてから市場が全滅した。映画チケット予約代行サイトも、「NAVER映画サービス」が始まってから跡形もなく消えてしまった。


 例えば、アンラボの売上の30%は個人向け販売が占めている。NAVERのお陰でこの売上が消え去る恐れがあるのだから、神経を尖らせるのも無理はない。すでに、ポータルサイトがツールバーを通じて、無料のウイルス対策ソフトを提供してからセキュリティ対策ソフト市場が大きく低迷し始めているという事実もある。こうしたことから韓国セキュリティ業界の兄貴分であるアンラボが先頭に立ち、NAVERへの反発を強めているわけだ。


 ただ、その論理にはちょっとびっくり。アンラボは、「NAVERが無料でサービスを始めるとユーザーは喜ぶだろう。ただし、それにより、韓国のセキュリティ業界が危なくなり、それは国家のセキュリティの危機につながる」と言うのだ。この意見を代表に、韓国セキュリティ業界は、「国家をまたいだハッキングなどサイバーテロが毎年増加している中で、セキュリティ産業は単純にパソコンのウイルス対策のためだけではなく、国家的次元でセキュリティを考えなければならない」とし、「国内の脆弱性情報は韓国のセキュリティ企業が持つべきだ」という主張を展開している。カスペルスキーはパターン・ファイルを作成する上で最も重要なウイルスやワームの検体をNAVERの無料サービスを通じて入手することになる。この点を問題視しているわけである。


 国家のセキュリティがダメになるという口実で、セキュリティ業界が反対するとは思わなかった。


 あくまで個人的な感想だが、有料で購入したアンラボのセキュリティ対策ソフトをインストールしておいても、頻繁にスパイウエアやウイルスに感染しているので、無料でも良いものがあればそっちに乗り換えたいというのが率直なところ。


 アンラボとNAVERの話し合いは続いている様子だが、「市場の秩序を守るため無料はダメ」というアンラボと、「何が何でもユーザーのために無料で提供したい」と譲らないNAVERが対立しているため、妥協点を探すのは難しそうだ。


 それにしても、韓国のセキュリティ業界の雄であるアンラボがここまで警戒するロシア製のセキュリティ対策ソフト。そんなに優秀なのは、やっぱりアメリカとの冷戦の結果なのかな?


(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2007年9月26日 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/NPC/20070926/282986/